在露邦人として今を生きるリスクと、今の自分にできること
私は2024年11月現在、在露邦人と呼ばれる立場の人間です。
在露邦人と一言で言っても、人によって考えやロシアに対するスタンスは十人十色ですが、外から雑に一括りにされて槍玉に挙げられると、腹が立つ時も当然あります。
今回は、私がそんな在露邦人として暮らすことで感じているリスクの内の1つについて、そして皆様に理解していただきたい点、その上でわたしがするべきこと・できることなどをまとめていきます。
あくまで私の視点からの私の意見ですので、他の在露邦人の方々とは意見やスタンスが全く異なることも当然あります。その点、ご承知おきください。
在露邦人として生きることのリスクと、私ができること
最初に、在露邦人として生きることで発生するある1つのリスクについてお話します。
過激な日本人が引き起こすリスク
標題のリスクについて述べるため、まずは時系列で私の身に起きたSNS(Twitter)を発端とするトラブルについて述べていきましょう。
私は2021年10月頃に、日本での内定先に最終的な断りの連絡を入れて現勤務先への再就職を決断しました。その後2022年2月24日、ロシア軍がウクライナ国内で大規模に展開し、本格的な戦争が始まります。
私は開戦のはるか前から、そして開戦後も、ロシアに関する情報をしばしばツイートしていたのですが、ロシアで働く予定である身のため、戦争についてはかなり慎重な発信をしていました。
そのような中、2022年4月初旬、捨てアカウントを利用した戦争に関連した誹謗中傷がはじめて届きました。
これらの最初の誹謗中傷ツイートについては、スクリーンショット等で証拠を保全する前に相手が私をブロック、そしてアカウントを消去してしまったため画像はありません。ただ、主な内容は次の通りだったと記憶しています。
ロシアに在住経験があり、そして再びロシアに住む予定なのにロシアについてのデマを流すな。
お前はブチャの虐殺が事実だと言った。あれは西側の捏造だ。お前は西側のスパイだな。
お前の行動やツイートを、駐日ロシア大使館や勤務予定の大学に通報する。
(なお、2番目のブチャの件については、似たようなタイミングで全く別の日本の某私立大学の元教員の方から、「こいつはブチャの虐殺をフェイクと言っていた親露だ!許せない!」という趣旨のことを引用で言われてしまい、両者に怒りと呆れとあまりにもの馬鹿馬鹿しさに頭を抱えた記憶があります…。)
その後、上記3点を主にした脅迫については、「口先だけだろう」とあまり気にせずにいました。そもそも脅迫文に書かれた内容が事実ではないので。ところが約2週間後、勤務予定先の担当者から以下のメールが送られて来たことを告げられ、事態がより深刻であることを思い知ります。
その後、大学側と話をし、メールの内容が事実ではないことを確認した上で就労手続きを再開しましたが、下記のような捨て垢による嫌がらせや脅しの書き込みが散発するようになります。
そして5月末、再び大学の担当者からメールが来たという連絡が。この時は私の過去ツイートのスクリーンショットを添付し、ツイート内容や過去の行動を糾弾するものでした。
大学の担当者からは「このメールが大学で問題になるかもしれない。とにかく今後SNSには気を付けて。」と連絡がまずありました。その後、メールの文面と添付されたスクリーンショットの内容を日本語の先生と担当者がチェック。メールの内容と証拠とされたツイートのスクリーンショットがあまりにも支離滅裂だったり、過去に私が働いていた時の行動についての糾弾についても、当時を知る方々の証言からメールの内容は虚偽であると判断されたりしたため、担当者はメールを戦争を利用した悪質な妨害行為と判断。引き続き就労に向けた手続きが行われることになりました。
なお、ここまで掲載したメールは全てロシア語で書かれており、特に2つ目はロシア人を名乗っています。ですが文章構造がどちらもロシア語ではなく日本語のものとなっており、日本語母語話者の同じ人物が書いたもので間違いないだろう…と複数の日本語を解するネイティブや日本人のロシア関連の先生方から言われております。
また、ツイートやメール内で「ロシア大使館に通告した」「ガルージン駐日大使(当時)に対してメッセージを書いた」など散々脅されましたが、結局問題なくビザが発行され、2022年8月にロシアに渡航、予定通り再就職しました。
ただ、2022年5月のメール以降も、そして私がロシアに渡航した後も、文体やアカウント名、書き込みの内容、”暴言→ブロック→アカウント削除”…というお決まりのやり口から、同一人物と推測される複数のアカウントからの嫌がらせの書き込みが続きます。
このあたりの迷惑行為についてはスクショ保存をしていたのですが、スマホを買い替えた時に行方不明になったものが多く、証拠として不十分かつ分かりにくくなっています…。証拠保全をしっかりとしていなかったことを反省しています。
そして、特に酷かったのがこちら。一瞬引用RTをされた後(すぐに削除した模様)、気になったのでそのアカウントを見に行った結果見つけたツイートでした。
私のツイートから勝手に私の考えを決めつけ、なおかつ私の身に危害を加えようとしているのがよく分かると思います。
個人的には鈴木宗男氏の訪露については、「何らかのメッセンジャー的な役割を日本政府側から非公式・非公開で要請され担ったていたとしてもおかしくないのでは。ただ、それが上手くいく可能性は非常に低いだろう…」とは思っていました。
なお、このツイートの後で大学に連絡が行ったのかは不明です。行っても黙殺しているとは思いますが。
この後も恐らく同一人物と思われる複数のアカウントからTwitterで散発的に嫌がらせの投稿をされましたが、2023年8月以降は、私に対する嫌がらせは“表向きは”何故か止まってはいます。
ここまで、Twitterを発端として起きた脅迫騒動について簡単にまとめてみました。
現在ロシアは戦時中であるため、ウクライナで進行中の戦争に関する発言については社会全体がかなりピリピリしています。戦時中ならではの法律もあり、場合によっては外国人でも拘束や処罰のリスクがあります。私がそうなった場合、自身だけでなく学生や同僚といった周囲の人達も巻き込み不幸にすることになります。
そのような状況の中で、過激な日本人が人の発言を捻じ曲げ、それをロシアの関係各所に実際に密告のような真似を行ったり、密告をするぞと脅しをかけたりしてくるのです。
「ロシアに住んでいる人間として、もっと言うことがあるだろう!」という各方面からの怒りの声はよく理解しています。ただ、一方で人の発言を捻じ曲げてまで気に食わない人間に危害を与えようとする過激な日本人もいるのです。私が「あ」と言ったものを「え」と言ったとして発言を捻じ曲げ、それを使って人を貶め危険な目に遭わせようとする人間がいるのです。そのような卑劣な人間が実際に存在する状況では、本来は言えるはずのことまでも言えなくなって当然でしょう。それでも「言え!」「しろ!」というのなら、もし私やその周囲の人に何かあった場合、貴方が責任を持ってすぐに補償してください。必ず補償することを誓ってください。それくらい危険なことをさせようとしている自覚を持ってください。
私にできること、すべきこと
こういったことがある中で、私にできることの一つは、現状のロシアをできる範囲でありのまま伝えることだと考えています。プラス面もマイナス面も、どうしてもロシアの状況は誤解されて日本に伝わりがちです。地方の話については特に。そして、残念ながらロシアについてプラス面についてもマイナス面についても、日本語でデタラメな情報を流す人たちもいます。
現在の情勢を打開するために、解決策を模索するためには、ロシアの現状を本当の意味で知ることはとても大切なことのはずです。そこに貢献することが在露邦人ができることの1つなのでは…と思い、Twitter等でちょくちょく発信をさせていただいております。
また、このような情勢の中では、日本についての不正確な情報がロシアで広がってしまうことも多い印象があります。
今後この戦争やそれに関連した事態が終結したとき、隣国同士である日本とロシアの国家間の関係を構築し直す時が必ず来ます。その時、日本について不正確な情報がロシア人の間に広まっていた場合(その逆も然り)、関係再構築の障害になったり、新たな不幸な事態へのきっかけになったりするでしょう。
私は日本語教師として働いていますが、日本語を教えるのはもちろん、ネイティブの日本人として日本のことについても授業内外で学生や同僚に説明したり伝えたりすることが多いです。バイアスをなるべくかけずに日本のありのままを伝えることも、私がするべきことの1つなのでは…と考えています。
おわりに
今回、色々と思うことがあってこのnoteを書きました。現状を在露邦人として生きることのリスクは他にも色々あります。それらについては、また別の機会にnoteに書くかもしれません。
私は現段階では、現状のロシアでの仕事は来年8月末に契約が切れるまで…と決めています。悔いのないように毎日を過ごし、日本や日本語に興味を持った人達が、この世界情勢の中でも、その日本や日本語への興味がきっかけで人生が好転したり豊かになったりすることができるように、微力ながらサポートしていきたいです。