『自分は玄人だ』と思い込んでいる人
ある程度の年齢になり仕事に実績を残したと自覚する人は自分が玄人だと思い込んでしまうものです。そして周囲の人の意見を軽視しがちになります。自分に自信を持つ事は大切ですが、人の意見を聞く耳を持たないという事は自分の成長を止めてしまうだけでなく周囲の環境が移り変わった事に無頓着になり、失敗の原因にもなります。
『素直な心で皆に学ぼう』というスローガンが社内のいたるところに掲げられた事がありました。経験が浅かった若い頃はあまり深い意味を理解していませんでした。
経営の神様と言われていた松下幸之助さんは『君、どう思う?』が口癖だったそうです。
『自分は玄人だ』と思い込んでいる人
自分が玄人と思い込んでいる人の特徴は過去の困難を克服した成功体験によってハッピーな結果をもたらした方法がセットで刷り込まれている事です。その方法を熟知している事が素人との違いだと思い込んでいる為に困難に直面すればするほどうまく行った時と同じ方法を取ろうとします。
何より問題なのは状況の変化を示す新しい情報がもたらされても『うちは違う』『そんな事は無い』と言って自分に都合の悪い話は聞こうとしない事です。その為顧客のニーズの変化に追いついていけない事に気付かないまま自分の考え通りにやろうとする。その結果過去の体験の中に留まり、顧客の生活感覚や日常感覚からズレてしまう事です。
自分は玄人だと思っている人に限って売り手の立場から顧客とはこういうものだと勝手に思い込みます。そして自分の先入観を裏付ける情報を見付けようとする為にいつまで経っても顧客の生活感覚で考える事ができないのです。
大分以前の話になりますがISO9000により開発のエンジニアがユーザーの声を社内で聞く機会が大きく減りました。技術の先端を走る会社は機密保持が大事という事で社内の各所に関所が設けられて外部からの訪問者が自由に行き来できないようにされたのです。これは全世界の支店にも適応されたので、世間の常識からかけ離れた商品開発をされる事になりました。
家庭電化製品は新製品開発のエンジニアが自分の家で奥さんに意見を聞くという方法がありますが、プロ用ビデオカメラ等は見当違いの製品が長期間販売されて、ユーザーからの評判を落としました。
ISO9000が公表された時から怪しいと思っていましたが、今になって考えるとあれは当時劣勢であった米国の産業が巻き返しの為に日本メーカーの力を削ぐ目的の罠であったような気がしています。
当時もトヨタ自動車は『我々には世界一の三河方式がある』と言って取り合わなかったと聞いています。そして今でもEVに対する取り組みについて独自の路線を貫きメーカーとしての世界一の地位を保っています。
人の意見をよく聴いたうえでその本質を自分の頭で抽象思考を繰り返す事は大事です。