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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか53】退院まで(3)Day1②

 夕方、婿が用事を済ませて病院にやってきたので交代する。今日の帰りはバスを使うことにした。ちょっと疲れていたのと、洗濯やら夕飯やらのために早く帰りたかったから。
 とはいえ、病院から自宅まで直通のバスはない。ボルドー市の公共交通機関のアプリを使って、帰り方を確認すると、何種類かの乗り換えパターンが示される。できるだけ歩かずに乗り換えられて、なおかつ早く帰宅できるものを選ぶ。

 実は、今まで買い物でも観光でも徒歩で済んでしまったので、公共交通機関に乗るのは、これがやっと2回目だ。前回はこっちに来て1週間もしない頃、外出の帰りにトラムに乗ったのだが、婿も娘も一緒で、娘が私の分もスマホで乗車代金を払った。私のスマホが機能する前だったから。
 つまり、これが私一人で乗る初回、しかもトラムよりも難易度が高いであろうバス。更に全く土地勘がないところで乗り換え。これはなかなかハードル高いんじゃございませんこと? ええ、望むところだ。やったろやないかい。

 バス停まで数分歩く。アプリを使ってトラムやバスの料金を払う方法は教えてもらっている。が、ここでふと、疑問が沸く。バスって、全部の停留所止まらないよね?止まって欲しいときって、ボタン押したりする? 慌てて婿にLINEで尋ねる。やっぱりそうだ。よし、降りる停留所の前でボタン押す、ドアを開けるときにもボタン押す。頭の中で復唱する。
 バスがやってきた。あれ?思ってた路線のバスじゃない。もう予定の時間は過ぎているのに。これはやり過ごして、次のバスを待つ。すぐに来た。あれ?また別のだ。でも、この数字は見覚えがある。このバスでも家に帰れるはず。よし、これに乗ろう。何とかなるっしょ!

 私の今回の敗因は、経験不足のために情報収集能力が活性化されていなかったことと、三半規管の弱さにある。もっと後で、アプリを落ち着いて使えるようになると、ああ、ここを押せば途中の全停留所がずらっと出てくるのね、こっちを見れば次はどうすればいいって書いてあるのね、と分かる。一度でもバスに乗ってみれば、「prochain arret」が「次の停留所」ね、ここの電光掲示板に出てるのが今ここにいるってことね、と分かる。
 そうした、経験に基づく情報収集能力が発揮できない状態で、十分調べてもいないバスに、ちあきなおみじゃないんだから、ひとり飛び乗っちゃダメなの。

 乗ってからスマホ見て何とかしよう、と思ってたけど、つかまることもできない混んだバスの中でスマホを見ようとしたら、うっ、これは酔ったか、ダメだ、下を向けない、という状態になってしまった。まあ、降りるバス停はまだ先のはず…と思っていたら、あれ?これはひょっとしてもう過ぎてる? マズくない? ここへきて、まさかの迷子?

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