ストーリーを探せ
作家のダニエル・ピンクが、3本のワインについてスピーチしていた。どれも10ドルの安いワインだが、ラベルに説明が書いてある。
1本は独特の香りと味の説明。もう1本は特別な製造法や貯蔵法についての説明。最後の1本は「ブラザーズ・タトゥー」という変な名前。裏ラベルには「乳がんで亡くなった母を偲んで、醸造家の兄がワインを、タトゥーアーティストの弟がラベルをデザインしました。1本について50セントをホスピスに寄付します」と説明があった。
同じ10ドルを払うなら、ストーリーのあるワインを買ってみたいと思うのが、人間の心理だろう。
創業1505年の「剣菱」はあえて脱色しない“黄色い伝統酒”を前面に打ち出し、「500年後も変わらない」と揺るぎない伝統のパワーを見せる。
「初孫」は生酛(きもと)特有の透明感のある深い味わいを「底が見えない澄んだ湖」にたとえる。日本の酒蔵のほとんどが100年以上の歴史を持っている。探せば他にはないストーリーが必ず見つかるだろう。
ところが、酒会社のサイトを見ると、どれも「水、コメ、人」を主張していて印象に残らない。
いいことだけが“ストーリー“とは限らない。困難や障害や失敗も、人を動かす力になる。「らしさ」とは「ストーリー」である、といわれる。個性あるストーリーを掘り返し、マーケティングの柱に据えてみてはどうか。
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