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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか74】生後まもなく(16)熱波襲来

 7月28日日曜日から、ボルドーを熱波が襲った。最高気温の予報は一番酷いときで42度。同じ時期でもパリでは最高気温が30度ぐらいの日もあり、地域差が大きい。ボルドーはフランス南西、大西洋に近いからか。去年も最高気温が37度に達したことが数日あったという。そう聞いていたから、日本からネッククーラーや冷えピタ、赤ちゃん用のアイスノンを持参してきた。

 今回の熱波は、31日水曜日まで、4日間続く予報だった。日本では、2023年、群馬県桐生市で猛暑日が46日、私が住んでいる街では年間100日以上が真夏日だったことを思えば、4日間の熱波など、日本人から見たら「けっ」てなもんであろう。

 しかし、ここで思い出していただきたいのは、一般家庭にはエアコンがないこと、そして、新生児を抱えていることである。
 私はおののいた。エアコンなしの40度? 死ぬんちゃうか? まだ生後3週間、汗をかくこともできない新生児に、どうやって体温調節しろって言うの? 頼みの綱は、出産前に慌てて買った扇風機一台。日本から持ってきたアイスノンなどを使うことになるか。べべさんが一番心配なのは間違いないけど、私も熱中症とか脳梗塞とか、怖いわー、命の危険を感じるわー。
 とにかく、暑い中を出歩かなくてもいいように、今のうちに買い出ししておこう。鶏むね1.5キロ、牛乳もジュースも卵も野菜も果物も、べべさんのおむつも、そしてこれがないと婿が死んでしまう、バゲットとバター。

 ここまで恐れていたのに、結論からいうと、日本の最高気温40度と、ボルドーの最高気温40度は、全く違うものだった。家から出なければ、エアコンなしで大丈夫だった。

 28日日曜日、この二日前から私のスマホにもフランス気象庁から警告のショートメールが繰り返し送られてきた、熱波の到来。
 しかし、この日は朝の段階では気温が低かったので、窓を開けていると涼しい空気が家の中を抜けていった。室温は一番高いときで29度まで上がったが、何しろ湿度が50%台なので、暑いといっても、蒸し暑くはない。

 ここで威力を発揮するのは、湿度の低さに加えて、日当たりの悪さと断熱の確かさである。外が暑くても、家の中は日陰だ。べべさんのために買った温度湿度計を見ながら、婿が「28度を超えたら、窓を全部閉めよう」と言うのを聞いて、発想の違いを感じた。窓を閉めれば、外の風が入ってこない代わりに、外の暑さも入ってこない。実際、最高気温が40度近くになった29日月曜日も、閉め切った室内が30度を超えることはなかった。日本で猛暑日に、エアコンもなしで閉め切った屋内にいたら、間違いなく救急車もんだよ。

 流石に29日の夜は寝苦しかった。日の入りが21時半ぐらい、暗くなってもなお暑い。日付が変わる頃でも、窓を開けると外の熱気が入ってくる。明け方近くなって、外の気温が下がり、窓を開けると涼しい風が入ってきてホッとした。つまり、寝苦しいながらも、閉め切った部屋で眠ることができたというわけですよ。

 30日の朝は涼しかったので、今なら買い物に行ける、緑黄色野菜を買い足さねば、と、外に出た。スーパーで買い物を済ませた帰り道、夕立のような土砂降りに見舞われた。全身びしょ濡れになったけれど、10分ぐらいの雨のおかげで気温が一気に下がった。雨の後、湿度が70%を超えたものの、窓を開けた状態で日中の室温が28度ぐらい。も、これなら全然楽勝、余裕のさっちゃん。
 この後、31日には極端な暑さは治まり、恐れていた熱波襲来は、心配していたよりもずっと楽に乗り越えることができた。除湿と断熱、大事だ。8月にも二日間の熱波が来たが、そんなに怯えずに迎えることができた。体感に与える湿度の重要性を認識した経験だった。
 これから先、夏はボルドーに避暑に来たい。円安めー。

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