なぞなぞの犬
連休になると犬が来る。
叔父と叔母の家に暮らす柴犬の「ウニちゃん」は、車酔いが酷いので旅行が出来ない。
そのため、叔母が地元に帰省する度に彼は自宅から30分ほど車に揺られて、よだれをダラダラと垂らしながら僕の実家へ居候しにやって来る。
親戚と言えど客人(犬)を迎える我が家は、ゴールデンウィークも盆も正月もお犬さま中心の生活を余儀なくされる。
このウニちゃんは中々の苦労人(犬)で、ペットショップに殺処分ギリギリまで売れ残っていた。
そして、叔父と叔母が店に訪れた時にはわずか3万円という超特大終末セールな価格となっていた。
愛嬌も見事に3万円である。
見た目は他の柴犬同様それなりに愛くるしいが、飼い主が帰ってこようがオモチャを与えようが何をしようが「フンッ」てな無粋な態度を取る。
もう少し元気に走ったり、尻尾を振ったりと犬らしくしてくれない?と少し思う。
しかし、エサとお散歩以外にはほとほと興味を示さずいつも澄ました顔をしている。
ハードボイルドを貫く、
真っことつれない犬である。
ウニちゃんは柴犬なのに
室内犬として飼われている。
叔父と叔母は共働きであるため、
1日の大半をお家の中でお留守番をして過ごす。
そのせいか体重が約15キロもある。
ウニちゃんを見てから他の柴犬を見ると、
彼らがえらく貧相に見えてしまう。
しかし、それは逸ノ城を見てから他の力士を見た時のそれとほぼ同じ感覚である。
そんな重量級の柴犬が家にやって来ては、部屋や廊下でねっ転がるのでとにかく邪魔で暑苦しい。
家族はドーンと横たわる柴犬を愛らしさと鬱陶しさの入り混じった妙な感情を抱きながら跨いでいる。
家族でウニちゃんと最も心を
通わせているのは僕の弟である。
彼はウニちゃんを自分の弟のように可愛がっている。
この前の盆休みも熱帯夜に嬉々として
散歩に連れて行ったのは彼であった。
ウニちゃんが帰る日の前夜、
弟は学期末みたいな表情で「ウニちゃんは近くにいるとウザいけど、離れると可愛いな」と呟いた。
なんだか、なぞなぞみたいだった。
子供の頃にツヤツヤな表紙の本で読んだ
「お腹がいっぱいになると軽くなって、お腹がすくと重くなって動きにくくなるものなーんだ?」みたいな感じの。
答えはたしか「風船」だった気がする。
近いとウザくて、
遠いと可愛いものってなーんだ。
答えは、ウニちゃん。
だけでもない気がしたけど。
そんなこんなで翌る日の朝、
最後までドライだったウニちゃんは
その体よりも大きい大切な“何か”を残して、
よだれをダラダラと垂らしながら
山の向こうへと帰って行った。
中川裕喜
安住の地 第4回本公演
音楽劇『Qu’est-ce que c’est que moi?(ケスクセクモア)』
構成・演出:岡本昌也
音楽:バカがミタカッタ世界。
【公演日時】
2019年9月
13日(金)19:30
14日(土)14:00 / 19:30
15日(日)13:00 / 18:30
16日(月・祝)11:00 / 15:30
【会場】
THEATRE E9 KYOTO
住所:京都府京都市南区東九条南河原町9‐1
【チケット料金】
一般 3,000円 / U-25(25歳以下) 2,500円 ※当日料金+500円
高校生以下1,000円(前売・当日料金一律)
※受付にて学生証か年齢のわかるものをご提示ください。
https://ticket.corich.jp/apply/99747/
ご予約はこちらから。
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