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サウンドトラックと調和

4月11日
那須塩原駅に到着した。
駅を出ると、何も無く駅の周りに小さな建物が数軒あるだけでその向こう側には畑が見えた
その数件ある建物の8割はレンタカーショップで
競合レンタカーが7軒程連なっていた

そこで既に予約していた安いレンタカーショップで車を借り走り出すと、カーステレオにはBluetoothすら付いていなかった。

数日前にドライブマイカーを見ており、そのサウンドトラックを流しながら走りたいなと思っていた為少し残念な気持ちで、アクセルを踏んだ。

しかし、窓を開けて自然の多い那須の空気を吸いながらドライブをすると、音楽も要らないのではないかとも思ってくる。


4月25日
ドライブマイカーのサントラを聴きながら地下鉄の駅で電車を待っている、やはり都会の雑音の中で音楽は必須である。
自分の好きな映画を思い返してみると、サウンドトラックと映像のバランスを自分は重要視していると再発見をした。バランスなのか、サウンドトラック自体が映画を支ているのか...分からないが
ドライブマイカーは8:2で石橋英子の優勢に思えた

好きな映画のサウンドトラックはいくつかある

まず1番に思いつく好きなサウンドトラックは
アントニオサンチェスの「Birdman」だ

「Birdman」

全編がサンチェスのドラムソロで進行していく、ワンカット風映画の中で場面転換のブリッジの様に上手く作用しており、サンチェスのドラムも存分に堪能できる、とても好きなサントラである。

ドライブマイカーのアカデミー外国語映画賞受賞で頭をよぎるのはこの映画であるが
バードマンのサントラがサンチェスでは無かったら、作品賞は取ってないとすら思っている。

舞台の緊迫感、ワンカットのドキュメンタリー性とドラムソロのインプロが上手く作用し、映画全体の緊張感をキープし続けてくれる
サンチェスがこの物語を先導してゆき、観ている人に寄り添って話を進めてくれている気さえしてくる。最高のサウンドトラックだ。サウンドトラックというか主演アントニオサンチェスと言っても過言ではない。

緊張感でいうともう一本痺れたサウンドトラックがある。それはランディーニューマンの「Marriage Story」である

「Marriage Story」

ランディニューマンといったらトイストーリーでお馴染みの作曲家だが

マリッジストーリーは夫婦の離婚を描いた少し重い作品である。喧嘩シーンも多く2人のすれ違いに心を痛め、一定の緊張感の中話は進む。

そんな映画のサウンドトラックが、まさなのランディーニューマンなのだが、これが最高にハマっている。というかランディーニューマンでこの映画のバランスが初めて成り立っているのかもしれない。

日常でワクワクするランディーニューマンの音楽だが、少し切なくて楽しそうなピアノや管楽器の音色がドタバタと進む、離婚プロセスの中でのリアルを見せてくれる。

ツラい筈の離婚プロセスの中にも、以前愛し合っていた2人がいて、今も少し関係が変わった2人の間には日常があって、それもまた生きていくことなんだと感じさせ、少し暖かくなる。

シリアスな映画に、暖かい音楽という違和感が
とても心地よく
この映画もこのサントラがついて初めて映画として成立したんじゃないかと思うくらい本編との調和が素晴らしい

最後に、どうしても語らないと終われないサウンドトラックがある
Blood Orangeでお馴染みのDevonte Hynesの「We Are Who We Are」だ

「We Are Who We Are」

映画ではなくドラマシリーズなのだが、このドラマを見てない人が居たら即座に見て欲しい。
これこそが映画であり。映像である。と言える程凄まじい力がある。

そんなドラマのサントラを手掛けているのがDevonte Hynesである
劇中ではBlood Orangeの曲も使われるし、サントラも彼が作っているが、サントラの方はジョンアダムスやスティーブライヒ的なミニマルミュージックっぽさがある。
ピアノのループやエモーショナルな展開がとても心地よく映像とシンクロする。

曲の冒頭の不釣り合いなシンセサイザーが入ったりとアヴァンギャルドな違和感が、作中の心情ともシンクロしており、全てが美しくまとまっている。

若者たちの繊細だけど、波打つ心拍を
音楽でも感じる事ができる
触ったら壊れてしまいそうな、氷の結晶の様なものを耳でも感じ

触れたくても触れられないものに触れることが出来る、そんな気がするドラマなので是非見て欲しい。


今回、紹介した3人は少し異質かもしれないが
ある種、ジャンルやルールを超えたこの3本は多くに影響を与える作品になったんだと思う

バードマンはサイレント映画的な音楽の付け方で、マリッジストーリーは逆説的なサントラ
We Are Who We Areは本編を見れば、音楽の本質に近づいてゆくのが感じ取れる筈だ

ドライブマイカーのサントラは素晴らしい
どこか雲の上の様な死を感じさせる切なさもあり、どこか遠くまで連れてってくれる様な解放感もある。
そこが、引っ掛かる

ドライブマイカーでのドライブはどこか遠くまで連れてってくれるのでは無く
家と仕事場を行き来するドライブである
もちろん、終盤少し遠くへドライブする訳だが
それもまた決まった場所へ行き帰ってくる。
そして、そこに映像的な解放感があまりにもない

このドライブマイカーのサントラではカフカ鼾の面々も参加しているらしいが
2011年の「Simon Werner a Disparu」は全編ソニックユースがサントラを担当しているが、これもまた素晴らしいサントラだ。


4月11日
東京の満開は雨と被り、桜は雨の中で散っていったが
那須ではちょうど今週が満開だった

やはり、車で音楽がないのは寂しかった
生活中には音楽を挿入できないので
せめて車の中だけでもあってもいいかもしれない

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