集合住宅建て替えプロジェクト・完
なんかシリーズものみたいなタイトルですが、単発記事です。
ここ数年、門外漢なことをあれやこれやと同時並行でやっています。勝手がわからず右往左往しまくりですが、そのぶん人として何かしらのスキルがレベルアップしているはず(願)。ことのほか経験値の宝庫だったのが、2019年3月から、父が施主、私が代理で進めていた家業の「集合住宅の建て替え(解体と建設)」プロジェクト。
5月に竣工しました。遅ればせながら関係者のみなさまへ……
田場登記測量事務所さん、さくがわ司法書士事務所さん、与那嶺商会さん、山城建設さん、共立技研さん、大和電設さん、琉球銀行首里支店さん、中部興産新都心店さん及び協力他店さん、そしてアン一級建築士事務所さん、ご近所様そのほか関わりのあったここには書きれないみなさまへ感謝を込め、ここにログを書き留めておこうと思います。
設計・監理はアン一級建築士事務所さんにお願いしました。代表社員の安富祖理絵さんには本当に1から10までお世話になりっぱなしでした!当初、本当に建てられるのか正直不安だったのですが、右も左も分からない我々の背中を押し、根気強い相談対応から融資のお願いの同行に至るまで、安富祖さんの稀有なまでの懇切丁寧なサポートがあったからこそプロジェクトが実現したと思います。本当に感謝しかありません。
融資していただく機関の調整、設計プランの調整、税理士さんへの相続税諸々の相談、測量、分筆、登記、請負業者さんの選定、入居者さん全員の退去、アスベストの検査その他、本当にさまざまな事柄それぞれが一歩進んで二歩下がるを繰り返し、1年数ヶ月要したのち、昨年から工事が開始。
解体直前 2020年6月
解体したのは、私自身も生まれ育ち、同じく住人だった従兄弟家族やご近所さんたちと互いの家を行き来して過ごした隅から隅まで思い出の詰まった旧アパートでした。自分を育ててもらった感謝と寂しさに浸りながら経過を観察することに。
2020年夏 旧アパート解体
育った場所が破壊されていくショックと、重機の作業姿の恐竜っぽいおもしろさが混じり合ってなんとも言えない気持ちです。油圧ショベルのアタッチメントに少しだけ詳しくなりました。
2020年7月15日 地鎮祭
大安、建(たつ)という建築吉日の満潮直前。施工業社の山城建設さんが手配してくださり、沖宮さんに執り行なっていただきました。
御供物は微妙に沖縄っぽいラインナップ。
2020年7月27日 那覇市文化財課の調査
不発弾も遺跡も、とにかく何も出てこなくて嬉しかったというのが正直な気持ちです。
2020年9月 擁壁打設
那覇市から建て直しの指導が出ていた古いブロック塀も擁壁とともにコンクリで再建しました。
工事は年を跨ぎ、今年の1月9日に棟上式が終了。(写真は2020年12月29日の様子)
2021年5月 竣工
安富祖さんのデザインが光るとても素敵な集合住宅が出来上がりました!
随所にコンクリ打ち放しのインダストリアルなテイストと、木・土っぽさが共存しているのもコンセプトです。
▼1階 兼用住宅(店舗部分)
入居予定者の要望で白壁のうち2面分はホワイトボード仕上げに(落書きできます)。将来その気になれば小さな飲食店スペースとしても活用できるような仕様です。
▼1階 兼用住宅(住宅部分)
天井まで届く本棚をお願いしました。
玄関とトイレの照明は海の中をイメージして選定(気に入っています)。
表札や部屋番号のプレートはメタル素材。部屋番号のフォントはTitillium WebのLight300、建物の表札「あしゃぎガーデン」は教科書体デジタルN-Rにしてみました。
少し浮かせて設置してくださりお洒落でいい感じに!
現場代理人の金城さんに「船舶灯みたいですね」と指摘された表札のすぐ上のライト。放射状の星のような光に惹かれ選びました。
▼2階・3階 1K洋室
2・3階は、各フロアに3部屋ずつ、単身者向けの1Kになっています。クローゼットはオープン、全体的にミニマルな内装に。物をあまりたくさん持たない方や、収納をカスタマイズしたい方により向いているデザインかなと思います。天井は、2階は打ち放し、3階は塗装(白)。ペット可にしたのに伴い床材は修繕しやすい板張りに。
システムキッチンはフードが目立たないすっきりしたタイプに。ひとくちコンロなのでそんなに料理をされない方向きかと。
▼シャワーブース
ホテルみたいなシャワーブースが完成。バスタブがないのは沖縄仕様。
3階まで上がると海や首里城が見えます。
下は屋上からの眺め(柵がなくて危ないため基本立入禁止ですが)。
竣工が2ヶ月ほどずれ込み新生活シーズンから外れたため、人の移動が少ないコロナ禍の今どうなることかと心配しましたが、全室入居者さんが決まり不動産屋さん&首里という場所の力を感じているところです。
うちにも犬がいますが、ペットのいる方どうしだとお互い適度に交流が生まれやすそうだし、暮らしの上でも防犯上も良いかもしれないと思いこの集合住宅をペット可にしたところ、実際ペットを連れた入居者さんも多く和やかな雰囲気になってほっとしています。
植栽はこれから整える予定。裏手には散歩できる緑のスペースもあるので、ここに住む方々がリフレッシュできるような空間にこれからもっと整備していこうと思っています。
思えばこのプロジェクトは、かつてうちの実家も建てていただき長年大変お世話になっている建築士の赤嶺和雄さんにアパートの建て替えを相談した折、安富祖さんをご紹介いただいたところから始まりました。
安富祖さんは偶然にも私の高校の同窓の先輩(水道工事の共立技研さんの源河社長も先輩でした。今までで一番、高校の先輩の頼もしさを感じます)。ほかにも、同窓ネットワークや地域ネットワーク、友人知人の紹介・推薦などなど「人」を介して繋がった方、ご縁があって繋がった方など、たくさんの人が関わり合いプロジェクトが編み上がっていった感じがします。
小さなアパートですが、一棟建てるのにはかなりたくさんの職業、たくさんの人の力が必要だと知りました。人間一人でできることなんてたかが知れており、私や父には「こんなふうなのがいいな〜」という要望があるだけで、設計もできなければ重機も扱えず、しかも特に大きなお金も(融資をお願いしてなんとか建ててるぐらいですから)ありません。でも「建てたい」と手を挙げたら、そこに仕事を受けてくださる方がいて、さらにたくさんの専門家が集い、次々と持ち上がる問題を解決しながら一緒に建てていってくれるという、この事実のなんとありがたいことか。上手く言えないけど、これってすごいことでは??
しかもこれから先、いろんな人の「帰る家」になり続けるって、すごい、とそこにも感動してしまいます。これまでも、これからも、当たり前のように日々建物はそこら中に建ってるわけですが、街のあらゆる建物が感慨深く思える勢いで「アパート一棟」「住宅一件」への見方が変わりました。
良いご縁に恵まれ、ご先祖様からあずかった場所に、胸を張れる建物を無事建てることができて良かった(我ながら、儒教的沖縄文化の内面化を感じる)。この建物からいい関係性や影響が育っていけるように、外側も内側も大切にメンテし続けていかなくては、と思っています。