3Dプリンタでオイラーの等式のキーホルダーを作ってみた
1年前の2023年2月中旬に、最も美しい数式と呼ばれるオイラーの等式のキーホルダーを3Dプリンタで作ってみました。当時の経緯や製作過程をまとめつつ紹介しようと思います。
作った経緯
以前よりマルチカラー印刷が可能な3Dプリンタ (Prusa i3 Mk3S+ & MMU2S) を使い、機能部品に別の色でテキスト (LED、ON/OFF等) を入れたり、フィギュアやキーホルダーを複数色で作ったりしていました。特にキーホルダーではSVG形式のテキストやロゴを、3DCADに取り込んで形にしていました。
そんな中、何か変わったものが描かれたキーホルダーを作ろうと思って考えたのが数式です。自分の好きな数式、法則を表す重要な数式、難解だが見た目がカッコいい数式をキーホルダーで持ち運べたら面白いかも。そんなノリで数式キーホルダーの製作に至りました。
製作過程
数式選び
ではどんな数式をキーホルダーにするか?世の中いろんな数式で満ちていますが、今回は世界で最も美しい数式と呼ばれるオイラーの等式を選びました。この等式はオイラーの公式$${e^{i\theta}=\cos\theta + i\sin\theta}$$に$${\theta=\pi}$$を代入すると得られます。
$$
\begin{aligned}
e^{i\pi}&=\cos\pi + i\sin\pi\\
e^{i\pi}&=-1 + i \cdot 0\\
\therefore e^{i\pi}+1&=0
\end{aligned}
$$
この等式にはネイピア数$${e}$$、虚数単位$${i}$$、円周率$${\pi}$$、乗法単位元$${1}$$、加法単位元$${0}$$が全て詰まっており、これが美しい数式と言われる理由です。
そこで今回はこの5つの数に色を割り当てて3Dプリントし、等式の構成する要素が一目でわかるように工夫します。また色付けすることで、誰かにこの等式の良さを伝えるときに説明しやすくなります。
3Dモデリング
キーホルダーを作るにあたり、3DCAD (Autodesk Fusion) でモデルを作りました。等式を構成する5つの数と演算子 ($${+}$$、$${=}$$)、ベース、フレームを各コンポーネントで分けています。
数式を含め文字やロゴなどを3DCADで扱う場合、SVG形式でインポートする必要があります。今回はmacOS対応ソフトLaTeXiTを使用しました。パッケージ利用やフォント調整などが可能で便利です。
スライシング
スライサーPrusaSlicerを使って色を割り当てました。今回は2色と7色の2つのバージョンを考えました。ノズルはkaika625 (0.25mm径)、フィラメントはマットPLA (Polymaker PolyTerra) です。
各数を何色にするかは迷いました。共感覚で数字と色が紐づいている方々が世の中にいるらしいけど私は特にその感覚を持ち合わせていません。所有するフィラメントからなんとなくで選びました。
なお多色印刷ではstep形式がおすすめです。stepで3Dモデルを取り込むと、スライサーはコンポーネント単位でオブジェクトを認識します。すると$${i}$$や$${=}$$のように分離した文字・記号をまとめて選択できるので、フィラメント (=色) の割り当て作業がしやすくなります。
3Dプリント
Prusa i3 Mk3S+ & MMU2Sでプリントしてみて、良い感じに仕上がりました!キーホルダーのストラップは100円ショップで購入したものを使っています。この仕上がりでも十分満足ですが今見返すと、等式が書かれた面をビルドプラットフォーム側に向けると積層痕が目立たず、より良くなりそうです。
販売・データ公開について
BOOTHで販売中
オイラーの等式キーホルダーをBOOTHにて出品しています。2色 / 7色バージョンともに在庫が3個と限りがありますが、もしご興味ある方いましたらぜひよろしくお願いします!
BOOTH / Printables / MakerWorldでSTLダウンロード可能
今回のキーホルダーのSTLは複数のプラットフォームでダウンロード可能です。BOOTHでは前述の販売ページより、PrintablesとMakerWorldでは以下のURLよりダウンロードできます。後者2つのサイトでは印刷プロファイル (for PrusaSlicer, 3mf) も公開しているので、印刷設定が気になる方は参照してみてください。
またMakerWorldではコンテスト"Beauty of Mathematics"が開催中で、今回のキーホルダーでエントリーしています。ぜひダウンロードとLikeをお願いします。
≫ Beauty of Mathematics - MakerWorld
さいごに
本記事では最も美しい数式と呼ばれるオイラーの等式を3Dプリンタでキーホルダーにする経緯や作り方を紹介しました。多色印刷の題材としても、理系ネタとしてもこのキーホルダーは個人的に気に入っています。
オイラーの等式のほかに、ラグランジュの運動方程式や不確定性原理、ナビエ・ストークス (NS) 方程式、留数定理なども数式キーホルダーにしてみたいです。NS方程式であれば移流項、粘性項などを色分けしてマルチカラーを活かすのもひとつかもしれません。