イラストレーターとしての自分を振り返ってみる
やっていることが多岐に渡ってしまい、何がしたいのかよくわからなくなってしまったので、とにかく書いてみて、自分との対話として客観視してみるシリーズ第一弾。
周りからは「ペーパーアートの人」と認識されていることが一番多いかもしれないので、まずはここから。
□ ペーパーイラストレーターです
こうやって文字にしてみると、ペーパードライバー的なニュアンスが漂いますが(笑)、紙を使って立体的なイラストレーションを制作しています。
トップの写真は、割と初期の頃の作品。
制作物は立体ですが、最終的には印刷物として世に出るので、カメラマンとの協業で、陰影の出し方などを細かく調整しながら撮影し、その後画像データーとしてクライアントに納品するという制作プロセスです。
ペーパークラフトと言われることもあるのですが、私は紙で作ることに単に重きを置いていなくて、紙を立体的に扱うことで生まれる陰影とか、奥行き、曲線などに惹かれています。紙という身近な素材に、切るとか折るとか、単純な動作を加えるだけで、そこに空間が生まれることが面白いなと思っていて、視覚的だけでなく、より体感的なイラストレーションをつくりたい、というのが起点になってます。
(うん…書いていたら少しクリアになってきた。言語化してみる、そして自分で認識するって大事ですね。)
□ これまでの実績・お仕事の範囲
イラストレーターというと、本のカバーとか、挿絵、広告、オリジナル商品販売、などのイメージを持たれる方が多いと思いますが、私の場合、紙で何か作れる人、ということで、もうすこし幅広く相談がくることもたまにあります。
広告ポスター、雑誌、書籍など
ウィンドウディスプレイ
パッケージデザイン
紙のノベルティ商品企画
VMD(店頭での商品ディスプレイ等のデザイン)
プロダクト自主制作・販売も昔に少し
一番多いのは広告系と雑誌のお仕事。
ウィンドウディスプレイは、空間全体を操るので自分の強みも出せるし、実際につくったものを見てもらえるので、もっとやりたいと思っています。
人間の視覚って面白くて、見ることで得られる情報って本当に多いですよね。撮影時に「作品を実際にみると、やっぱり違いますね」(良い意味で)とクライアントに言われることが多々あります。そして自分でもそう思います。紙の質感は、撮影で伝えられるけど、紙の手触りの感覚みたいなことまでは難しい。実際に触らないとしても、やっぱり直接自分の目で見ることで感じられることって結構あります。撮影して仕上げるのと、実際見てもらうのと、どっちが良いかという話ではなくて、それぞれ違う特性と面白さがあるということです。
□ 今はちょっと、立ち止まっています
もっとやりたい!続けたい!という気持ちはあります。その一方で、最近は少し見方が変わってきました。今はちょっと立ち止まって考えている状態。
自分でも、まだ整理できていないのですが、その理由について、思うところを書き出してみます。
・ 興味のシフト
今は、広告などのスパンが短いものよりも、もっと長く残るものに自分の興味がシフトしてきています。ペーパーイラストレーションの制作・お仕事を始めて10年以上経ちました。メジャーな雑誌のお仕事やハイブランドのディスプレイもやらせてもらい、ある程度の達成感を得たり、当初の広告への憧れみたいなものも少し薄れてきたのかなと思います。それから、今は博物館などの展示のお仕事にデザイナーとして関わることが多かったり、子どもが生まれて、日々「学び」について考えることが多くなったことも、とても大きい。もっと長いスパンで形に残るものや、体験として人の成長や気づきに関わるようなことをやりたいと思うようになってきました。
これまでの実績は広告系が多かったので、広告じゃなかったら、どこら辺のクライアントやプロジェクトを狙っていきたいのか、ちゃんと考え直す必要がありそうです。同時に、自分のやりたい作風もシフトしてきていると思うので、それも色々試していきたい。
・ 残るもの 残らないもの
通常、撮影したものを納品する場合は、つくった作品は保管もしくは破棄という道を辿ります。広告のお仕事だと、作品を展示したり売ったりということも難しいですし、繊細なものが多いので、保管していても形が変わってしまうことも多々あり、基本的には生モノです。その一過性みたいなところがいまだに引っ掛かってて、上で書いた、もう少し長いスパンのものにシフトしたいという理由にも重なるところがあります。
私はアーティストとしても活動しているのですが、残る・残らない、ということ、そしてそれに紐づく価値について、よく考えたりもします。
以前、チェコのギャラリーの壁面に直接設置する作品をつくったことがあります。アシスタントさん1人と一緒に、一つづつ手で貼っていくという時間のかかる作業ですが、展覧会の会期が終われば、破棄されてるしかない作品。私はオープン後は帰国したので、会期終了後、作品は燃やしてもらい、その灰を送り返してもらうことにしました。そこの廃棄のプロセスまで含めての作品にしたかったからです。
アーティストとしては、この作品は、紙という素材や一過性の展示というものと、自分の中でうまく折り合いをつけることができたなと感じています。イラストレーターとしても、もう少し咀嚼できたらスッキリするのかも。恐らく、そんなに難しいことではなくて(自分でややこしくしているだけ)、心持ちの問題?
ここが自分の中で、一番もや〜んとして、先が見えていないことかもしれません。
・ 生活スタイルの変化
2016年に欧州へ移住してから、生活の基盤づくりや引っ越し、語学学習。そして2019年に子どもが生まれてから、時間の使い方が更にガラリと変わりました。使える時間は細切れになり、紙などの材料を探しに行くにも一苦労、ということも少なくありません。
その間も、制作の機会があればお受けして、時には大きなプロジェクトも手がけてきましたが、PCだけで完結できるデザインのお仕事のほうが今の生活にフィットしやすく、時間と集中力が必要なペーパーイラストレーションは積極的に制作できていませんでした。
子どもも5歳になり、色々楽にはなってきたので、やっと色々考え始めることができたかな、というところです。上で書いた興味のシフトもあり、一度体制を立て直さないとなと思っています。
・ 新作つくれてない問題
もともと制作数が多いタイプではないのですが、ここ数年、新しい作品を作れていません。上で書いた理由により、自分の中での優先順位とか、大事なこととかが変わりつつあると感じています。手を動かすより頭を動かしてしまうのは、自分の長所でもあり短所と痛感します。とにかくつくり始めたら、上でグダグダ書いていることもクリアになってくるのかも…。
□ 迷走は続きます
さて次は何をつくろう、とか、どんなスキルを習得したいか、と考えた時に、私の場合は、どのチャンネルで?という疑問が浮かんで、足枷のようになります。ペーパーイラストレーション、デザイナー、アーティストみたいな、複数の領域にまたがって活動しているからです。元々、物事に優先順位をつけるのも得意でないので、自分はどっちに注力したいんだっけ?という、迷路に迷い込んでしまう。もしかしたら、これは計画性とか、優先順位をつける能力とかの問題なのかもしれません…。
やっていることが多岐に渡ってしまい、何がしたいのかよくわからなくなってしまったので、とにかく書いてみて、自分との対話として客観視してみるシリーズ、と冒頭に書いたのはそういうことからです。
第一弾、ペーパーイラストレーター編、は以上になります。
長文にも関わらず、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
第二弾は、アーティストとしての自分について書いてみようと思います。また読んで頂ければ嬉しいです!