スペキュラトゥールとは何か
ジェームズ・W・ヤングの古典的名著『アイデアのつくり方』にアイデア作成の基礎となる一般的原理について二つの大切なことが記されています。
一つは、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」という至言です。
ただし、この言葉はヤングが初めて提唱したわけではなく、パレートの『心理と社会』(1935)から着想を得た言葉なのです。
もう一つは、既存の要素を新しい一つの組み合せに導く才能は、事物(モノ、コト、ヒト)の関連性を見つけ出す才能に依存するということです。
この才能(=心のはたらき方)は人によって 大きく異なるもので、個々の事実をいくら眺めてもそれぞれが分離した断片的な知識にしか見えない人もいる一方で、一つの事実が一連の知識の鎖の中の一つの環だという人もいます。
この点については、パレートの『心理と社会』でも、全ての人間は二つの主要なタイプに大別されると説かれています。
それが、スペキュラトゥール(投機的タイプの人間)とランチェ(株主タイプの人間)です。
スペキュラトゥールとは
スペキュラトゥールには、投機家という意味のほかに「思索家」という意味があり、これには企業家やあらゆる種類の発明などに従事する人が含まれるとされています。
このタイプの特徴は、「新しい組み合わせの可能性に常に夢中になっている」ことです。
一方、ランチェは(スペキュラトゥールと比べ)想像力に乏しく、保守的であり、このタイプにいくらアイデアを生み出すように促したとしても訓練(思索的な日常)に耐えられず、「新しい組み合わせの可能性」に夢中になれないというのです。
もちろん、ランチェタイプの人にも、いくらかのスペキュラトゥール的な先天的な才能、生来のアイデアを作り出す才能は眠っているので、これを開発すべし、というのがパレートの結論となっています。
もうお分かりの通り、noteで使わせていただいている私の名前は、パレートやヤングの説く『Speculateur』(スペキュラトゥール)に由来します。
元来こてこてのランチェ・タイプの保守的な私ですら、社会に出て7、8年目くらいの頃から、ランチェのままで生き続けることはビジネスの現場では極めて不利であることを悟りました。
それだけ苛烈な競争に身を置いていたと言えるのかもしれません。そこからスペキュラトゥールへの道を選ぶことにしたというわけです。
スペキュラトゥールへの道を探るようになってしばらくすると、不思議な感覚が芽生えるようになりました。
最初は過酷なビジネス競争上の必要に迫られて「新しい組み合わせの可能性」に夢中になっていたわけですが、いつしか競争を回避して生き残る戦略や、そのための策について思考を巡らせるようになっていたのです。
noteでは、そんな私なりの『非競争戦略』、ないしは『脱競争戦略』を中心にお話してまいります。
事物(モノ、コト、ヒト)の関連性から『組み合わせ』を探り出すスペキュラトゥールな非競争戦略は、変化の激しいビジネス市場で置いてけぼりを食らいそうな人に参考になるのではないかと思います。
とりわけ、環境(プラットフォーム)依存型のネットビジネス等で変化についていけない初心者さん、後発参入者さんには、一刻も早くスペキュラトゥールへの道を選択して欲しいと願います。
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