賃上げが必要だとよく言われるが、賃上げするためには何が必要なのか、賃上げは経済成長のための十分条件なのかについて考えたい。
賃上げ以外のこと①利上げ
経済成長にマイナスになることとして利上げが挙げられることがある。特に最近の利上げは不要だったとの声がある。利上げは賃上げを阻害するものなのか?
利上げの企業負担という意味で興味深いコメントを見つけた。
「0.15%の金利の引き上げは、小規模事業者一社あたりで、年間3983円の負担増しかない。」デービッド・アトキンソン(2024年8月2日)
企業の借入金の利率は1~15%とのことだ。筆者は数%というイメージがある。そんな状況で15bpsの利上げは大したことがないと想像できる。
そもそも借入金の利息は企業の収支の一部でしかないし、常に新規で借入を行うわけではない。
15bps程度の利上げで賃金上昇にはマイナスと考えるのは筋違いだと思う。
賃上げ以外のこと②手取りの問題
経済成長のために、消費を増やすという意味では、賃上げ以外にできることとして社会保険料や税を下げて手取りを下げることがある。
賃上げする方法
賃上げするにあたっては生産性を上げることが本筋になる。生産性が上がってないにも関わらず賃上げしたら企業の財務が悪化する。では生産性を上げるにはどうしたらいいか。
教育を変える(日本人はロジック思考やコミュニケーションスキルがあまりにも不足している)
イノベーションを興す
業務の効率を上げる
人材の流動性を高める
規制を緩和し本当の自由主義、資本主義を実現する
インフレが必要だという声は多い。しかし物価の上昇と社会保障コストの上昇以上に賃金が増えていかなければ消費余力は増えていかない。そして企業の生産性を考えずに賃上げしろという掛け声だけでは全く論点を履き違えている。
経済を発展させ、健全な社会をつくためにはすべての国民が価値のある生産をし、価値のある消費をすることが本筋だ。穴を掘って埋めるようなことに財政投資しても意味がない。オリンピックや万博に僕は反対しないが、しかし、経済成長という意味で言えば過度に期待してはいけない。カンフル剤以上のものにはならないからだ。不要な薬を大量に処方しても意味がない。要するに、良好な生産と良好な消費こそが健全な経済の本質だ。
マンデルフレミング効果によれば財政政策は為替と資本の移動が自由な国家では有効ではないし、そのような理論を考えずとも、日本の社会主義的国家主導社会を考えれば財政政策が日本経済の健全な発展に有効ではないことはすでに証明されているのではないか。
金融政策にできることもたかがしれている。金融政策や財政政策で社会と経済が良くなるという考えはそれらの政策が持ちうるポテンシャルを超えて過大評価されていると思う。
どうやったら賃上げできるか。あなたが会社員でも経営者でも自分の会社の生産性を上げれば実現できる。そういうミクロな面にこそ真実があるということをしっかり認識しなければならない。マクロはマクロで大切だがマクロだけに期待するのは本質を履き違えている。