#21 ビスケットサンド
昨日、ビスケットサンドをスーパーで買って、頬張った。
中のアイスクリームが、絶妙に柔らかく、冷凍庫に入ってたとは思えない口溶けが広がる。
上のビスケットサンドも硬すぎず、ちょうどよく柔らかいので、ビスケットとしてのサクッと感と食べやすさの両立が生まれている。
子供の頃は、よく祖父母の家に行った。
夏、冬、関係なく、冷蔵庫にはアイスが入っていた。
冬でも、暑すぎるほどの暖房が効いていたため、アイスを食すには最適な環境だったと思う。
幼稚園や小学生の頃は、ハーゲンダッツのクリスピーサンドシリーズが絶対に入っていた。補充と言ってもいいかもしれない。
新商品や期間限定ではなかったが、定番の商品の抹茶やいちご系かキャラメルのようなものが、2つずつ入っていた。
夏に泊まりにいくと、毎日、祖父が風呂上がりにハーゲンダッツを出してくれた。多い日で1日2個たべることもあった。
「美味しい」と言って食べてると、
「ちゃんと飲み物、飲みなさい!」と祖母は、ジョッキいっぱいの牛乳を出してきた。
「あんた、飲み物飲まないと、喉つまらせるで!」と祖母は言った。
アイスで、喉はつまらんやろと思いながらも、
一気に牛乳を飲み干すと、わんこそばのように祖母は牛乳を注いだ。
「それは違うやろ」と私は内心思ったが言わないことにした。
それから、歳を重ねて回数は減ったが、行事的に祖父母の家に行って顔をだした。
その時も夏だろうが、冬だろうが、祖父は「ほら、アイスあるから食べぇ」と言って、冷凍庫を開けた。
ハーゲンダッツではなかった。爽が入ってきた。
たまにモウの時もあった。
その時、後で聞いたが祖父母の経営も資金繰りに苦しくなっており、トラックや土地を売って難を凌いでいた時期だったそうだ。
前々から、たびたび聞こえる会話の節々から「きっと、家計が苦しんだろうな」と思っていた。
私は、子供ながら、ひとの冷蔵庫のアイスの値段を見て、お金事情を測っている子だった。
祖父母から何かをもらうと、罪悪感に駆られた。
そう思って食べるアイスは、味がしなかった。
祖父は嬉しそうに孫を見つめ、缶ビールを開ける。
リモコンを手に取り、祖父と私は阪神タイガースの応援をはじめた。
10月なのに、まだ暑い。
まだまだ、アイスを買ってもおいしく食べられるだろう。
いつか孫ができたら、アイスを買ってあげてると、
そんなことを思われる日がくるかもしれない。
いや、
結婚もしていないので、そもそもそれ以前の問題だった。