映画『マチネの終わりに』
珍しく試写会に当選。
言わずと知れた平野啓一郎さんによる小説が原作。日頃あまり恋愛ものには手を出さないが、ネットで流れてきた評判と表紙のデザインに惹かれて、実は既に書籍を購入していたのだった。
一読した感想は、まーあハイスペックな男女の恋愛譚、ところどころに昼ドラ的なドキドキ要素や、哲学的詩的な警句も散りばめられて、スーパーで買える高級で美味しいアイスクリームのようね。なんて例によって偉そうに言っているが、「過去は未来によって変えられる」という言葉に「おおお…」と目鱗、マネージャー三谷の言動に「マジか!?」と突っ込み、ラストの余韻に「ううむむ」と、すっかり堪能したのであった。
で、映画ですが。
原作を読んだ際のイメージは人それぞれだと思うので、あくまでわたしにとっては、という注釈付きだけども、いやー「原作に忠実」とはこのことかと。ほぼわたしの脳内イメージ通りで、というかそれは小説が喚起させたイメージが明確だということ、小説がそのまま映画的であったということかもしれない。監督が黒子に徹しているということでもあるか。
福山雅治さん、何年か前にたまたまチケットを頂いてコンサートに行ったことがあり、演奏の再現率?と言ったらいいのか、生歌にありがちなブレがほとんどなく、CDの音源と変わらないことにびっくりした記憶がある。それがプロってやつよ、と言われればそれまでだけど。今回の映画では、ちょうどいい老け感が個人的には好ましく思えた。
石田ゆり子さん、わたしの小峰洋子のイメージとはちょっと違っていて、もう少し外連味のある感じの人が良かったかなと思ったりもした。ややさらっとし過ぎ・ピュア過ぎという印象。可愛いから仕方ないか。
そして物語のキーパーソンとなるマネージャー三谷役の桜井ユキさん。寡聞にして存じ上げなかったのだが、かなりクセのある役にリアリティを持たせていた。ビジュアルがわたし好み。
この作品のもう一方の主役とも言えるのは音楽だろう。映画では音楽の力がとても大きく働くので、きっと物語の要請以上に気を遣う部分であったと思う。ええ、サントラが欲しいと思うくらいには良かったです。
友人に『マチネの終わりに』を観ると伝えたら「ろまんちっくぅー」と揶揄されたが、人生においてロマンは必須要素っしょ。終わってカレーを食べに行った。甘いものの後は辛いもの、辛いものの後は甘いもの。かくしてフィクションも現実の人生の血肉となっていくのだった。