伊邪那岐の遺書17
「那美子、わかったよ」
一睡もできなかったのでしょう、翌日のあなたの顔は、かわいそうなくらいにやつれていました。
「涼子さんとは結婚しない」
朝食をとる前に、泣きそうな笑顔であなたは告げました。
「俺は、お前と生まれてくるはずだった子供のために、これからの一生を捧げる」
一晩、充分に考えて出した結論だったのでしょう。
それだけ言うと、あなたは箸を取り、笑顔を崩さぬまま朝食を食べ始めました。
その言葉を受けて、わたしはとても嬉しかったはずなんですが、なぜかそのときは素直に喜ぶことができませんでした。ただ、あなたが濃い眉を八の字に曲げて微笑んでいるのだけが、やけに気になっていました。
伊邪那岐の遺書18
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