カエサル『ガリア戦記』
読書録、始めます
どうも初めまして!厨二病=スタイリッシュ×情熱的×一歩間違えるとイタい。この価値観においていずれカエサルを超え、天上天下古今東西総ての頂点に君臨する漢、阪本です。
上の写真で手だけ出てるのが僕ですね。イタリアのビールめっちゃ美味しかったです。あ、銅像はもちろんカエサルです。
てなわけで!これから月1、2ペースぐらいで読んだ本の備忘録を付けていくことにしました。(ホント言えば読書ブログを開設する予定だったんですが、プログラミングの勉強がちょっと滞ってしまった関係で、とりあえず一旦はnoteにぶち込んで参ります...)
暇を持て余した方!物好きな方!てか阪本が好きな方!(いるのか?)はたま〜にチェケラして頂けたら幸いです!あ、ちなみに阪本が好きって話で言うと、彼女も絶賛募集中です!誰も聞いてないですね!
とまあ前置きはこの辺にしておいて、早速今回の話に移っていきましょう!
作者について
ヘーゲルがその主著『歴史哲学講義』の中で世界史的個人の代表例として賞賛した3人の内の1人、ユリウス・カエサルその人が、この本の作者です。ちなみに残りの2人はアレクサンドロスとナポレオンということで、もうこの時点で人類史の偉人中の偉人だろうことは、お察しいただけるかと思います。ノーベル賞作家のギボン曰く「ローマが生んだ唯一の創造的天才」、オルテガも古代世界に2人だけ存在した天才の内の1人としてカエサルを挙げるなど、崇拝にも近い感情を一身に浴び続けてきた、誉れ高き大英雄です。あの皮肉屋のニーチェですら、カエサルを褒めているぐらいですからね。(断じて、FG◯で星3になるような微妙なポジではございません。頼むから早く別クラスで星5にして出してくれマジで!運営はとりあえずヘーゲル読めよ!?イスカンダルとナポレオンと揃えてくれや!?)
ユリウス・カエサルと聞いてピンと来ない方でも、ジュリアス・シーザーと英語読みで名前を聞けば「あ、聞いたことはある!」となるかもしれませんね。(ちなみにシェイク・スピアの『ジュリアス・シーザー』は若干タイトル詐欺ですし、シーザーサラダはカエサル自身とは関係がないのでご注意ください。笑)
もうカエサル凄すぎて、というかシンプルに僕が信者過ぎて、彼の経歴だとか関連情報だとかを語り出すとキリがないです。いつまで経っても本の中身にいけないです。僕の土曜日が消え去ります。
なので一言でいうと、ローマを後世に名を轟かせる偉大なる大帝国に創り変えた男、それが彼です。帝政、軍政、社会保障のスキーム、暦法、情報伝達網等々、彼が築き上げた革命的なグランドデザインなくして、その後約500年に渡って存続することとなる、偉大なるローマ帝国の繁栄は有り得ませんでした。彼がブリテン島に上陸した瞬間を指して、「この時大英帝国の歴史は始まった」と語るチャーチルの言葉も、言い過ぎではないわけです。(まあブリテン島に関しては、カエサルはすぐに放棄するわけですが。)
この本について
今回紹介する『ガリア戦記』は、弁護士の父キケロと並んでラテン文学の二大巨頭とされるカエサルの主著です。(文学界でも金字塔を打ち立てているとは本当に恐ろしいバケモノですよね...笑 しかもこれ、戦争中に口述筆記で奴隷に書き取らせて完成させたという話なので、もう意味がわからないです笑)
簡潔な文章と文体が文学的価値とされる所以ですが、残念ながら近山金次郎さんの訳に頼った私としては、その辺りのところは実際よくわかりません。いつかはラテン語で読みたいものですね。あ、ちなみに近山さんが訳している岩波文庫のものは大変読みやすくて良かったです!地名・人名索引もついていて、文句は一切ございません。
『ガリア戦記』はタイトルの通り、ガリア即ち現在のフランスにあたる地域で行われた、一連の戦争の記録が収められたもので、年毎に巻が別れ全7巻構成となっています。スウェトニウスによればカエサルは毎年、元老院へかなり詳細な戦争報告書を送っていたようで、訳者の近山さん曰く、これが本書の元となっているのではないか、とのことです。
この戦争は、カエサル個人にとってはローマ世界の頂点へと至る土壌を用意したものであって、ローマ全体にとっても、史上最大級の制服行となり多大な影響を与えた、非常に重要な戦争でした。そういう意味で、ガリア戦争の第1級の史料としても、極めて重要な書物になっています。
ガリア戦記=厨二病過ぎる漢たちのドラマ
ではどんな本なのか、いよいよ本の中身へ移っていくわけですが、私がこの本を読み終わって持った感想は、「カエサルの下で働きてぇ...!!!」でした。
塩野七生さんが、警察官をやっているイタリア人の友人の、カエサルについての本を読んだ感想が「百人隊長の一人にさせてくれとでも頼みたい」というものだった、と主著『ローマ人の物語』の冒頭で書かれていましたが、まさしくそのような感じです。
何故そう思わされるのか。それはこの本を読んでいて目立つのが、カエサルではなく、彼の部下たちだからです。『ガリア戦記』はカエサル当人ではなく、彼の部下たちが綺羅星の様に輝く本なのです。その綺羅星のなかで、北極星の如く君臨するカエサルの名上司っぷりが時折発揮される、そういう本なのです。
後に敵となるラビエヌスの右腕っぷり、パルティアで散る運命のプブリウス・クラッススの有能さ、敵の騙し討ちにあって無念の死を遂げる知将サビーヌス等々、本当に紹介したい部下たちが目白押しなわけですが、僕が一番好きなのは、2人の百人隊長、ティトゥス・プロとルーキウス・ウォレヌスの話です。少し長くなりますが、近山金次さん訳『ガリア戦記』より、第5巻44を引用させていただきます。(なお丸括弧内は僕の注釈です。)
2人のケントゥリア(百人隊長)
”この軍団には、一級に間もない勇敢な百夫長(百人隊長のことです。百人隊長にも階級があって、一級は軍団兵の最高位に当たります。)ティトゥス・プロとルーキウス・ウォレヌスがいた。二人のうちいずれが優れているかということで互いに絶えず争い、毎年はげしい競争で地位をとり合った。プロは堡塁(小型の要塞)の前で烈しい戦闘になると「やいウォレス、ぐずぐずするな、腕の見せどころだぞ、今日は勝負を決めよう」と言った。そういうが早いか堡塁の外へ出て、敵の密集しているところへとびこんだ。ウォレヌスも堡塁に止まるわけに行かず、皆の評判を恐れてこれに続いた。僅かな距離を置いてプロは槍を投げ、多勢の中から駆け出て来た一人のものを貫いた。その人は傷ついて死んだが、敵はこれを楯で蔽い、皆でプロにテラ(投げる系の武器全般)を投げて前進をとめた。投槍はプロの楯をつきぬけて腰帯にささった。苦しんでいるプロを敵が包囲した。好敵手のウォレヌスはこれに駆け寄って苦闘しているプロを救った。プロが投槍で死んだと思った敵はプロから転じてウォレヌスにかかってきた。ウォレヌスは剣で渡り合い、一人を殺して他のものをやや押しまくった。が熱心に逐い過ぎて窪地にころげ落ちた。ウォレヌスが包囲されると今度はプロがこれを救い、両名とも無傷で多くのものを殺し、大喝采を浴びて堡塁に戻った。この競争、この勝負では幸運がこのように二人にひらけ、手伝い合って相手を救った。どちらの武勇が優れているかは決められなかった。”
・・・ジャ◯プか???週間少年ジャ◯プなんか???流石にサワヤカ過ぎません???
思わず「サワヤカーwww」と本に書き込んでしまいました。こんなんアツ過ぎやろ!
とまあこんな風に、血沸き胸おどる武勇伝がめくりめく繰り広げられる戦争物語、それがこの『ガリア戦記』なのです。
『ガリア戦記』は何故こんなに厨二病なのか?
こんな報告を年1で聞いていた当時のローマの若者達はどんな気持ちだったかを考えてみてください。僕のように「この人の下で働きてぇ!!!」と思ったとしても、何の不思議もないですよね?というか当時の彼等はリアルにカエサルの下で働けるチャンスがあったわけです。「俺も百人隊長になってカエサルの本に登場してぇ、!」ぐらい、若者なら夢を見たかもしれません。
カエサルは当時の指導者層である元老院に対抗し、三頭政治なるものを行った程度には、既得権益層の打破を目論んでいました。そこで必要になるのはいつだって、若者達を中心とした、既得権益外の人々の動員です。『ガリア戦記』はそんなカエサルにとって、絶好のプロパガンダとなったことでしょう。元老院派の重鎮でもあったキケロは後に、カエサル派となった息子を嘆いたそうですが、まあ効果抜群、といったところでしょうね。笑
このプロパガンダとしての重要性をしっかり理解するためには、当時のローマが置かれた状況の理解が不可欠なわけですが、その辺は別の本の紹介の際にまた深めるとしましょう。
この本から我々が得られること
とはいえ、我々はカエサルがルビコンを渡った紀元前49年1月10日よりは、2000年以上の後の世を生きる人間なわけです。カエサル信者の私以外の人にとって、この本から学び取れることは何か。ここでは、3点挙げておきます。
1.熱量
まあこれは間違いないです。最初読み始めは淡々としているし、「うーむ」となるかもしれませんが、根気強く読んでいくと、アツさがわかります。「劇的な場面においても、劇的な表現を好まなかった」とは塩野七生さんの文豪カエサル評ですが、簡潔に書かれているからこそ、胸に迫る漢たちのドラマがそこにはあります。
2.戦略論
カエサルは第1級の軍人でもありました。これはかのナポレオンが詳細にその軍略を研究していたことからも明らかです。単なる戦闘面だけでなく、ロジスティクスやマーケティング戦略など、現代の我々にも活きる、示唆に富んだ一冊になっています。
3.人心掌握術
これに関しては、見事、という他ありません。兵士が戦意を喪失した際にどのようにモチベートするか、部下が失敗した際にはどのように対応すべきか、カエサルのリーダーとしての在り方には、現代社会にも通じる部分があります。ただし使い方には要注意です。カエサルの真似をして兵士に殺されたローマ皇帝もいるので。笑
さて、以上長々とお付き合いいただきましたが、やはり実際に読んでみるのが一番です。興味を持っていただけた方は、是非本書を手に取ってみてくださいね!賽は投げられた!