InsideとOutside(内と外)の課題
自分に取っての『内に対しての外』とはどこの事と認識しているでしょう。大きいものから見ていけば世界そして国や社会、地域、会社、家庭。つまるところは個人、その人ということになります。根本はその人そのものを内側と認識しています。従って自分の意識によって家族や会社の上司・同僚との接し方も変わってくるという事です。
国による違い
初めて印度に行った時、友人の家に招待されて家の中の豪華さや美しさに比べて外観の見すぼらしさに驚きました。不思議に思ってその友人に尋ねたところ、外観をよくすると税務署の人がそれを見て税金を多く徴収されるからだという事でした。宿泊した五つ星ホテルも同様に部屋の豪華さに比べて屋上のプールから見ると外壁は街の他の建物と調和していてレベルの低いものでした。
次に初めてパキスタンに行った時、取引先の事務所が入居している雑居ビルの外観の悪さに驚きました。建物の中に入ると、エレベータの古さと共同トイレの不潔さにまた驚きました。私がトイレを使いたいと言うと、VIP用の鍵を渡されてそこを使わせて頂きましたが、日本の公園にあるトイレ並みでした。それらに比べて事務所の中は整理されていて特に社長室は飛びぬけて豪華な感じでした。もう一つ驚いたのはエアコンの室外機が、屋外ではなく建物の中の廊下に設置されている事でした。他の事務所も同じようにしていたので、廊下は大相うるさい上に暑かった。
いまから30年くらい前の事ですが日本がまだバブル経済を謳歌していた頃、私はオーストラリアのブリスベンで成金の日本人に販売する目的で不動産開発会社から依頼され、分譲土地の付加価値を高める為に日本語のTV番組を受信する方法について調査していました。方法は見つかったのですがそのプロジェクトはバブル崩壊の前に中止になりました。
当時は日本の不動産業者がハワイやらオーストラリアでリゾート開発目的で土地を買い漁っている時期でした。オーストラリア中部のブリスベン近郊でも日本の業者が広大な土地を購入、粗末なブリキ板で周囲を囲み、土地価格の上昇を待って一儲けを企むというのが多くありました。
それで、街の景観が損なわれ、犯罪の温床にもなるとの事で州の法律によって日本人には土地付きの不動産は販売できない事になりました。今の中国の人が批判されているのと似たような事を日本人もしていた事になります。
公共財と私的財
Outsideの財は公共財、Insideの財は私的財とすれば公共財を増やそうとする気持ちはこの世を造った創造主の気持ちに通じているのかもしれません。たしかに、全ての人が自分の長所を伸ばして仕事に使い、仕事を楽しいと感じて、公共財である会社のお金を増やすことに喜びを感じるような生活を続けられれば、会社は繁盛するでしょうし、そういう会社の人たちは豊かで幸せになるでしょう。
地球上の公共財とは空気や水など誰もが分け隔て無くその恩恵を受けるものです。会社の財産は社内では公共財です。自分と相手の行動の組み合わせによって結果の良し悪しが決まる集団では結局利己主義と利他主義の境はあいまいです。ある集団やネットワークの構成員が多様になればなるほど他人に利益をもたらす行為つまり利他行為が自然に進化安定します。
つまり、会社だけでなく近所のコミュニティに所属していたり趣味の仲間がいたり複数の組織に属しているような個人が集まる集団では利他行動が進化しやすい事になります。これにより公共財を増やすのに協力的な人が増え、ネットワーク自体の富が増えるという現象です。その意味では、いわゆる同じタイプの会社人間ばかりが集まっている会社はもろいと言えます。
強みに焦点をあてる(取引利益)
学校の期末試験、大学入試、資格試験など、試験は科目数に関わらず上限点数が決まっています。3科目で満点をとれば300点となります。このルールの中で高得点を取ろうとすると、弱点の克服になります。超高得点科目をこれ以上のばしても総得点のアップには結びつかないからです。従って試験の合格には弱みの克服が威力を持ちます。しかし社会で何らかの成果を達成しようと思うときに弱みの克服をが最も大事と考えて人材を育成している会社がある場合、その会社は弱みを克服しただけの平均的な人物によって占められます。
そして極めて平均的な人物ばかりで占められたこの会社はごく平均的な成果しか達成できません。こんな会社に就職したい人や投資先に選ぶ人はいません。我々の周りを見た時、自給自足をしている人は極めて稀です。なぜそうするのか、それは他人と仕事を分担して、自分が必要とする財やサービスを他人が必要とする財やサービスと交換できるからです。
すなわち取引をする方が、自給自足よりも多くのものを得られるからです。これを取引利益といいます。メンバー全員が自分の強みだけで仕事ができれば、公共財は取引利益分が増加する。一方、あるメンバーが自分だけで仕事をしたほうが、集団でするより私的財産が増えると思った時にはそのメンバーは集団から離脱する可能性が高くなります。
まとめ
仏教者、河口慧海の言葉に『この地上を全部牛の皮で覆うならば自由にどこへでもハダシで歩けるが、それは不可能である。この世界を理想の天国にすることはおそらく不可能である。しかし自分の心に菩提心を起こすならば人類のためにすべてを捧げる事を誓うならば、そして人類と自己を別のものではないという智慧と愛情が自覚されるならば、世界は直ちに天国になったに等しい』とあります。
つまり公共財を増やす行いは創造主の意志に沿うものであり、成功の為には考慮に入れるべき指針と思います。また喧嘩や戦争が起きるのは『内外問題』がその主たる原因です。
TV番組で紹介されていましたが、日本の小中学校では放課後に残って生徒が教室やトイレの掃除をします。これは世界的に見れば珍しい事だそうです。これはサウジアラビアのTV局が日本人の人格教育として紹介していました。蛇足かも知れませんが、社長は自身がトイレ掃除をする事で色々な事が分かるようになるそうです。