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出版原稿No.21 もしあなたが近視でも

 出版原稿投稿シリーズでは、拙著「最新の視力研究で導き出した 何歳からでも目がよくなる方法(アスコム)」の出版原稿からカットされた部分を掲載しています。

 私は視力2.0で、目がいいのです、という話をすると、
「自分は目が悪くて、、、、」
と引け目に感じる人が一定数おられます。

 特に日本人の大半は近視でメガネやコンタクトをしていますから、普通が近視なのですが、視力が悪い、と思ってしまうのはなぜでしょうか?

 そもそも近視は病気ではありません。光の中に入る屈折が異常なだけであり、矯正器具で治ります。矯正器具は自腹であり、医療保険がおりないのは、病気ではないからです。

 「視力が悪い」という表現に問題があるのです。近視は近くの情報を処理することに特化し、あまり必要のなくなった「遠くを見る能力」を捨てたのであり、近視の方が現代社会での生活に有利だったのです。

 以前も、近視は適応進化である、という記事を書きました。

 でも、「視力が悪い」という言葉のせいか、自分は劣っている、と思ってしまう人が結構おられます。特に、思春期の若者が心配です。

 そんな人たちに向けた文章が以下です。
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 この本の読者の方には、すでに近視が進行した方も多いと思います。普通の医学書では、一度伸びてしまった眼軸長が正常に戻ることはない、とされています。したがって軸性近視は治らない、ということになります。

 しかし一生近視なのを気にする必要はありません。すでにたくさんの人が普通に生活できており、ちょっと不便なだけです。強度近視やその他合併症を発症しないように対策すればよいのです。

 そもそも近視は病気ではありませんし、遠くが見えることよりも大切なことがたくさんある人が近視になるのです。実際に社会に出れば、視力の悪化と引き換えに手に入れなければならないものがあります。

 高度な専門知識を学ぶ人や研究者、IT関係、作家、芸術家などを目指す方々に「目が悪くなるからそんなにがんばらないで」とは言えないでしょう。何をどれだけするかは個人の自由なので、誰にも強制されるものではありません。ある程度近視の人がいてもよいのです。

 私が主張したいのは、正しい知識をもって近視の対策を行うことで、視覚不良者人口を減らし、将来の失明リスク低減や社会保障費の抑制を行うことが可能となり、国家全体、多くの人の利益(不利益の抑制)につながる、ということです。

 ある程度近視の人がいてもよいのですが、それにしても直近のデータで「高校生時点での近視率70%以上、さらに上昇傾向にある」というのはあまりにも多すぎる、国家としてリスクが大きいのではないか、と感じています。

 私が推進したい近視対策のあり方は、若年層にはもっと外で遊んでもらい、もっと自由に運動できるようにしたい、ということです。社会人の方々には、無理な仕事環境や、ストレス、近業作業を強いられるケースを減らしたい、ということです。中年以降は、食事に気を使い、将来の生活習慣病リスクを減らしてほしい、ということです。

 特に若者は、近視の進行で視力が低下し、自信を失ってしまうのではないかと憂慮しています。特に思春期以降、周囲と自分の比較をすることが多いと思います。特に「身体的特徴」は意識が向きやすいでしょう。

 顔の造形や身長、体重、運動能力はもちろん、髪質や肌質など、誰かと比較すればきりがありません。でも、どうしても気になってしまう。これは成長期の生理的な現象なので避けようがありません。私もたくさん悩みました。大いに悩んでもらいたいと思います。

 その中で視力の低下は眼鏡など外見や表情に変容を与えるものですし、また学業成績の優劣と結びつきやすいようです。

 一生懸命勉強しても学業成績が目標に届かないことがあると思います。その時に自分が眼鏡をしていて、あまり勉強しているように見えない同級生が裸眼で、ずっと成績がよかったら、自分の勉強量が足りないのか、方法が間違っているのか、もしかして自分の学習能力が低いのではないか、と思い至り、自信喪失してしまうことがあるかもしれません。

 学業成績は、人間の能力のごく一部を測る指標にすぎません。社会の中で必要とされる様々な業務を振り分ける必要があり、より適切な人材を抽出するために試験のスコアで振り分けているだけです。もちろん読み書き算数など生活していくうえで基本となるような大事な学習内容もありますが、学業成績が振るわなくても十分楽しく生活していけます。

 目標に向かって努力するのはよいことですが、結果が振るわなくてもあまり気にする必要はありません。自分が劣っている、などという自己肯定感が低くなってしまわないようにしたいところです。

 近年若年層で進行している軸性近視自分自身の身体的特徴ではなく、生活習慣によってもたらされるものです。屋外活動が少なく、近業が多い場合に進行します。

 都会で育てられれば、屋外活動は制限されます。家も田舎と比較して狭いのがあたりまえです。小さいころから遊ぶ場所は少ないですし、危険がないように家の中で育てられ、保護者が忙しいのでゲームを与えられ放置されたら、近視は避けられないでしょう。

 結果として、都市型生活者と、受験競争の激しい地域や学校、外に出ることが比較的少ない女子は、近視の比率が高いのです。

 しかしこれは親のせいではありません。自分の子供の目が悪くなり、視力矯正が必要なようにしたいと思う親はいません。皆さんを安全で大事に育てたい、よりよい生活ができるようにしたいと思って考えた結果、仕事のある都会で暮らそう、もっと勉強してほしい、危ないから家の中で、と考えた上でのことなのです。

 屋外活動時間が少ないことが学童近視に影響するということが学術的に証明されたのは、2000年代です。まだ広く知られていないと思います。私はこれを広げていきたいと考えています。

近視の治療法
 さて、現在では様々な近視治療法があり、レーシックはもちろん、低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー(角膜矯正療法)、多焦点ソフトコンタクトレンズなど、治療と対策の選択肢が広がってきました。気になる方は眼科を訪問しこれらを検討するとよいでしょう。

 また、近視が進行しない適切なメガネの選び方については「子供の目が危ない 超近視時代に視力をどう守るか 大石寛人 NHK出版新書」に記載があります。大変参考になりますので、すでに近視が進行している方にはぜひご一読をおすすめします。

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 また、眼科関係では糖尿病対策により近視が改善し遠視方向に進むことが知られています。これは血糖の改善が影響していると考えられます。網膜は微細な血管が多数走っており、血液が視細胞や視神経の機能改善に影響があるのは想像に難くありません。
 さらに網膜近傍の脈絡膜が菲薄化していた部分が厚くなることで、光学的にも少し眼軸が縮むのではないかと考えられます。ほんの少し、たとえば0.1㎜でも脈絡膜が厚くなれば、近視の度合い(ジオプター)はかなり改善し、眼鏡の度数が変わります。

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原稿部分は以上です。

 近視は病気ではありませんが、そうはいっても進行して「強度近視」何なればさすがに不便ですし、眼軸が伸びすぎれば血流も悪化し、様々な眼疾患の原因になります。

 また、生成AIが隆盛を極め、人はAIに勝てなくなります。パソコンの前に座る仕事が今後どのくらいあるだろうか?という懸念もあります。


 これからの社会はどうなるかわかりませんが、今から目をよくしたい!眼病を予防したい、子供達が近視にならないようにしたい、という人はぜひ拙著をご覧くださいますと幸いです。

今日は以上です!

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