あなたは奇跡の存在です(4)
ここで私が思い出すのが、「窓ぎわのトットちゃん」です。
黒柳徹子さんの自伝的物語で、1984年4月15日に発行され、580万部を超える日本最大のベストセラーです。
トットちゃんは、好奇心がとてもおう盛な子どもで、たくさんのことに興味が向きます。
それが原因で、小学校1年生で学校を「退学」になってしまいます。
トットちゃんのお母さんは、若くて美しい担任の先生から言われます。
「おたくのお嬢さんがいると、クラス中の迷惑になります。よその学校にお連れ下さい!」
要は、型にはまらない子どもだったのです。
先生という職業は、たくさんの子どもを世話しなくてはならず、大変な仕事です。一人ひとりを丁寧に見ようと思っても、やることが多すぎてできにくいのでしょう。
ですから、学校は子どもを管理しやすい枠にはめ込み、その枠に収まらない子どもを問題児扱いする傾向が見られます。
先生が子どもに合わせるのではなく、子どもを無理に先生に合わせるように持っていってしまう。
教育現場は、トットちゃんの頃も今もあまり変わらないように思います。
「退学」になったトットちゃんは、私設の「トモエがくえん」に通います。
ここの校長先生(小林先生)は、初対面でトットちゃんに言います。
「さあ、なんでも先生に話してごらん。話したいこと、全部」
そして、何時間も、ずっと熱心に聞いてくれたのでした。
黒柳さんによると、校長先生の教育方針は「どんな子も、生まれたときには、いい性質を持っている。それが大きくなる間に、いろいろな、まわりの環境とか、大人たちの影響で、スポイルされてしまう。だから、早く、この『いい性質』を見つけて、それをのばしていき、個性のある人間にしていこう」というものでした。
この校長先生に見守られ、トットちゃんやほかの子どもたちは大きく個性を展開していきます。
個性に価値を見いだし、育む教育と、平均化して管理しやすい没個性を強いる教育。
どちらの方が、人としての素晴らしさを花開かせるかは論を待ちません。
2020年度に自ら命を絶った415人の子どもたちも、個性を認め、尊重する環境や大人たちがあれば、黒柳さんのようにみごとな花を咲かせたかもしれません。
ありのままを認め、受け止める……。子どもにも、大人にも、こんな環境や人間関係が求められています。(続く)