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聖徳太子の愛用品? お数珠とトンボ玉のおはなし
私が作るとんぼ玉はネックレスやブレスレットなど、アクセサリーに仕立てることが多く、それに次いで帯留、羽織紐、かんざしなど和装小物、まれにではあるが数珠に仕立てることもある。
画像は「蜻蛉玉金剛子念珠」と名付けた片手用数珠。108つの四分の一27珠のうちとんぼ玉11、金剛菩提樹8、金剛子(水晶)8の三種類の玉を連ねて製作している。これは聖徳太子の愛用品と言い伝えられる念珠に由来する。
トンボ玉を作ることを生業(なりわい)としている私、作家として作り始めた頃からの疑問であったし、お客さまから質問されることも多い。
「とんぼ玉」「トンボ玉」「蜻蛉玉」・・・この名前の由来は何?いつからこう呼ばれていたの? その答えは諸説あり一言で説明するのが難しい。
疑問に思ったことをインターネットで検索すると、色々と出てくるようになったのは誠に有難い。
今から12年前の私は、「小野小町をイメージした装身具」のテーマで迷い、検索を重ねながら「蜻蛉玉金剛子御誦珠」に辿り着いた。
2011年インターネット「e国宝」で出会った「金剛子念珠=蜻蛉玉金剛子御誦珠」それが源氏物語・若紫に登場した「聖徳太子が百済の国からお得になった金剛子(こんごうし)の数珠に宝玉の飾りのついたのを」だと知った喜び! その後、上野の国立博物館法隆寺宝物館を訪ねて実物との対面。
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東京上野国立博物館法隆寺館にて林撮影
さらに数年、「国書データベース」で念願の「法隆寺宝物図絵」の蜻蛉玉も確認することが出来た。1842年江戸時代天保年間にガラスの装飾珠が「蜻蛉玉」と表記されていたこともわかる。
こうして調べることから、一言では答えられない最初の疑問に近づけることもある。
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一般的に片手用略式念珠は、一種類の天然石や樹木ビーズを連ねて作るのが普通だが、この国宝に倣って 1.地球が産んだ天然石・金剛子(水晶)、2.自然が育んだ植物・金剛菩提樹の実、3.人の手が生み出す・とんぼ玉、の3種を連ねた数珠を作りたいと試行錯誤して生まれた、思い入れのある作品。
10年前に作り始めて、数は多くないがいままでに20点ほど作成しただろうか。とんぼ玉は色合いを統一することもあれば、地色の全てを変えるこもとある。お誂えのご注文を頂き、27珠の全てをとんぼ玉で製作することもある。房の色は黒、紺、臙脂、木賊、鶸など。いにしえの作に敬意を払いつつ、今の時代に生きる私なりの思いを込めたものになっていたらと思う。
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数珠に使用する珠の大きさは約10mm。
縄目文様、同心円文、市松文様、渦巻き文様など、一粒ずつ文様を変えるのが林流。
パワーストーン辞典(?) によるととんぼ玉の効能は「火の力が使われ、人の意思によって形成されるため、創造力・活力・可能性を与えると言われます。 それだけでなく、煌めくガラスには邪気を払うパワーがあると古来より信じられ、お守り・魔除けとして使われてきました。」という説が見つかった。
・・・いやいや、作り手、作りかたも多種多様で一括りにして良いのか? という疑問は感じるのだが。
効能のほどはわからないが、はるか昔から護符として身に着けられていたのは事実のようだし、私の作るとんぼ玉が何方かにとって喜びでありますように、価値のある物でありますにと祈るように歌うように、炎に向かう。
読みづらい文章を最後までお読みいただきありがとう御座います。
数珠は葬儀や法事に使用するだけでなく、ご旅行で寺院を訪ねるときや日頃からお守りのようにお持ち頂く場合も御座います。世界にひとつだけの貴方のお念珠をオーダーメイドでお作り致します。
ご質問、ご要望はお気軽にどうぞ。
ガラス工芸作家 林 裕子
〒930-0151
富山県富山市古沢237-3 富山ガラス個人工房4号棟A
蜻蛉玉丙午/KOGURE Glass Works
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