アシュラム滞在記(1) ここは日本か? 【世界旅行記048】
2012年10月14日(日) ヨガ・アシュラム滞在(YOGA NIKETAN)
10月14日、日曜日。
午後、アシュラムに移動した。今回お世話になるのは、ヨガ・ニケタン(YOGA NIKETAN)という大きなアシュラムで、最低12日間の滞在が義務づけられている。予約は不要。重い荷物をひきずり、長い長いスロープをのぼると、そこには広大な敷地が開けていた。眼下にガンガーが見下ろせる。
手続きを終え、部屋へ案内してもらう。数部屋ごとにまとまった戸建の住居が、敷地内にたくさん建っている。ざっと20から30棟はあるだろうか。部屋は思ったよりも広く、日当たりも風通しもよい。快適そうで安心した。これから2週間も過ごす場所なのだ。居住空間の快適さは、生活の全般に影響をあたえる。
ヨガは日曜は休みである。4時になると、「カンカンカンカン!」と敷地じゅうに鐘が鳴り響いた。お茶の時間だ。おそるおそるダイニングへ行ってみると、マサラティー(ミルクティー)とビスケットが用意されていた。バラナシで泊まった宿で出されたスパイシーなマサラティーに次いで、おいしい。
ここへ来てから、日本人ばかりみかける。20歳くらいの日本人の男の子は、昨日インドへ着いたばかり。ここに3週間ほど滞在するという。コンビニのアルバイトを辞めてやってきた。インドを1周しようと思ったが、はじめての海外ひとり旅。心配も多いので、1か所に滞在することにしたという。慣れていないわりには、アシュラム滞在は思い切った決断だと思うが。
もうひとりの女性は30代なかばだろうか、5月からずっとここにいるという。ということは、もう半年も1か所に滞在していることになる。リシケシュやアシュラムのことはなんでも知っていそうな感じがする。その彼女に、コンビニを辞めてやってきた男の子が質問する。
「ヨガも英語もできないんですけど、大丈夫ですかね?」
「ヨガは初心者でも大丈夫。そんなにきつくないし、できる範囲でやればいいのよ」
「いやー安心しました。よかったです。ここは日本人が多いんですか?」
「ほぼ毎日のように日本人が来るわ。ほとんど日本人、残りは欧米人で、インド人は少ないわ」
「いやー安心しました。なら英語ができなくても大丈夫ですね」
日本人が多いから英語ができなくてもヨガは問題ない、という彼の思考をだれも理解できず、しばらく沈黙が流れた。
8時になるとふたたび鐘がなり、夕食の時間になった。こういうアシュラムでは、自分で料理を取り分けるものと思っていたが、ここではスタッフがサーブしてくれる。カレーとベジタブル、それにライスとチャパティが出た。インドの家庭料理のよう。シンプルでおいしい。これが毎日出るのなら安心だ。おかわりも自由。食器類は自分で洗って部屋に持ちかえり、食事のたびに持参する仕組みになっている。
夕食に現れたのは10人。6人が日本人で、3人がインド人、1人が欧米系の老人。ここは日本か。インドの山奥まできて、日本人とたわむれるのは本意でない。しかし、ここのアシュラムは、ほかに比べて滞在費が高い(寄付だけで成り立っているアシュラムもあるくらいだ)。そのぶん快適さがあるし、何か月も前から予約しなくても、すぐに入れてもらえる。清潔な環境で快適にすごしながら、しかし現地のインド人とおなじように修行したい、というのは矛盾している。
明日は4時半に起床し、5時から瞑想だ。起きられるだろうか。
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