【英語】「発音ができないと聞こえない」理論は正しいの?🤔
英語のリスニング力を上げていきたいという人なら一度は聞いたことがある
「英語は、発音ができないと聞こえないよ」
という理論。僕もこの理論は生徒によくお伝えするのですが、すんなり受け入れられる人と、受け入れられない人がいます。
深く考え始めると「本当にそうなの?」と出口が見えなくなるこの議論ですが、実はこの「発音ができないと聞こえない」を支持する理論もバッチリあるのです。今回も関西学院大学大学院言語コミュニケーション文化研究科教授の門田修平氏による書籍「外国語を話せるようになるしくみ」(SB Creative)を参考に、この問題をサポートする理論を紹介したいと思います。
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人間は聴覚だけで音を知覚していない(マガーク効果)
実は、人間は聴覚だけで音を知覚している訳ではなさそうだ、ということが、とある2つの理論から分かっています。
まず1つめは「マガーク効果」と呼ばれる理論です。TVなどでも紹介されたことがある、比較的有名な現象です。
ある人が「ぱ」という発音をしているのを聞くと、私たちの耳にはそのまま「ぱ」と聞こえます。しかし、同じ人が「か」という発音している口元を動画で見ながら、同じ音声「ぱ」を聞くと、不思議なことに「た」と聞こえ、「ぱ」とも「か」とも違う音として知覚されます。この現象のことを「マガーク効果」と呼び、YouTube などでも動画があります。
https://youtu.be/Cezwv5kkLwM
私たちは言葉の発音を聴覚をもとに聞いていると思っています。しかし、実際には口の動きに関する視覚情報の影響も受けているという証左としてよく引用される理論です。
音声知覚の運動理論
「発音できないと聞こえない」理論は、実は学術的に「音声知覚の運動理論」と呼ばれるものだそうです。これは、1960年代に心理学者のAlvin M Liberman によって打ち立てられた説でした。
この「音声知覚の運動理論」は、発表以来そこまで重要視されることなく時が過ぎていったそうです。しかし、2004年にStephen M Wilson ら4人の研究者が、fMRI を用いた脳内処理研究を行い、この「音声知覚の運動理論」を完全に支持するデータを出したそうです。
Wilson らは、英語母語の英国人成人10人に、1音節の無意味語(非単語)をいくつも聞いてもらい、そのときの脳活動を、fMRIを用いて記録するという実験を行いました。
その結果、音声の聞き取りに関わる一次聴覚野だけではなく、大脳運動野および運動前野が活動していることを発見しました。
これはどういうことかと言うと、音声の知覚と同時に、同様の音を発音をするための運動野を活動させていたということです。音声を聴き取る際、我々はあたかも自分も発音しているかのように口や下の動きをイメージしながら聞き取っている、ということになります。
このことからも、「聴き取る音声も同様の発音ができないと、知覚することは難しい、あるいは間違った知覚をしてしまう」確率は高いと言えます。
まとめ
「マガーク効果」と「音声知覚の運動理論」、および Wilson らの fMRI を用いた脳内処理研究によって、「人はどうやら、音だけで音声を知覚している訳では無い」ということは確実に言えます。これだけで完全に「発音ができないと聞こえない」とまでは言えないのですが、「発音ができればほぼ確実に聞こえる」ことは確かです。面倒くさがらずに、発音練習も同時に行うようにしましょう。
参考文献:
「外国語を話せるようになるしくみ」門田修平(SB Creative)
https://amzn.to/3Uzq0Cq
「The McGurk Effect / マガーク効果」東京女子大学田中章浩研究所
https://youtu.be/Cezwv5kkLwM
Wilson SM, Saygin AP, Sereno MI, Iacoboni M. Listening to speech activates motor areas involved in speech production. Nat Neurosci. 2004
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15184903/