【D&I (ダイバーシティ&インクルージョン)メタバースがボーダレスな社会を創る】 障がい者も働きやすい「メタバースオフィス」
近年、多様性を重視する「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」が社会的に注目を集めています。本記事では、新たなD&I推進の可能性を切り拓く「メタバース」の活用の具体的な事例として、「メタバースオフィス」をご紹介します。
記事で伝えたい3つのポイント
D&I推進のもと、全ての人が自己実現できる社会を目指す
アバター使用で、無意識の先入観を軽減し、見た目による偏見を防ぐ
メタバースが、リアルに近いコミュニケーションをオンラインで実現する
久米川:
全3回の「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」シリーズ、前回は、D&I におけるメタバース活用の実態についてお話ししました。第2回となる今回は、具体的な事例を取り上げます。本日のテーマはなんでしょうか?
田中:
「障害者も働きやすいメタバース」です。今回の事例では、D&I促進の中でも特に障害を抱える方の雇用機会の平等に焦点を当てています。
アバターで出勤、メタバース空間の 「オフィスバース」
田中:
今回ご紹介するのは、株式会社総合キャリアオプションが提供する「オフィスバース」という取り組みです。この事例は、HR領域(※)でも注目されており、先進的な取り組みとして評価されています。
概要としては、障害があることで通勤が難しい、周囲に人がいる環境では集中が難しいなどの、対面でのコミュニケーションが難しいという課題を抱える方々が、心理的安全性を持ちながら働ける場をメタバース空間で実現することを目指しています。
※ HR領域とは、企業の経営や人材など、 人的資源に関する幅広い業務領域
久米川:
具体的には、どのような仕組みになっているのですか?
田中:
ブラウザを使ってアクセスするだけで、自分のアバターでメタバース空間に「出勤」できる仕組みです。アバターを通じてチャットや音声を使った会話が可能で、同僚からの指示を受けながら業務を進められます。
従来は、通勤が難しい場合、個別のZoom会議やチャットで対応するしかありませんでしたが、メタバースでは「困ったらすぐ相談する」「同僚と働いている実感を得る」といったリアルに近い体験が可能です。また、対面が苦手な方でもアバターを介すことで心理的負担が軽減され、チームで働いている一体感を感じられます。
メタバースオフィスが活用される理由
久米川:
体験会も開催されていますが、実際のオフィスに近いスタイルで、メタバース上で社員の動きを確認できるようになっています。
この事例でメタバースが活用される理由について教えてください。
田中:
今までは、障がいのある方は社会参画が困難とされてきましたが、現代では、D&I推進の観点から、「すべての人が自己実現できる社会を目指すべきだ」という価値観が広がっています。
また、生産性の向上を目的として、多様な働き方を推進するという点もあります。障がいの有無に関係なく、一人ひとりが自分の能力を発揮できる環境を提供することは、企業や社会全体の成長につながります。
そして、活用において1番大きなポイントとなるのが、見た目による偏見を防ぐことが可能な点です。アバターを使用すると、相手の無意識の先入観を軽減する効果があり、誰でも同じ基準でコミュニケーションを図ることができます。
まとめ
久米川:
ここまで、「障がい者も働きやすい「メタバースオフィス」」をテーマにお話しいただきました。最後にポイントを教えてください。
田中:
ポイントとしては2つあります。
1つ目は、D&I促進の観点から、「誰もが自己実現できる社会の実現を目指す」という現代の価値観のもと、メタバースが障がい者雇用の新たな可能性を切り拓いていることです。
2つ目は、メタバースがリアルに近いコミュニケーションをオンラインで実現し、チームの一体感を高めることです。アバターを通じて自己表現の幅が広がり、異なる特徴を持つ人同士でも相互理解を深めることができる点が挙げられます。