道行(2019.10.14)
キャスター付きの黒い影が
コロコロと
矢印通りに引き摺られていく
行く先は
小さな闇だ
そこに辿りつくまでは
目と耳を塞いでおく
得る前に失わないように
線路の先でちらつく陽炎
新聞は等間隔に捨てられている
いずれ芽を出すかも知れない
道々に零されたパンくずを
そうと知らずに
キャスターが引き潰す
目を開けていれば
拾うこともできたかも知れない
その闇には
読むことのできる文字はないだろう
耳を開けていれば
拾うこともできたかも知れない
その闇には
謳われる言葉はないだろう