Difyとスプシディファイを使って、スプレッドシートのふり返りに1クリックでコメントバックができるようになった話
おはようございます。小学校で働くささです。いつもICTやAIを活用した教育現場での情報も発信しています。今回は、自分的には激アツの内容です。
今回ご紹介するのは、ノーコードでAIプログラムが作成できる「Dify(ディファイ)」と、Google Chrome拡張機能「スプシディファイ」を連携させた、スプレッドシートでの振り返りコメントのたたき台を自動化の仕組みです。
まずは下の動画をみてもらうとイメージがしやすいです。
1. スプレッドシートにあるふり返りにコメントバックできる
前回の記事でDifyを使ったふり返りに対するコメントバックのワークフローを紹介しました。
今回はDifyのワークフロー機能を活用し、スプレッドシートに記述されているふり返りに対して、AIが先生の代わりにコメントを生成する仕組みを構築してみました。とはいっても、Difyアプリ上で一人ひとりの子どものふり返りをコピペして出力してまたその結果をコピペして・・・って実務としてはかなり手間ですよね。
振り返りをスプレッドシートで管理している場合、AIがコメントを自動生成できれば、先生の働き方は大きく改善されるはずです。大量の振り返りに対して、たたき台をつくってもらうことで即時的なフィードバックが可能になるかもしれません。
今回の記事では、「このようなAIツールの活用方法がありますよ」という一例として、振り返りをテーマにご紹介します。もちろん、他の場面にも応用可能ですので、ぜひ最後までお読みください。
今回使用する「スプシディファイ」は、Google Chromeの拡張機能で、スプレッドシートの機能を拡張するものです。この拡張機能を使うことで、スプレッドシートにある子どもたちのふり返りを入力変数として受け取り、LLM(大規模言語モデル)を使って生成されたフィードバックコメントを隣のセルに出力できます。
私がこれまで紹介してきたツールの中でも、この連携は非常に簡単です。ぜひ、一緒に設定を進めていきましょう。
2. 振り返りコメント自動化の仕組み:Difyとスプシディファイ連携
Difyについては以前、「ふり返りボット」の事例をご紹介しましたが、今回はDifyのチャットボット機能を活用し、AIが教師のように、子どもたちのふり返りについて対話しながらそのふり返りを広げたり、深めたりすることができる試みです。この仕組みは、クラス全員の個別対応を迅速なフィードバックを可能にする試みです。
本記事では、チャットボットは使いません。前回の記事で紹介したふり返りに対するコメントバックのワークフロー機能を使うことで「このような技術的な使い方ができます」という一例をご紹介します。
ふり返りをテーマとしていますが、他の業務への応用も十分に可能です。ぜひ、この情報をお役立てください。
スプシディファイとは?
今回使用するツールは、Chrome拡張機能「スプシディファイベータ版」です。これは、スプレッドシートの機能を拡張するもので、DifyのAPIと連携することで、スプレッドシート上のデータをDifyのワークフローに容易に接続できます。
どのスプシでもできる!!!!!!!!
この連携は本当に驚くほど簡単です!私がこれまで試した方法の中でも、群を抜いて手軽に実現できます。
今までは、スプレッドシートとGoogle Apps Scriptを連携させて、複雑な関数を記述する必要がありましたが(過去記事)、DifyのAPIを利用することで、どのスプレッドシートでも同じようにコメント生成が可能になります。
https://note.com/hiroki_sasazawa/n/na8ab7973cded
さらに、同じ学校の先生がスプシディファイの拡張機能をインストールしていれば、APIを共有するだけで、同じワークフローを共有することも可能です。
APIは有料となる場合がありますので、まずは個人で試してみるのが良いでしょう。お試しで利用する程度であれば、同僚の先生と共有してみるのも良いかもしれません。
全体設計
今回の仕組みは、以下の2つの設定で構成されています。
Dify側の設定
スプレッドシート側の設定
この記事では、この2つの設定について詳しく解説していきます。ぜひ、実際に手を動かしながら、その手軽さを実感してみてください。まずは、Dify側の設定から見ていきましょう。
3.Dify側の設定・準備
まず、Dify側の設定について解説します。Difyで新しいワークフローを作成し、必要なブロックとして「開始」「LLM」「終了」の3つを配置します。
開始ブロックでは、入力変数として子どもたちの振り返りを格納する変数を設定します。ここでは「query」という変数名にしておきます。(何でもよいが)
次に、LLMブロックに接続します。今回はGoogleのGemini を使用します。(LLMもお好みで)このLLMを活用して、子どもたちの振り返りに対して、先生のコメントのようなフィードバックを生成します。
ここで特に重要なのがプロンプトです。今回は、すごく簡単なプロンプトを使用します。過去記事ではプロンプトの具体的な内容についても記述しています。https://note.com/hiroki_sasazawa/n/n72a1a84a69f2
LLMブロックの設定では、コンテキストに開始ノードで設定した「query」変数を読み込ませます。そして、システムには、用意したプロンプトを入力します。ユーザーに細かな文字数や「コンテキスト」を呼び出します(紫色の文字)
最後に、この出力を終了ノードに接続します。終了ノードでは、LLMから出力された変数「text」を受け取り、処理を完了します。出力変数は「text」として設定しましょう。この「text」が出力変数となり、最終的にスプレッドシートにコメントとして表示されることになります。
設定が完了したら、Dify画面右上にある「アプリの更新」ボタンをクリックします。表示されたボタンの中から「APIリファレンスにアクセス」を選択し、APIキーをコピーしてください。APIキーは非常に重要ですので、厳重に管理してください。これでDify側の設定は完了です。
ポイント
Difyでの設定のポイントは以下の通りです。
入力変数: 子どもたちの振り返りを「query」(文字は任意)という変数で受け取る。
LLM: Google Gemini APIを使用し、教師のコメントのようなフィードバックを生成。
プロンプト: 子どもたちの思考を深め、励ますようなコメントを生成するプロンプトを使用。
出力変数: 生成されたコメントを終了ブロックで「text」として出力。
APIキー: 厳重な管理が必要。
この設定により、ふり返りに対して先生のコメントバックをAIで生成することが可能になります。次のセクションでは、スプレッドシートとDifyを連携させるスプシディファイの設定について解説します。
4. スプシディファイでの簡単接続:スプレッドシートとAIの連携手順
それでは、スプシディファイの設定に移りましょう。もう少しで完了です。まず、スプシディファイのインストールはこちらから拡張機能をインストールしてください。
インストールが完了すると、スプレッドシートの右側にスプシディファイのサイドバーが表示されるはずです。パズルマークをクリックして固定しておくと便利です。
スプシディファイを開いたら、プラスボタンをクリックして新しいツールを作成します。作成したツールに、先ほどDifyで取得したAPIキーを貼り付けます。これで基本的な設定は完了です。非常に簡単ですね。
次に、スプレッドシートを開きます。
子どもたちの振り返りが一覧表示されているものがいいでしょう。
まず、AIにコメントを生成させたい入力範囲を指定します。例えば、A2からA5のセルに振り返りが入力されている場合は、「A2:A5」と入力します。
そして、生成されたコメントを出力するセル範囲を隣の列に指定します。例えばB2からB5に出力したい場合は、「B2:B5」と設定します。
設定が完了すると、スプシディファイの画面に入力変数を指定する欄が表示されます。ここに、Difyの開始ノードで設定した変数名「query」を入力します。そして、出力変数の欄には、Difyの終了ノードで設定した「text」と入力します。これで準備は完了です。
「開始」ボタンをクリックしてみましょう。すると、一つずつワークフローが実行され、Gemini が生成したコメントがB列に入力されていくはずです。
いかがでしょうか。驚くほど簡単にAIによるコメント生成が実現できます。
5. スプシディファイを使った振り返りコメント自動生成の実践
準備は完了です。「開始」ボタンをクリックしてみましょう。すると、なんと!一つずつワークフローが実行され、AIが生成したコメントがB列に自動で入力されていきます。
これは非常に画期的です。以前、スプレッドシートでコメントバックを行う方法について記事を書きましたが、その際はGoogle Apps Scriptを活用していました。今回の方法はDifyのAPIを利用しているため、この拡張機能さえあれば、どのスプレッドシートでも手軽にAIによるコメントバックが可能になります。
さらに、同じ職員室の先生とスプシディファイの拡張機能を共有すれば、APIキーを共有するだけで同じワークフローを利用できます。APIは有料の場合もありますが、試用レベルであれば同僚の先生と共有して使用してみるのも良いでしょう。
今回の例は振り返りに対するコメントバックですが、アイデア次第で様々な活用方法が考えられます。ぜひ、色々な場面で試してみてください。次のセクションでは、この機能を教育現場でどのように活用できるか、具体的なアイデアについて見ていきましょう。
6. アイディア次第で教育現場で使えそう
今回ご紹介した振り返りコメントの自動生成ワークフローは、教育現場において様々な活用が考えられます。
例えば、
授業準備における教材の添削
児童生徒のレポートに対するフィードバック
個別指導の場面での質問対応
などその可能性は無限大です。
実際に使ってみて感じるのは、生成されるコメントの内容はプロンプトの質に大きく左右されるということです。これは間違いありません。
私のおすすめは、ワークフローの中でLLMを2つ組み合わせる方法です。まず、1つ目のLLMで多くのコメント候補を生成してもらいます。この段階では、どうしても文字数が多くなりがちです。そこで、2つ目のLLMを使って、文字数制限を設けたり(例えば80字から100字程度)、冗長な表現を削除したりといった調整を加えます。これにより、より意図に近いコメントを生成できると思います。このあたりは前回の記事でお話しています。
まだ試行錯誤の段階ではありますが、Googleフォームやスプレッドシートで振り返りを収集しているケースには十分に対応できると感じています。
この拡張機能はまだベータ版であり、今後の製品版としてのバージョンアップが楽しみです。今回は、私が得た最新の情報をお伝えしました。
Difyは、本当に魅力的なサービスです。単独のAIサービスを利用するよりも、様々なAPIを状況に応じて使い分けられる点が優れています。自由度の高いアプリだからこそ、大きな可能性を感じます。
今回は振り返りコメントの自動化をテーマにお話ししましたが、この技術は本当に様々な場面に応用可能です。ぜひ、皆さんもこの可能性を体験してみてください。この記事が、皆様の教育現場で新たな活用方法を見つけるきっかけとなれば幸いです。
7. まとめ
この記事では、Difyとスプシディファイを連携させ、スプレッドシート上で振り返りコメントを自動生成する画期的な仕組みをご紹介しました。
この記事のポイント
Difyとスプシディファイの連携: ノーコードでAIを活用し、スプレッドシートを強化。
振り返りコメントの自動化: Gemini Proを活用し、質の高いフィードバックを効率的に生成。
簡単な設定: プログラミングの知識がなくても、教師が簡単に利用できます。
教育現場での多様な活用: 振り返りだけでなく、授業準備や個別指導など、様々な場面で応用可能。
先生の働き方改革: AIの力を借りて業務を効率化し、より質の高い教育の実現へ。
今回ご紹介した仕組みは、まだ発展途上の技術ではありますが、教育現場におけるAI活用の可能性を大きく広げるものです。ぜひ、この機会にDifyとスプシディファイを試してみて、先生自身の働き方改革、そして子どもたちの学びの質の向上に繋げていただければと思います。
是非、教育現場でのAI活用について学び、試したことや考えたことを継続して発信していくつもりです。「スキ」「フォロー」してもらうと嬉しいです。最近コメントがもらえるようになりとても励みになります。
それでは、コメントお待ちしています。