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【批判への対応編1】私生活データを売るExographの経過報告

はじめに

まずはじめに、批判も含めてコメントをして頂けている方、応募してくれている方、その他のすべての協力者に感謝しています。
またこの実験で不快な思いをさせてしまった方には申し訳なく思っています。

開始から一週間の間はTwitterでひたすらプロモーションしても大きな認知を得られず、応募者50名ほどだったExographプロジェクト。
PRTimesへのリリースを11/8に行ってから、自分がリーチできていなかった層への認知を図ることができ、応募者が現在までに400人名以上、それに加え多くのフィードバックを頂けました。

このプロジェクトは、このような取り組みをした場合に何が起こるかという実験です。
そして起こり得る問題や批判を出来る限り汲み取り、起こらないように対処することを目的としています。

このnoteでは、今回の取り組みに関して頂いたフィードバック(主に批判)などに対しての見解や今後の対応をまとめます。

プロジェクトに対して頂いた批判編

批判1:「生活保護を受けている人にはプライバシーが無くてもよいのか」「生活保護を受ける人は身体の隅々まで社会に提供すべきという主張か」

見解
違います。
この実験は「最低限度の生活を営める対価の代わりに、私生活データを売る人がどれほどいるか、そして本当に出来るのか」という実験です。
生活保護の仕組みや生活保護受給者の生活は、今のままでよいのです。
一方で、今の社会には生活保護を受けたくても受けられない人がいます。例えば「働けない」を証明するのが困難な若い世代では生活保護を受給するのが難しく、心身を壊してまで働き続ける状況もあります。選択肢として、労働という「人生の時間」を提供して対価を得る以外に、行動データを提供して対価を得る仕組みがあれば、より多様な生き方が出来るのではないかと思っています。

分析と対策
「行動データを金銭で売買」というコンセプトから今回の批判が生じた理由は「生活保護費」というキーワードが含まれているのが原因でしょう。
意図としては「行動データの売買だけで、経済的に最低限度の生活が送れる」というのを、この国の物価などを考えて国が定めた生活保護費を参照していました。
そこで11/11からは、支給額を生活保護費と結びつけずに、きっぱり20万円と変更して進めて行きます。(明日リリースを出します)

批判2:貧困ビジネスではないか

見解
検討した結果、この実験の仕組みを使ったサービスはそうなりうる可能性があると思いました。
思慮が足りなかったし、この点について自分なりの主張が出来るような状態を保つことは協力者への誠意として欠かすことが出来ないと改めて気付かされました。
批判を頂いた方、ありがとうございます。

分析と対策
実は勉強不足で「貧困ビジネス」というワードの存在を知りませんでした。
以下、Wikipedia引用

ネットカフェ、住み込み作業員、住み込み派遣社員(請負社員)、ゼロゼロ物件、無料低額宿泊所、消費者金融、およびヤミ金融などといった、経済的に困窮した社会的弱者を顧客として利益を上げる事業行為を指す[2]。ホームレス支援や貧困問題にとり組むNPO法人『自立生活サポートセンター・もやい』の事務局長を務める湯浅誠により提唱された概念である。
「貧困ビジネス」の概念は、「問題がビジネスモデルそれ自体にあるということ」を指し示すためにつくられた。それらのビジネスモデルが問題なのは、違法行為であるからだけではなく、そのシステムが非人間的なありかたを貧困層である当事者たちに強いるからであるという。

今回の場合は、ビジネスモデルというよりも「非人間的なありかたをを貧困層である当事者たちに強いるから」という部分が該当するということでしょうか。

貧困ビジネスは常に、「殺し文句」としての次のような論理展開を活用する点において、実際に共通している。
(A)当該ビジネスの存在を否定すればさらに酷い事態が生じる。
(B)選び取っている以上は本人の自己責任である。
(A)ではそれ以外の選択肢がない存在を想定しつつ、(B)では「選択の自由」の存在を仮構する点で両者は矛盾するが、状況に応じて便宜的に使い分けられる。

確かに、Exographに当てはまりうる主張です。

この仕組みを貧困ビジネスにしないためには、そもそも貧困層をターゲットとしたサービス設計にしないことが必要そうです。
Exographでは行動データの売買をするために購買能力の低い貧困層のデータでは成り立ちにくい性質上、このサービスは必然的に富裕層の参加者をどれだけ増やせるか、金銭提供以上の顧客体験を向上できるかに掛かっていると思っています。
ビジネス化を検討する場合は、ここらへんを意識した設計が求められるように思いました。
今回の実験での被験者選びについても、上記の点を考慮しようと思います。

批判3:どこかの悪意ある企業がこのデータを利用する危険性があるのでは

見解
考えなければいけない点だけれども、まだ具体的なアイデアがない状況です。

分析と対策
アメリカの大統領選挙のように政治的な利用やスパイ活動など、単なるビジネスの枠組みを超えた使い方がされないようにしなければなりません。
この部分に関しては、既存のどの事業者も、メディアや広告代理店、調査会社なども同じ批判が当てはまると思うので、どのように対策をしているのか、実は具体的な対策は何もないのか、など確認した方が良さそうです。
データのトレーサビリティを担保し、ユーザーのデータを利用する企業名などをログとしてユーザーに公開するなどすればよいのでしょうか。
詳しい方がおられればご意見頂きたいです。

批判4:パスワード・秘密情報の流出の危険性

見解
この点についても考えなければいけない点だけれども、まだ具体的なアイデアがない状況です。

分析と対策
銀行ATMのパスワード入力も、カメラや番号の部分の温度でパスワードが取られるなどもありますからね。

テーブルの上に、センシティブな情報の含まれた書類や、それが映ったディスプレイを撮影してしまう可能性はありそうです。
その場合にユーザーがデータ提供時に自身で削除してもらうことになるが、現実的ではない。
ここについてもまだ解決策が見つかっていない状況のため、詳しい方やアイデアがある方は教えて頂けると大変嬉しいです。

批判5:福祉は国の義務、国民の権利

見解
仰る通りだと思います。

分析と対策
一方で、国も無い袖は振れないため、年金受給年齢が高齢化しているように、保険料の負担額が今の3割負担から増えていくことも考えられます。
その中で、自身の行動データを売買することで労働以外で経済的な対価を得る仕組みがあった方が多様な生き方が出来て良いのでは、とも思っています。

批判6:プライバシー侵害、人権侵害では?

見解
弁護士と相談しながら進めており、プライバシー・人権侵害とならないように最大限の注意を払います。

分析と対策
実際に今回の実験でやることは、被験者には今回の実験の趣旨やデータの使われかたをきちんと説明し、同意を得た上で実験を行います。
1ヶ月動画を自室で撮り溜めてもらいそれを会社が買い取る、という形にしています。

遠野に対する批判編

批判1:自分でまずはやってみてはどうか

見解
自分でやってみています。
今回の実験の趣旨は、自分以外にどれだけのどのような人が、どのような動機で、今回の実験に参加したいと思っているのかを知るために行なっています。
そのために自分がやるだけでなく、広く募集を呼びかかけています。

批判2:出口戦略が分からないから怪しい

見解
出口戦略から今回の取り組みは考えていません。
データの売買やプライバシーと経済性に関して問題提起しておくべきテーマだと勝手に思ったこと、そして自分がそれを出来る状況だったためにやっています。
今回依頼する被験者は5人程度の予定であり、その程度では意味のあるデータにはならないし企業に売る予定もありません。そのため、本当に検証実験の意味合いでやっています。
希望としては、今回の取り組み全体で得た知見を元に、興味を持ってくれた企業・団体へのコンサルティングや講演などで実験費用を回収できれば良いとは思っていますが、それが目的ではないです。
もし社会に受け入られるような仕組みが見つかれば、持続可能な仕組みとしてビジネス化も出来れば良いとは思っています。

最後に

募集をしてみると

「孤独死を避けたいので、カメラで撮っていて欲しい」

「人の役に立ちたいので、是非被験者にしてほしい」

などのメッセージを述べている方が複数おり、この取り組みを通して当初考えていた問題とは別の切り口があるように感じました。
生理的・論理的に気持ち悪い実験と捉える人が多いことは承知していますが、今の人々の生活や社会体制・生き方を否定する意図は全く無く、今後の新しい選択肢を増やす取り組みとして暖かく見守って頂けますと幸いです。

ここまでの文章を読んで頂き、ありがとうございます。

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