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ユーモア短編小説 『別れの理由💔彼の愛が足りなくて』

   街中で恋人同士がラブラブ ラブ。じゃれ合う光景をよく見かける。公共の場でのキスやハグ、それが若者や新婚さんであれば許させるケースが有るのかも知れないが、好ましい振る舞いではない。

 恋というものは2人だけの秘め事。決して《他人に見せつける》ものではないからだ。

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  全く興味のない男女の戯れを見せ付けられるのは困ったものだが。それと同じかそれ以上に厄介な光景がある。公共の場で目にするカップルの喧嘩である。

 《ああ、今日も仕事で疲れた。ヘトヘトだ。帰ってゆっくり休みたいよ...》そんな思いの帰宅途中。大声で相手を責めたり、その相手がポロポロ泣いている別れの場面を見せられたら、ウンザリするではないか。

 男女が愛し合う場面も、それとは逆の別れの場面も。見て楽しいものではないのである。

極まれに例外はあるだろうけれども。

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 ここR市は、人口や経済規模がトップ10に入る大きな街だ。駅前広場を出ると街のメインストリートが南北に走り、外資を含め銀行やホテルなどの高層ビルが建ち並ぶ。

   メインストリートから東に一筋入れば雑居ビル。洒落た造りのアパレル店などが見られる。

 土曜日。時刻は夜の9時過ぎ。先ほどから通りの点滅信号の灯りを背に、女性が大きな声を張り上げている。

「あ、あなた酷いわね! 何様のつもり!」


   暗く重たい別れの場面だ。

 浮気がバレたか、ギャンブル癖でも責められているのか。女性の怒声に対して男性は何も言い返せずにいる。

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 睨みつけられたままの男性は、ビジネスマン風でガッチリとした体型。ヒゲを生やし貫禄がある。女性の上司のようにも見えるが体は緊張のせいだろう、氷のように固まっている。

「バカ!バカ!騙すなんて酷いわよ!」

 もしかしたら社内での不倫の精算をしているのかも知れない。深刻そうである。

 「わ、わ、私がどれだけ あ、あなたのことを愛していたと思ってるの! 私は、あなたのために尽くして来たのに!」

 「...。」

「私の人生を返してよ!あなたのことが憎いわ。じ、じ、地獄に送ってやりたい気分よ!」

     物騒な言葉まで出てしまった。通行人は目のやり場に困った様子で過ぎて行く。20メートルほど離れた工事現場の作業員たちも、危険な空気を察して2人の方を気にしている。

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詩人 ひろまる愛理の ユーモア小説、コント、エッセイです。

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