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痛み



土曜日、聡子は自分がいかに簡単な女かを思い知らされた。

前日の金曜日に、福田から連絡があった。
仕事でストレスが溜まっているから、飲みたい気分だ、と。
断ればいいものを、聡子はのこのこ指定の飲み屋まで出向いた。

ついでに、福田からもらったネックレスをつけていくかどうか悩んだ後、つけていった。

その日の夜、聡子は福田に雑にホテルに誘われ、抱かれた。

福田は一緒に寝てくれなくて、朝の5時ぐらいにホテルから解散して、自宅で心を落ち着けてから寝たのが朝の8時、それから寝たり起きたりして、気づいたらもう夕方になっていた。

福田は知人の紹介で知り合ったが、女遊びの激しい男として有名だった。二回目のデートでいきなりネックレスをもらった。突然のことだったが、自分がここ数年で最も嬉しい気持ちになっていることに自分でも驚いた。

異性として、福田はとても魅力的だった。そもそも、女が男を見るときに、誠実かどうかなどほとんど関係なく、仕事ができるかどうか、金があるかどうかなども、ほとんどの場合関係ないと思っている。プリミティブな意味として、聡子は福田という男に惹かれていた。男らしい顔の造形や骨格の太さ、腕の筋肉や、落ち着いた話し方、笑顔といった基本的な能力がとても高いと思っていた。

基本的に落ち着いた性格なことも魅力的に思えた。

聡子は、機械メーカーの総務で15年以上勤めている。会社の男は全員、紺色か灰色の作業着を着せられている。紺色と灰色の作業着の違いがずっと分からなかった。なんとなく、大卒のエリートは紺色を着てよくて、高卒は灰色のような気がしていたが、同僚の学歴など聡子の立場で知るわけがないので、予想に過ぎなかった。いずれにせよ、紺色であろうと灰色であろうと、福田のような男がこうした作業着を着るわけはないだろうと聡子は常日頃感じていた。

作業着の話を福田にしたことがある。
「災害地区に行くときの首相みたいな服装?」
そう言われた。
私は、その通りだと言った。

一瞬バカにされているような気もしたけど、その通りだったし、「なんでああいうとき、首相とか大臣とかって作業着着るんだろうね」という福田の発言には同意しかなかった。

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