ひろはたゆきちの絵の変遷~2022年8月-2024年1月~
第1章:はじめに
私の名前はひろはたゆきちという。本名ではない。
絵とは一切無縁の仕事をする会社員の傍ら、ゆるゆるとらくがきをしているきつね顔の人間だ。
この1年は個展を開催したり、絵の仕事も頂いている。ありがたい限りである。
さて、絵の練習変遷に移る前に、簡単に前置きを話そうと思う。
まず「絵を描こう」と思い立ったのは2022年の3月だ。
地元で入退院を繰り返す祖父に対し私に何かできることはないかと考えたとき、ふと素人ではあるが絵を描いて贈ろうと思ったのがきっかけである。病気で食事や活動に制約があるので、絵なら何も気にせず渡しやすいだろうという安易な発想だった。
そこから1ヶ月かけてスケッチブックいっぱいに私の大好きな動物の絵を描いた。
意気揚々とポストに投函したその1時間後、地元にいる姉から電話があり祖父が急に旅立ったと聞いた。
「余命あと1年かもしれない」と医者に診断されたその日に旅立つとは、なんともせっかちなじじいである。私が慌てて実家に戻ったその翌日、葬儀の直前に実家のポストにスケッチブックが届いたのであった。
祖父が生きてる間に絵を渡せなかったので、私が祖父のもとへ行く頃にはもっと上手くなってようかな~くらいの気持ちで動物の絵を細々と続けていたのだが、折角やるならきちんと絵を練習して自由に描けるようになりたいな、と思ったのが2022年8月末だった。
これから話すのは、練習しようと思い立った2022年8月末から、この記事を描いている2024年1月末までの取り組みとその結果である。
第2章:目標設定
職業(マーケティング戦略検討)柄、何かを成す前には必ず戦略・戦術を立てないと気が済まない。絵を描く上でも、同じように戦略・戦術を考えた。
専業絵描きでもなければ、仕事で絵を描くわけでもない。限られた時間を有効活用するためにも、頭を使って絵を描き始めた。
私がどう戦略・戦術設計したかの具体まではここでは語らないが、ざっくり話すと以下を目標においた。これらを目指して絵の練習を始めた。
何でも描けるようになる(動物、風景、静物、人……)
空気や色を感じる黒一色の万年筆絵を描けるようになる
第3章:はじめに結果を見せる
私は最初に結論を知りたいタイプなので、先に結論を見せたいと思う。
2022年8月→2024年1月で、このように変化した。
・人物
・風景
・動物
一切知識がなかった人物・風景に関してはかなり形になっているように感じる。動物絵に関しても、精度があがり作品としての遊びも生まれたように思う。
これらの絵がどのような変遷を辿って描けるようになったかを後述していく。
第4章:変遷を辿る
2022年8月末
「まずは人でも描いてみよう」と安直に考えた当時の私は、役者をやっていた時代に購入したデッサン人形を引っ張り出し模写をしてみた。
えっ、こんなに難しいの……?というのが率直な感想である。見えてるモノそのまま描くだけじゃんと思ったのに、全然描けないじゃないか。
これは本格的に勉強する必要があると思ったが、中学で美術の学びがストップしている私は絵の勉強の始め方の時点で途方にくれた。
まずは情報収集だと、買いたてのiPadでX(Twitter)のアカウントを作り、絵の練習をしているアカウントを片っ端から検索した。
そこで多くの人が「Posemaniacs」で人体練習していると知り、ひとまずこのサイトを使って練習することを決めた。
デジタルならではの修正しやすさを活用し、描いては消しを繰り返し、1時間以上かけて↓のように人体を描く練習していた。このときはとにかく正確に模写することを意識し、毎日2-3時間練習していた。
1ヶ月弱続けてみたものの、ただ模写しているだけで学びに繋がっているかわからず、強く不安に感じたのを覚えている。
2022年9-12月
1ヶ月弱経ち、やはりちゃんと絵の勉強の仕方から学ばねばと、X(Twitter)で絵を練習しているとても上手な方に直接DMをし、頭を下げて勉強の仕方やおすすめの教材を教えてもらった(もちろん謝礼としてAmazonギフトを贈った)。
みんな大好き、ルーミス先生の「やさしい人物画」はこのときに購入した。
練習は基礎と応用に分かれており、ざっくり言うと以下になる。まずは基礎から練習するのが定石で、人なら人、モノならモノだけ集中して勉強したほうが効率よく伸びやすいとアドバイスを貰った。
基礎:道具の使い方→パース/人体などの構造理解→デッサン
応用:自分らしい表現の仕方の模索(モチーフ、構図など)
私は少しでも早く全部描けるようになりたかったので「人/モノ/風景の本のページ数を30日で割ると1冊あたり1時間かかるので、1日3時間練習すれば30日で3冊の本を1周できるじゃないか」というスーパー脳筋メニューを組み、平日3時間、休日6-7時間は絵の練習をした。移動などのスキマ時間にも絵を描けるよう、常にメモ帳とペンを取り出しやすいポッケに忍ばせていた。
このあたりからは基礎本を1周目が終了し、2周目3周目をしながら基礎の応用として外スケッチ・電車内スケッチなども始めた。
本や写真の模写と、実物を見ながらのスケッチは全然違う。スケッチをしていて初めて見えてきたモノの構造などがあり、スケッチにどんどんハマっていった。
基礎が少しずつ身につき、絵を描くのが無性に楽しいと思い始めたのはこの頃からだったと思う。
2023年1-3月
とても嬉しい御縁があって、2023年3月に赤坂の山崎文庫さんで開催した個展の準備をしながら練習を続けた。作品づくりと並行しながら練習を続けることは難しかったが、「やってきたことは裏切らない」と寝る間も惜しんで描き続けた。このときは平日も4-5時間程度描いていた気がする。
このあたりからはもうほぼ一発描きになっている。限られた時間で最大限絵を描くには、下描きや消しゴムで消している時間がもったいなかったのだ。
無事に個展も終了し、これで一旦ひと息つけると安心した。
2023年4-6月
4月から昇進し仕事量が増えたことに加え、個展前に睡眠や食事をおざなりにしてずっと絵を描き続けていた反動で完全に体調を崩し、精神・肉体的に1日30分程度しか絵を描けない生活になった。個展前からすると信じられないくらいの時間の短さだ。
絵を描けなくなった代わりに絵以外の広い創作の世界に触れようと、好きなミュージシャンのライブに行ったり、映画や漫画、アニメ、小説などの創作にたくさん触れた。お陰で自分の中の世界が大きく広がり、創作する友人も増えた。非常にいい時間を過ごせたと思う。
個展まではモノクロ作品しか創ってなかったが、いろんな創作や創作者に触れた結果、黒以外の万年筆インクや水彩を使った作品も作るようになった。
新しい画材を使うことで新たな表現技法を知ることができ、また万年筆の良さを改めて知ることができた。
2022年9月からずっと、朝練として毎日PosemaniacsもしくはGESDRAWPartyで人体の練習をしていたが、どうしても精神的・身体的に続けられなくなりこれらの練習はストップした。その代わりに好きな動物などの練習で手馴しするようになった。
2023年7-12月
相変わらず4月に崩した体調は戻らなかったが、精神的にはかなり回復し絵を描く時間も増えてきた。この頃からは毎日1-2時間は描いている。
ストップしていた人体練習の代わりに、人物以外もミックスして描く練習をするようになった。
また、友人が増えたおかげで遠出することも増え、旅スケッチや呑みスケッチも増えた。
更に創作以外にもいろんな世界に触れ、その上で「日常の観測者」でありたいと強く思うようになり、具象と抽象の合間を探り、色や温度、空気を感じる作品を創ることを明確に意識し始めた。
また、6月頃に購入したトラベラーズノートの自分らしい活用方法も分かってきて、8月頃からはより自由な表現を目指して創作を行うようになった。
2024年1月
今動画や写真で上げている朝練がしっかりと確立し、安定して絵がかけるようになった。
重ねて絵日記を始め、毎日強制的に絵を描く仕組みづくりをした。1ヶ月が経った今、完全にルーティンワークとして確立し、呑んで遅く帰ってきたとしてもまず風呂に入る前に絵日記を描くようになった。
ありがたいことに最近は多くの方に見てもらうので、多少のプレッシャーは感じつつも、平常運転で絵の練習・作品づくりを行っている。
第5章:総括
中学の美術の授業までしか絵を学んでいない素人でも、きちんと勉強の方法を学び、時間をかければそこそこ描けるようになる、というのがこの1年半での学びである。
私はいわゆる「天才」と言われるような能力は持ち合わせていない。だからこそ自らその事実を認め、NARUTOのロック・リーのように「(多少の無茶を伴う)日々の努力」という力技で、まだ足りない部分は多分にあるがなんとかここまで形にした。
あくまで個人的な意見だが、約1年半で大事だと思ったことの総括は以下の通りだ。とにかく身体と心を大事にしながら、まずは絵を描く習慣づけをしていくことをおすすめする。
第6章:これから
まずは、拙い長文をここまで読んでくださったあなた、本当にありがとうございます。
私はこれからも変わらず絵を描き続けていく。が、自分のために絵を描き練習し続けてはいるものの、せっかく描くなら誰かに見てほしいという気持ちというのが本心だ。
私の絵を(祖父の代わりに)見てくださる方が1人でもいる限り、私は描き続けるつもりだ。
これからも引き続き素直さ謙虚さを忘れず、欠かさず基礎練習しながら作品づくりを続けていきたい。
また、今は絵の仕事も募集しているし、作品の受注やグッズ制作も進めているし、展示もまたやりたい気持ちでいっぱいだ。
やりたいことがまだまだ山ほどある。まだ私の知らない世界がたくさんあるのだ。
もしよろしければ「ひろはたゆきち」という、しがない窓際会社員絵描きの今後の活動を応援してくれると幸いである。