AIとの対話で作る教材!15分で完成する社会科の調べ学習シート 〜Claudeを活用した個別最適化への挑戦〜
はじめに 社会調べ学習における課題
小学校で働く教員のささです。今日は社会科の調べ学習でのちょっとした工夫を紹介させていただきます。
私の学級では、調べ学習の際、児童たちに「さあ、調べてごらん」と投げかけ、教科書や資料集を使って学習を進めてもらっています。調べ学習の手引きを作り、それをもとに学習を進めます。
実際にやってみると、上位層の児童はすらすらと教科書や資料から必要な情報を見つけ出し、学習を進めることができています。でも、すべての児童がそうというわけではありません。
「教科書のどこを見ればいいの?」
「何をすれば調べたことになるの?」
「どうやってまとめればいいの?」
調べ方がまだ十分に身についていない児童からは、こんな声が聞かれます。
また、個々の児童の学習状況に応じた支援をするために、様々なワークシートや補助資料を準備する必要があり、これが教師である私にとって大きな負担となっていました。
そんな中、AI(特にClaude)を使って教材作りができないかと考え、実践してみることにしました。
この記事では、5年生の社会科「自動車をつくる工業」の単元での取り組みを紹介します。15分程度で調べ学習用のワークシートが作れるようになった実践例です。同じような課題を感じている先生方の参考になれば嬉しいです。
なぜ「フレーム」が必要なのか
先ほどお話しした課題を解決するため、教師サイドから調べ学習の「フレーム」を提供することを考えました。
具体的には、5年生の「自動車をつくる工業」という単元で実践を始めてみました。この単元では、自動車がどのように作られているのか、自動車を作るための関連工場と組み立て工場の関係、作られた車の世界への供給の仕組み、さらにはこれから求められる自動車づくりについて学んでいきます。
こうした学習内容を考えたとき、「調べてごらん」だけでは、児童が何をどう調べていけばよいのか迷ってしまうのは当然です。特に、複数の資料を関連付けて考えたり、現代の課題と結びつけて考えたりする必要がある内容では、より丁寧な支援が必要です。
そこで、段階的な問いを用意することで、児童が調べ学習に取り組みやすい環境を整えることにしました。
例えば
というように、基礎的な内容から発展的な内容へとスモールステップで進んでいけるようにしたいと考えました。
このような「フレーム」があることで、児童は見通しを持って学習に取り組めるのではないか。そんな思いから、AIを活用した教材作成に挑戦することにしました。
Claudeで実現する効率的な教材作成
1. 事前準備のポイント
効率的な教材作成のために、まず以下の3つを用意しました:
児童が使う調べ学習用テキストブックの画像データ
単元の指導計画
社会科で使用する知識の構造図
これらをClaudeに読み込ませることで、単元の内容や学習の流れを理解してもらいます。
2. 社会科調べ学習プロンプトの設計
次に、私がこだわったのがプロンプトの設計です。次のような構成で作成しました
システムプロンプト(AIへの基本指示)
経験豊富な社会科教師としての役割設定
生徒の発達段階に合わせた言葉遣いの指定
教科書データに基づく回答の重視
思考力・判断力・表現力を養う問いかけの重視
問いの構造設計(35分授業を想定)
基礎的な問い(導入・10分)
「クルマの歴史を年表で整理!」
「今のクルマってどんな特徴があるの?」
発展的な問い(展開・20分)
「環境にやさしいクルマの工夫は?」
「安全運転の新技術を探そう!」
「便利な機能を見つけよう!」
まとめ・振り返り(5分)
「わかったことをまとめよう!」
「もっと調べたいことは何かな?」
【実際に使用したプロンプト全文】
3. ワークシート生成のコツ
ワークシートを作る際に特に気をつけたのが、記述スペースの工夫です
基礎的な内容は穴埋め形式で
発展的な内容は自分の言葉で説明できるスペースを設定
思考を整理しやすいシンキングツールの活用
また、児童同士が自然と対話できるよう、「友だちの意見も聞いてみよう」といった活動を促す仕掛けも入れ込みました。
このように設計したプロンプトとClaudeを組み合わせることで、15分程度でワークシートの作成が可能になりました。教師の意図を反映しつつ、児童の学びを支援する教材を効率的に作れるようになったのです。
生成されたワークシートの実践例
1. 基礎から発展へつなぐ工夫
実際にClaudeが生成したワークシート
2. 学習効果を高める形式の工夫
ワークシートの活用方法については、次のような工夫をしました:
デジタルとアナログの使い分け
情報を集める際は紙のワークシート
HTML形式で出力したものをPDF化して印刷
教科書と見比べながら書き込みやすい
まとめや発表の際はデジタル
ロイロノートでカード化して配布
友達との意見交換がしやすい
記述スペースの工夫
基礎的な問いは穴埋め形式で取り組みやすく
発展的な問いは自分の言葉で表現できるよう広めのスペース
思考の整理に使えるよう罫線や枠を適切に配置
実際に使ってみると、児童たちは自然と対話をしながら学習を進めていきました。資料を一緒に探したり、書いた内容を確認し合ったりする姿が見られ、予想以上に学び合いが生まれていました。
特に印象的だったのは、調べ方に不安のあった児童も、段階的な問いかけがあることで、「まずはここから調べてみよう」と前向きに取り組めていたことです。
一方で、改善の余地もまだまだあります。例えば、教科書の該当ページをより明確に示したり、調べるポイントをより具体的にしたりする工夫が必要かもしれません。
実践を重ねながら、より使いやすいワークシートの形を探っていきたいと思います。
実践を通じた可能性と課題
1. 教材作成の効率化
これまで1時間近くかかっていた調べ学習用ワークシートの作成が、なんと15分程度で完了するようになりました。この時間短縮の理由は主に2つあります:
プロンプトテンプレートの活用
一度作ったテンプレートの使い回しが可能
単元に合わせて微調整するだけでOK
AIによる問いの自動生成
基礎から発展まで、バランスの取れた問いを短時間で作成
出力結果を見ながら細かく指示を出す。
模範解答も一瞬。
この時間の余裕は、個別の児童への支援を考えたり、授業の展開を工夫したりする時間に充てることができています。
2. 児童の学びの変化
予想以上だったのは、児童の学び方の変化です
自然な対話的学びの実現 「ねぇ、この写真見て!」 「ここに書いてあった!」 「私はこう思ったんだけど、〇〇くんはどう思う?」
こんな会話が教室のあちこちで聞こえるようになりました。ワークシートの問いかけが、児童同士の対話のきっかけを作ってくれています。
個々の理解度に応じた取り組み
基礎的な問いから着実に進められる子
発展的な問いにどんどんチャレンジする子
友だちと相談しながら進める子
それぞれの児童が、自分のペースで無理なく学習を進められるようになってきました。
3. 今後の展望
実践を通じて、さらなる改善点も見えてきました
AIへの指示の精緻化
膨大な資料から、本当に必要な部分を抽出する工夫
単元のねらいに沿った模範解答の生成
より効果的な思考ツールの提案
アナログとデジタルの効果的な組み合わせ
情報を取り入れる際はアナログの方が効果的
考えを表現し発信する際はデジタルが有効
この使い分けの最適なバランスを探っていきたい
おわりに AI時代の教材作成に向けて
今回の実践を通じて、AIは決して教師の代わりになるものではなく、教師の思考を整理し、具現化を支援してくれるツールだということを実感しました。
大切なのは、児童一人一人の学びを支えたいという教師の思いと、児童の実態をしっかりと把握することです。その上で、AIという新しい道具を効果的に活用することで、より良い授業づくりが可能になると考えています。
これからも実践と改善を重ねながら、よりよい教材作りを目指していきたいと思います。この記事を読んでくださった先生方も、ぜひ実践してみてください。そして、新しい工夫や改善点がありましたら、ぜひ共有していただければ嬉しいです。
みんなで知恵を出し合いながら、AI時代の教材作りの可能性を広げていけたらと思います。スキやコメントお願いします。