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詩とおもう(乞いと逢い)

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惚れた腫れたです。
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2019年12月の記事一覧

手紙(2019.12.10)

昨日の月は雨の向こう 健やかな翼ならば 雲を越えて 迷わずに飛べるのか 缶を蹴る足は左足 戻れないような遠くへ 鬼が帰っても こわんこわんと耳に鳴る ああ いつでも 片手しか 自由にならない 雨は止む 雲は流れる 翼を折りたたみ 指を折りかさね 携える手紙 翼の形に投げる 水を切るように

ささくれ(2019.11.30)

指さき 透ける青い静脈に納得がいかなくて ささくれを 引き毟る 滲んだ赤い血としつこい痛み 後悔と安堵を かわるがわる吸っては吐いて ようやく 爪先まで辿り着く 触れられた先から割れては毀れて くつくつと沸き立つ そんなものを信じてはいけない ピルエットは永遠に続かない  永遠? 塔の先に届いたからと言って 胸に誓いをたてたからと言って それはなにごとも保証しない  保証? どれほど疑っても ふたつの 手のひらがあることを 青い静脈に赤い血が流れていることを もう試さずにすむ