アトスは、この地を自らの土地とした、生神女マリア(キリストの母)だけがただ一人女性であるという考えから、1406年以降女人禁制を守っている。家畜も全てオスという徹底ぶり。 そんな中、ネズミを退治するために猫のみはメスが存在する。 修道院を歩いているとあちこちで可愛い猫たちに遭遇する。
祈りが終わると食事となる。 ただ、この時間も祈りの一部、私語は決して許されない。 係の修道士が1人祈祷書を詠み続け、その間に黙々と食べる。 食堂内は、その修道士の声と食器がぶつかる金属音のみとなる。 15分くらいすると鐘がなり、食事をやめ、一斉に立ちあがり、奥に座る修道院長から順に退出する。
数時間の祈りの時を過ごし、東に面した至聖所が開いた瞬間、遙か彼方から一筋の光が十字架を貫き、聖堂内を照らした。これまで闇に包まれ修道士たちの聖歌が鳴り響いていた聖堂内が、その瞬間、光に満たされた。 深夜から続いた祈りの時間は、この朝陽と共に終わる。その光は、祈りを続けた修道士、巡礼者を照らしているようだった。
壁に描かれた聖人、古くから伝わるイコンや祈祷書、神を模索しながら歴代の修道士たちが幾重にも重ねた祈りの気配。 肉声のみで詠われる男性だけの聖歌は聖堂を越え、遠くどこまでも響きわたるように感じた。現役修道士はどんな事を考えているのか。 ふと、カメラを置くと今自分がどこにいるのか分からなくなった、、 アトスを撮り続けたいと思った瞬間である。
静寂の闇夜、微かに聞こえてくる修道士の祈祷書を読む声に耳を傾け宿坊から聖堂を目指す。 夜中の3時、満点の星に包まれて、お祈りが始まる。
半島の先には、標高2033mのアトス山が聳えたつ。 山頂には、聖堂もありシモノスペトラ修道院のテラスから確認することができる。修道士たちはこの山を登り、聖堂で祈りを捧げる。いずれ僕もそこへ行くことになるだろう。 ギリシャ特有のゴツゴツした岩山、初めて見たときは、近づき難い何か恐怖を感じた。 だが、これまで数度アトスを訪れているが、この山と出会う度に不思議とウキウキと高揚感を感じるのである。
ギリシャ北東部のハルキディキ半島。 その一番北側の半島一帯に、アトス山と20の大きな修道院、ケリと呼ばれる修道小屋が点在し、今でも2000人もの修道士が暮らしている。 中世から変わらない生活を続け、自給自足、生活のほぼ全てが祈りの時間にあてられる。 95%が正教徒であるギリシャ人にとっては、憧れの聖地として存在する。世界遺産に認定されていながら、600年前から女人禁制を敷き、男性しか存在しない。 トルコイスタンブールから早朝出る便でギリシャのテッサロニキを目指すと左側の