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『五龍世界WOOLONG WORLD Ⅰ 霧廟に臥す龍』

壁井ユカコ/ポプラ社(小説)

ネタバレします。


『2.43』というバレーボールの面白い小説を書いてる人のファンタジイ小説。
あるのは知ってたけど、バレーもファンタジイも両方面白く書けるわけないと思ってスルーしていた。
タイトル見るからにアジアンテイストっぽいし(ヨーロッパっぽい方が好き)。
しかし、羽住都画集『纏う 透き色の』の初出一覧にこれがあって、点と点がつながってしまった。
壁井ユカコと羽住都だって!?夢の共演!
挿し絵はない。

ちょっと大きい本
文庫版は絵描きさんがちがうみたい


所は昔の中国っぽい世界(19世紀末〜20世紀初頭、中国清王朝末期〜民国初期あたり)で、自転車の存在感がヒカる。

15歳の少女ユギは、育ての親であり師匠の趙濤龍チョウトウリュウと、師匠の符力・左慈サジと共に街の人々の困りごとを解決する道士をしている。

※符力は符(紙)に命を持たせた使い魔のようなもの。

と呼ばれる化け物に人が喰われる被害が相次ぐ中、ユギは封印されし手枷をはめられた幼い少女珞尹ルーインと、西域ペルシャ人牧師イルラックに出会う。
ユギが封印を解き手枷を外すと、幼女だった珞尹は少年に、そして青年へと姿を変えた。
その正体は強い力を持つ龍人で、彼は8番目の嫁になってほしいとユギに言う。
師匠に憧れるユギはこれをつっぱねるが、師匠は病に冒され死が近いことが判明する。

民間療法に毛が生えたような道士の術や薬では到底治せない。もはや手遅れ。ここまで放っておいたのが悪いとイルラックに罵られる。
痩せて、力なく寝床に横たわる師匠。


と、ここで、読めなくなった。
私事ですが4年前に父が他界したので、そんな感じのアレである。
具体的な病名は書いてないけど師匠のこの症状は癌かなと思ったり(癌も色々なので分かりませんが)。
特に泣くような場面でなくても、個人的に思うところあって泣くということはあったけど「読めなくなる」というのは初めての経験だった。
読めなかったのは10日ぐらい。なんならもう少し前からちょっと読みたくなってたけど、読めちゃうことで大してつらくなかったことになっちゃうような気がして、読めないふりをしていた。それはそれ、これはこれなんだけどね。
今となってはちょっと面白いので記録しておく。

再開して、若干忘れてたけど、なんかユギが師匠を助けてもらおうと珞尹を探しに行くところだった。
嫁になることを条件に助けてもらえることになったけど、師匠と左慈は街の人を蠱で襲っていたのが珞尹だと突き止めたので、珞尹を捕らえる結界を張っていて戦いになる。

病気で死にそうな師匠に対して圧倒的な力の珞尹。
それでも珞尹の蠱をその身に封じようとする師匠。
もしかしてそれを糧に生き続けるのか?
そのパターンなのか?
そうだよ2巻の表紙に左慈(らしき人)いるし。
師匠がいなかったら左慈はいなくなるはずなのにいるじゃん!
師匠はまだ生きるんだよ!
と思ったけど、そういう話ではなかった。

珞尹を退けることは出来たけど、師匠は結局死んでしまい、左慈も紙切れに戻った。
で、これからどうなる?ってところで風呂やらご飯やらになって(リアルで)中断。
この時点でユギが描きたくてたまらんと思っている。ユギいいよ、ユギ〜。面白い。

そして師匠の死後も一波乱。
でも私の中ではそれはおまけというか、やはり師匠の死というもののほうが大きな出来事だった。
左慈を復活させて、イルラックが抱える問題もひとまず落ち着かせて。
ユギはひとりで(左慈と)道士をやっていく自信をつけたけど、師匠が残した言葉をはんすうしながらユギが思うことのほうが、私には強い印象を残した。

時間をかけてすこしずつ痛みはやわらいでいくのかもしれない。どっちかというとそれは寂しい気がした。恩人であり、師であり、なによりも大切だった人の存在を、痛みとしていつまでも胸に刻みつけておきたかった。

五龍世界I霊廟に臥す龍

ちなみに師匠が遺した言葉は

媚びるな。己れの信念を曲げるな。お前らしく生きていけ。

五龍世界I霊廟に臥す龍

「己れの信念を曲げるな」の部分が好き。
うん。曲げない。

2巻にはあとがきがついていて、それによると(あとがきから先に読むやつここにあり)、2巻は主人公が違うという。えー、ユギが好きなのにー。
2巻の主人公は1巻にもちゃんと出てきたユギの親友碧耀へきよう。祇女をやっとります。
碧耀話も気にはなるけど、シリアスになりそうだな。

ユギ!

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