ハゲの話
年齢を重ねると身体のあちこちが経年劣化してきます。人によってその部位は異なりますが、顔に近い事もあって頭髪の場合は特に目立ちます。若い時は頭髪が多すぎて鬱陶しく思った事を今では懐かしく思います。歯磨きの時など鏡に写して前から見るとそれ程減少していないようでも、たまにカメラの映像で後ろ姿を見ると愕然とする事があります。
ハゲの話
私は40歳で今の会社を起業した頃、髪の毛はフサフサでした。その後、どんどん薄くなりハゲへの道をひたすら進みました。
今なら笑い話ですが、当時はこれを食い止めようと必死でした。様々な養毛剤を試しました。その時初めて知ったのですが、養毛剤はしょっちゅう新製品が出ていたのです。今ならその理由はよく分かります。養毛剤はどれも効かないからです。つまり、ハゲで悩む人は既存の養毛剤をほとんど試しています。
理髪店で相談すると、大事にし過ぎると毛根への血流が減ってかえって抜けやすいとも言われました。抜け毛を怖がらず、ブラッシングを丁寧に続ける事は効果があるとの事でした。私の親父も同じ悩みを抱えていましたが、抜け毛を恐れてこれを怠っていた様に思います。
仕事の関係で、同じ悩みを持つ様々な国の人と意見交換をしていました。パキスタンの友人はカツラを付けるようになり不自然でカッコ悪いと思っていました。私は世界のどこかに自分のハゲに合う養毛剤があるに違いないと思っていました。薬品メーカはそんなハゲの心理を見抜いて『ついに出た!これぞ究極の養毛剤』と売り出すのです。
毛根が絶滅してしまうまでに間に合わせたいと願っている哀れなハゲは、『やっと出来たか間に合った』とばかりに飛びつきます。樹木と同じで、死んでしまった毛根は生き返らないが、弱っているだけなら治す事が出来ると思うからです。
もちろん全然効かず、再度失望する羽目になります。ところがそうこうするうちに、また画期的新製品発売のニュースです。ハゲはまた騙されるというわけです。私もそうでした。
ある日初めていく薬局で、恥ずかしさをこらえて思い切って聞いてみました。『一番効く養毛剤を下さい。いくら高くても買います』すると店の主人が、棚からある製品を出してきました。
『これは絶対に効きます。少なくともあらゆる養毛剤の中で一番です』その時は大変喜びました。でも次の瞬間『あっ』と思いました。なんとその店の主人の頭頂部がカッパハゲだったのです。
ところで60代も後半になって、私はもう開き直ってハゲの悩みは気にならなくなりました。ただ帽子を着用する機会は増えました。やっぱり気にしているのかな?