陽干の剋は男の喧嘩、陰干の剋は女の喧嘩、陰陽の剋は夫婦喧嘩
今回は五行の相剋について説明します。
剋について
相剋とは陰陽五行説(万物は主に五つの要素に分類できる)における「木・火・土・金・水」の五つの要素が戦い合っている関係にあります。
下記のイラストの矢印を参考にして十干の相剋の関係を示してみましょう
青い←が天干同士が相剋する関係です。
相剋は陽干同士、陰干同士、そして陰陽互いの干合関係とがあります。
その性質や力量によって、違いが存在します。
左が剋す側、右が剋される側となります。
本来なら、相生相剋は主体客体によって「洩、生、分、剋」と区別するのですが、ややこしくなるため表記を相生と相剋にしています。
例えば、木を持つ甲(きのえ=陽木)は、土である戊(つちのえ=陽土)に対して相剋となります。
同じく木を持つ乙(きのと=陰木)も、土である己(つちのと=陰土)に対しても相剋となります。
どちらも「木剋土」となり、地に根が張る関係です。
ですが、この陰陽違いの相剋、どのような差となるのでしょうか?
陽と陰の違いとは?
陽干と陰干の違いでまず語られるのは、その力量の差にあります。
陽干は一般的にエネルギーが強く、相剋の際には打ち勝つ力が大きいほうに軍配が上がります。
お互いが陽干である甲(きのえ)と戊(つちのえ)の関係では、甲木が戊土を剋すことができます。これを「疎土(そど)」といいます。
大樹の根が岩土を解す関係です。
一方で陰干は陽干に比べてエネルギーが弱く、相剋の際には相手に打ち勝つことができない場合があります。
例えば甲(きのえ)と戊(つちのえ)の関係が陰に転じた場合、木の陰である、乙(きのと)と己(つちのと)のケースはどうでしょうか。
たしかに陽干の甲木と戊土と同様、乙木と己土も相剋の関係となります。
ですが、陰干同士の相剋の場合、乙木は土台を押し崩すような力関係ではなく、己土のエネルギーを養分として、吸い取ってしまう関係となります。
陽と陰とではエネルギーの指向が異なることに注意が必要です。
陽干と陰干の剋の違い
陽干同士の相剋は強いエネルギーのぶつかり合いによって明確な影響を及ぼしやすいという特徴があります。
たとえば道でトラックにぶつかったら、ぶつけられた方角に力が作用して、自分が軽ければ(身弱)遠くに飛ばされ、重ければ(身旺)反発力が作用して怪我をします。
甲木(大木)が庚金(刃物)によって切られるイメージが分かりやすいかと思います。
草花を宝石で切る?
では陰干同士の弱いエネルギーがぶつかり合うとどうなるのでしょうか?
これを陽干と同じような作用として言語化するのは難しいかもしれません。
というのも先ほどの甲木×庚金の関係なら分かりやすく「大木を切る」というイメージで頭にすっと入ってきたと思いますが、これが陰干同士の場合は乙木×辛金となります。
乙(きのと)は草花で、一方の辛(かのと)は宝石です。
これを相剋関係といわれても、草と宝石ではなんだかあまり戦うイメージがないですよね。
庭の雑草をわざわざ宝石で刈る人はまずいないでしょう。
辛金を小鋏という人もいますが、やや無理がある気がします。
陰はエネルギーの指向が陽と異なる
というのも、陰干同士は共鳴しあう要素が多いので、剋についての性質も異なっているのです。
陽干は男性的、陰干は女性的と説明した方が分かりやすいかもしれません。
先ほどの「華々しい草花」と「煌びやかな宝石」の関係を例にとれば、どちらも自分の魅力を周りに評価して貰おうとアピールしようとします。
したがって、お互いの魅力についてマウントを取るようになり、その結果、寿命の限りがある草花(乙)が磨き上げられた宝石(辛)に負けてしまいます。
陽干の剋はいうなれば、男同士の直接的なぶつかり合いや喧嘩ですが、陰干の剋は女同士の協調性によるバランスが壊される、という違いがあります。
命術を少しでも囓っている人ならば、この陰陽の相違に「あぁ、なるほど」とご理解いただけると思います。
例えば辛の女性が一人、丁の女性グループの中に入ったとしましょう。
辛金はキラキラ輝く宝石です。
自分が輝いてこそ価値があります。
そんな辛金が丁火の剋を受けたら、その美しさに嫉妬した丁火グループの炎によってメラメラに燃やされてしまい、その魅力が発揮できなくなります。
丁の女性は周りの空気が読めて、感性豊かで魅力的、などよく言われますが、裏を返せば同調圧力が強く、TPOに合わせない人に対してはイライラしてしまいます。
宝石は焼かれると焦げて使い物になりません。
上品でナイーブな辛金にとっては丁火に囲まれるのはしんどいはずです。
陽干は男同士の押し合い、陰干は女同士の引き合いです。
陰干同士の剋の関係は、干の魅力が生かせなくなり、割を食うという関係とみればいいでしょう。
斥力と引力の違いとでも言えるかもしれません。
また、相剋だけでなく、同じ五行の「比和」でも男女の押し引きの性質の違いが表れます。
分かりやすいのが「甲×甲」と「乙×乙」の関係です。
どちらとも通変星では同じ「比肩(ひけん)」となります。
おなじ木の比肩を持ちますが、前者の甲木は陽木で、大木が隣り合い、どちらが天に届くか競い合うような関係になります。
一方で後者の乙木は陰木で、花が咲き乱れ、蔦が絡まり合い、足の引っ張り合いになる関係になります。
比肩は「肩を比べる」と表わし、「自尊心」「独立」「孤立」「こだわり」を意味するとされていますが、日主と同じ干関係から「自分らしさへの欲求」もしくは「自分との戦い」とも捉えられます。
ですが、同じ通変星でも前者の木の生育の高さを競うか、後者の花の注目度を競うかで、その性質は陰と陽では似ているようで、エネルギーの使い方に明らかな差があります。
分かりやすくいえば男同士の押し合う競い合いと、女同士の引き合う競い合いで喩えることができます。
引き合いは綱引きのような力比べという意味ではなく、承認欲求を満たそうとするような「惹きあい」とした方がより分かりやすいかもしれません。
・陽干は男性的な外に発する力(八卦では離)
・陰干は女性的な内に潜む力(八卦では坎)
となります。
陽の剋は強いですが、ダメージは物質的で短期的です。
一方、陰の剋は力こそ弱いものの、長期にわたり精神に苦痛を与えます。
同じ通変星でも組み合わせにより若干、意味が異なってきますので、鑑定のときには陰陽の違いを見極めることが必要です。
干合となる陰と陽の剋
これまで、陽干と陰干の剋の違いについて説明してきましたが、それでは陽干と陰干の剋についてはどうなるのでしょうか。
先ほどの調金の関係だけでなく、陰と陽の相剋は同じグループとはエネルギーの指向が異なりますので、剋によっては相性が良いと判断されることがあります。
この関係を「干合(かんごう)」といいます。
日干の干合で相性の良し悪しをみるというのは、ポピュラーな鑑定方法として四柱推命ではよく用いられます。
干合関係は強い剋なのになぜ惹かれるのでしょうか?
実はこの理論の根底は、自分に欠けた性質を持つ者に、磁石のように魅かれるという、この押し引きの性質の延長から導きだされたものです。
干合は恋愛において刺激的な男女関係になるといわれています。
優しい女が粗野なクズ男になぜ惚れるのか?という論説は、今でもネットでちょこちょこ見かけますが、実は陽干と陰干からなる干合の相剋関係から見ればごく自然な摂理ともいえます。
陽が男、陰が女の喧嘩なら、干合の喧嘩は夫婦喧嘩といえるでしょう。
強い力は抑え、中庸を𠮷とするのが五行の基本です。
陰と陽で力の使い方が異なるので、力量によっては相性が良いとされます。
ただ一目惚れが長続きしないのと同様、干合関係もお互いの力量が崩れたり、邪魔者が入ってきたとき(冲や三刑など)に破綻しやすいです。
通変星に置き換えれば、陽干からは「正財」、陰干からは「正官」の関係となります。どちらも結婚時期を見る際によく使用される通変星です。
陰陽の組み合わせ
また陰と陽の組み合わせでは変わった現象が起こりえます。
例えば丁(ひのと)と庚(かのえ)の関係では、丁火は単体では庚金を剋すことができず、自らが大きくエネルギーを消耗することになります。
この場合、丁火は庚金にとって、金属を錬成するための焚き火として用いられ、彫金といい、吉神としての役目と化すことがあります。
鍛冶屋さんは、丁火で熱して庚金を有用な刀に仕上げます。
「火剋金」の関係ですが、庚には心地よい「剋」です。
その時に活躍するのが丁火です。
強い庚も丁には従順になります。
もちろん火力が強すぎてしまうと元も子もありませんが、相剋の中にも相生があると言えるでしょう。
逆に、相生の中にも相剋があります。
木が燃え続ければ火はやがて衰え、水が溢れ続ければ木は腐ってしまい、金に水が凝結しすぎると金が錆び、土から鉱石を採りすぎると土がその分減り、物が燃えた時に出る灰が溜まり過ぎると、土の処理能力が追いつかなくなります。
何事もバランスが重要です。
もっとも、周囲の環境を無視した当て嵌めの論理では、その本質に近づくことは出来ません。
あくまでも原理の一つとして覚えておくと良いでしょう。
十干十二支の組み合わせから性格や相性を見るのがオーソドックスなやり方ですが、このように人の性格や社会のシステムから十干の性質を読み解くという、逆側からアプローチしてみると、新しい発見があるのが、四柱推命の面白いところでもあります。
陰陽五行理論は複雑な多元的構造となっており、なるべく高い視座から俯瞰してみることが必要です。
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