
6人の嘘つきな大学生【読書/レビュー】

一斉を風靡する最大手IT企業の最終面接でのグループディスカッション。全員が協力して内定を目指すが直前になって採用枠が1人、しかも自分達で内定者を決めるという異例の事態となる。そこで不審な封筒が用意されそれぞれの隠したい裏の顔が暴露され本性が露呈していく・・。数年後、当時の真相が、就活という活動が、人間の本質というものがどういうものかが大学生側、採用側の視点で語られる。
映画で話題になっていた時期にちょうどkindle unlimitedの対象となっていたのでなんとなく読み始めたけど読み進めるにつれてどんどんハマっていった。
一見優秀な良い人にの裏の顔、誰にも隠したい過去が暴露され、絆と理解を深めたはずの仲間たちが脆くも互いに疑心暗鬼に陥っていくリアルな空気感がすごい、読んでいてハラハラするほど。
「完全な善人も完全な悪人もこの世にはいない、一面だけを見て判断することほど愚かなことはない」
一見不遜と思える行動にも誰かを思いやるその人の優しさが隠されているくだりも誰しも理由のない行動は無く見た目で判断している現実を突きつけられた感じを受ける。
どの人にも得意不得意、良い面悪い面を持ち合わせており、ある一面だけ見て決めつけてしまう考え方を改めないといけないと強く共感した。
また採用側も本当に人を見抜けているのか?という疑問も興味深い、人事も2、3回の数時間の面接で人の内面まではわからないというのが実のところというもの。
現実に正しく採用されてないとは思わないし、今のシステムも過去の努力が練り上げられて良いものにしようとしてきた結果で出来た流れではあることは間違いない。だけど優秀なはずの人が問題になったり、不採用の人間が後に大成功するパターンも現に存在してる。時代が変わりつつある現実に何か警鐘を鳴らしているようにも感じた。
ミステリと人間の本質をつくという要素を就活を舞台に進んでいくこの作品、妙な現実味を感じて久しぶりに一気に読了した。映画も是非見たい。