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「フランスのMIT」とハーバード、両方で学んでみて

私は大学で1学期だけ、フランスに留学をしていたことがあります。ハーバードの交換留学プログラムで、行先は「フランスのMIT」とも言われるエコールポリテクニーク(以下ポリテク)です。ポリテクはフランスの理工系の大学では最難関と言われ、3名のフランス大統領や、多くの大企業のCEOを輩出していることで有名です。

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<図1>今年もフランスの理工系大学のランキングで堂々の1位

そんなポリテク。未来のリーダーを育てるという目的はハーバートと同じながら、その校風は大きくハーバードと異なりました。今回のnoteでは、2校を比較して気づいた違いを3つピックアップします。

1.運動会加入が必須

1805年のことです。ナポレオンが、技術将校が不足していたのをうけて、ポリテクを軍学校として移設しました。その名残から、現在でもポリテクは国防省が管轄。理工系の大学ながら、管轄が軍とは珍しいですよね。また、大学の歴史を調べただけなのにナポレオンの名前が出てくるあたり、さすがフランスです。

私は留学生なのでもらっていませんが、一般生は入学すると軍服を支給され、式典などで着用します。

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<図2>こんな感じ。かっこいい!(Le Monde紙より転載:ソース

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<図3>ナポリタン

軍学校の名残でしょうか。ポリテクの一般生は入学すると、16ある運動部のどれかに必ず入らなければいけません。学生寮は16に分けられ、同じ部の人たちと一緒に生活します。

私がキャンパスに着いて用務室に行くと「お前は”アンバル”の寮だ」と言われ、鍵を渡されました。フランス特有のスポーツかな?と思っていたら、ハンドボール(Handball)のことでした。フランス人はHを発音しない、かつaの発音が独特なので「アンバル」という音になるんですね。(余談ですが、私Hiroは、みんなに「イオ゛」と発音されていました)。

ハンドボール寮に住み、彼らにはとても良くしてもらいましたが、私はハンドボール未経験。せっかくならと、スポーツの練習自体は経験のあった水泳の方に混ぜてもらっていました。

週3回の練習は全員参加。朝8時にはプールサイドに集合し、軍人の教員が目を光らす中、みっちり1時間半泳ぎ込みます。ポリテクに受かる学生は高校時代めちゃめちゃ勉強してるので、スポーツが得意な人ばかりではありません。にも関わらず、練習は全員参加。リーダーたるもの文武両道でなければ、ということなのでしょうか。

ハーバードにも運動部や、体を動かすサークルはもちろんあります。しかし、参加するしないは本人次第。コンピューターサイエンス等、課題量がハードな学生のうち、しっかりスポーツの時間を捻出できていた人は少数派だったように思います。

時間の使い方をあくまで学生に委ねるハーバードに対し、強制力を持ってスポーツをやらせるポリテク。いい悪いはさておき、夜遅くまでプログラミングをし、朝はたっぷり寝坊していたハーバードの生活から一転、めちゃくちゃ健康的な生活リズムに変えざるをえなくなったのは新鮮でした。

2. 生徒間の繋がりが濃い

ポリテクの生徒間の繋がりは、ハーバードの生徒間の繋がりよりもさらに濃かったと思います。理由は「キャンパスが陸の孤島」「圧倒的に男子が多い」「外国人が少ない」の3つだと睨んでいます。

まず、キャンパスのアクセス。パリから電車に1時間乗った後、さらにバスに20分ほど揺られてようやく到着です。対するハーバードは、ボストン中心部から地下鉄で10分。ハーバード比べれば、陸の孤島と言って良いと思います。

余談ですが、売店、郵便局、銀行等が構内にそろっているので問題ないだろうと思っていましたが、普通に不便でした。まず、学内の郵便局は営業時間が朝10時から午後3時までで、しかも12時から13時はお昼休み。普通に授業を受けてると行けない時間です。せめてお昼ご飯だけでも変わりばんこに食べて、窓口を開けたままにできないのでしょうか・・・。

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<図3>当然土日はしっかりおやすみ

また、ある日構内の銀行窓口に言ったら「オランド大統領が来てるので、お休み」と張り紙がしてありました。なぜ大統領が大学を訪れると銀行の窓口が閉まるのか、全く意味が分かりません。

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<図4>しかもルーズリーフに黄緑の色鉛筆で殴り書き。絶対窓口の人勝手に閉めただろ。

続いて、男女比。8:2と9:1の間くらいで、東大同様2割の壁は越えていません。なおハーバード、2019年度は48%男性、51%女性です。

最後に、外国人の数。スポーツで分けられたり、軍服を着たりしている一般生に限ると、肌感覚1割未満でしょうか(なお、短期生ながら運良くハンドボール寮で生活できた私は例外中の例外。他の短期留学生は、短期留学生寮にまとめられていました)。

ほぼフランス人、ほぼ男性、全員理系の集団が、陸の孤島で共同生活をする。フランス人男性はとても楽しそうでしたし、あれはみな一生の友達になるんだろうなと思いました(それ以外の人たちは・・・どうなんでしょうね)。

一方ハーバードは、とにかく多様。私は一生の友達もできましたが、そうではない友人・知り合いも多数できました。

4年間を通して作られる人間関係が、二校はすこし異質なように思います。

3.フライドチキンの骨がすっ飛んでくる

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ハーバードに比べてポリテクの雰囲気は、より声がデカいと言いましょうか、よりガサツと言いましょうか・・・ノリが体育会系だと感じました。

これを強く感じたのがフライドチキン事件です。通常食事は、各部分かれて食べます。しかし年に数回、大きな会場に全校生徒が集合して食べます。私はそのうちの一回に参加したのですが、これが飲めや食えやのどんちゃん騒ぎ。盛り上がった下級生が、食べ終わったフライドチキンの骨を互いに投げ合い始め、その流れ弾が私の頭に直撃しました。

こうしたノリは私も麻布で経験がありました。しかし、麻布の教室で飛び交っていたのはせいぜいマンガの単行本。骨とはいえ、さすがに食べ物は投げていませんでした。加えて、フランスという慣れない環境で、心理的に余裕のない状態での被弾です。私は下級生たちに英語で怒鳴りつけ、怒って自分の部屋に戻ってしまいました。

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15分ほど経ってでしょうか、話を聞きつけたハンドボールのリーダー格の寮生が、宴会を抜けて私の部屋まで様子を見に来てくれました。ドアを開けると、”Are you okay Hiro?”と私の名前を正しく発音して、英語で話しかけてくれます。彼とはそれまでフランス語で何度も喋っていましたが、彼と英語で話したのも、彼が正しく私の名前を呼んだのもそれが初めて。フランスの未来を背負うことになる彼の英語は、想像よりもはるかに流暢でした。

「あいつら下級生は本当バカだからな」とヘラヘラしながらしばらく英語で雑談に付き合ってくれた優しさが、本当に沁みました。

後に聞いたのですが、彼は生粋のフランス人ながら、タイに長らく住んでいた経験があるとのこと。彼自身、外国に暮らすことの難しさを知っていたのかもしれません。

アメリカにも慣れ、初心を忘れていた頃に異国で触れた優しさでした。外国人には優しくしよう、とその時決意を新たにしたのを覚えています。

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いかがでしょうか。留学先にヨーロッパを検討されていらっしゃる方もいるかもしれません。何かご参考になる情報があったのであれば嬉しいです!


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