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第一印象

一期一会(いちごいちえ)

仕事で中近東地域に頻繁に出張していた頃、地元の人達に大事にして頂いた思い出が多くあります。砂漠の国で太古の昔から駱駝に荷物を載せてオアシスをめぐる隊商ビジネスが盛んな地域でした。過酷な環境を旅する為、今日会っている人と再会できるのは稀な事で、それは神の導きによるものと信じられていました。

当時、新製品のサンプルを持って毎月やってくる日本人の私と話すのは価値があったのでしょうし私の方も様々な地元の情報が得られて自分の成長にも役立つ事が多かったと思います。中でも『人との出会いを大切にする』という隊商ビジネスの考えは一期一会であり、そう思って会っている事で、様々な人たちといい関係ができて、商売の方も順調に伸びていきました。その意味からも、始めて会った時の第一印象をよくするのに勤めました。

第一印象

人は感情を持つ生き物です。感じのいい人とは付き合いたいけれど、感じの悪い人はできれば敬遠したいと思うものです。それだけに、最初の印象が仕事の成否を左右するのは当然の事です。

第一印象は心理学的に見ても重要で、『初頭効果』と言って、最初に会った時の印象が後々まで尾を引くからです。最初に『感じのいい人だな』という印象を与える事ができれば、少々の落ち度はカバーできるし、悪く思われる事もありません。

では少しでも好印象を抱いてもらうにはどうすればいいでしょう。それには言葉と表情が一致している事が重要です。言葉と表情が一致していないと相手が不信感を抱くからです。一度不信感を抱くと人は言葉ではなく表情の方を信じる事が実験で証明されています。そこが怖い所です。

お店での店員とのやり取りの中で、『この人は口では調子のいい事を言ってるけれど、あの笑顔はどうも怪しい。本心は違うのでは┅?』となることがあります。言葉では『じっくり見比べて、お選びください』と言いながら売り手がちょっとでもイラついた表情や仕草を見せると、お客はそれを敏感に見て取り、『また今度にするわ』とお店を後にしてしまいます。

『ホンネとタテマエ』

ホンネの言葉は心と意識の両方にまたがっています。そしてホンネは他人の精神と交流します。心に響くホンネの一言という事です。それではタテマエの言葉とは何か? それは意識の上だけに成立している言葉です。感情や情緒が少しも滲んでおらず、多分に嘘っぽく、単なる単語に近い言葉と言ってもいいでしょう。このタテマエ語は感情や情緒だけに支配されている悲鳴語の正反対です。

それらはいずれも一方は意識だけの上に乗っかり、一方は感情や情緒だけに偏った言葉としては不完全なものです。心の病に罹り易い人はタテマエ語ばかり口にし、心の中の本音をなかなか表に出しません。すると心と意識のパイプが詰まり、精神の状態が悪くなってしまうばかりか、他人との心の交流がうまくいかなくなってしまいます。タテマエは他人の心に到達しないからです。

ホンネ  :自分の心➡自分の意識➡自分の言葉➡他人の耳➡他人の意識➡他人の心
タテマエ :自分の意識➡自分の言葉➡他人の耳➡他人の意識

個人の所有物であると同時に他人との共有物でもある言葉をタテマエや感情語として用いると他者との共存を不可能にしてしまうばかりか、自分の精神をも不安定にします。ホンネでない言葉は他人の心を動かさず、自分をも裏切ります。

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