和顔愛語(わがんあいご)
自分の記憶では私は幼少の頃、いつも笑顔いっぱいの明るい少年でした。ところが中学生になって暫くしたある時、『ニヤニヤするな、まじめに聴け』と注意され、それからは表情に注意するようになりました。
この歳になって自分の表情と話し方について振り返ってみますと、特に若い人と話す時には表情が硬く、説教口調になり易い事に気付き大いに反省したところです。つまり自信過剰と共に謙虚さを失っていたのではないかという事です。幼少の頃に戻って一隅を照らす存在を目指したいと思います。
和顔愛語
和顔とは穏やかな顔。愛語とは相手を思いやる言葉。これは仏教の修行、六波羅蜜の布施のひとつです。私達を幸せな人生に導く指針です。
あなたのその表情を鏡に映してみてください。さっき言った言葉も鏡に映してみて下さい。それが家族や社員が見ている家の中や職場の景色です。あなたが造った雰囲気です。まさにその顔とその言葉を聞いて周囲の気分はできあがっています。
にこやかな顔なら、相手もそんな顔になります。思いやる言葉なら相手も明るく返事します。憎まれ口をたたけば返す刀であなたを切ってきます。仏頂面で座っていれば相手の眉間に皺が寄ってきます。世の中を明るくするのも暗くするのもあなたの『和顔愛語』次第です。
禅宗のお坊さんに聞いた話
お坊さんの生活はお金がかかりません。座禅で背骨を伸ばせばストレスに打ち勝つための脳内物質セロトニンの分泌が活性化され、快感を得られます。写経をしようと墨をすれば墨の成分ボルネオールの香りが気持ちを落ち着かせてくれます。一文字、一文字願いを込めて丁寧に字を写しているうちに字はうまくなり、ついでに願い事が叶います。
季節の移ろいを感じながら庭を掃き、雑巾がけをする事で足腰が鍛えられます。これらはお寺で作務と呼ばれる修行です。大きな声でお経を唱えればカラオケに行かなくてもストレス発散、腹式呼吸で吐く息を長く、吸う息を短くするから、自然治癒力が高まり病気も逃げていきます。
さすがに千年以上続いた禅の修行は健康に通じていて、タダで幸福に導いてくれます。作務については家庭では雑用と思われている内容が含まれていますが一つ一つの家事を丁寧に行う事によって、楽しく作業することができます。その中でも極めつけは『和顔愛語』です。