ぐしゃっと。ぱしっと。
16:28。
どこも洒落たカフェは17:00閉店らしい。
洒落た人は夕方で帰宅、が王道なんだろうか。
それとも、洒落た店長は17:00以降は洒落た私生活を送っているんだろうか。
メニューを舐めるように見回していたのに、店員さんが来ても答えられなかった。
1100円のかき氷か700円のコーヒーか悩んでたはずなのに、700円のコーヒーと、700円のガトーショコラを購入し、結局「予定額すりいれいっぱい」とはならず、大盛りになってしまった。
仕事から逃げてきたこの喫茶店でも、また失敗。
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『日本に帰ることになりそう。』
普段なら気にならない3回目のコーリングがとても早く感じる。
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その空気はなつかしく、風が頬をなでる。
我が家の大黒柱とは、まだあまり口を聞いていない。
『何がしたいんだお前は。』とか言われそう。
多分、その答えを明快にもっていれば。
根拠たる自信があれば、怖くなんてないんだと思う。
食べ終わったガトーショコラのお皿はキレイ、とは言いずらい。
飲みかけのブラックコーヒーは美しい、とは言いずらい。
「何をしたいんだろう。僕は。」
いつの間にか下方修正した夢と、
それを正当化する僕と。
「好き」は分かってる。
「やってみたい」も分かってる。
「叶えたい」もある。
「できる」もなんとなく分かってる。
けれど、ラテのようには甘くない現実は、ぼくの「叶えたい」をどす黒い茶色で染めていく。
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みんなが「これ、やりたいんだよね」って聞いてきたら、多分ぼくは「いいじゃん!やりなよ!」って言ってしまうと思う。
何も知らないのに。
その先には地獄が待っているかもしれないのに。
背中を押したぼくは犯罪者同然?
その人の人生をぶち壊したのもぼく?
たぶん、これがぼくと僕の関係性でも同じことが起こってる。
ぼくの「やりたい」と
僕の防衛本能。
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「やりたい」を無垢な笑顔で背中を押せない僕が、ぼくはあんまり好きじゃない。
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この記事もひと段落したところで先にお会計を済まそうとするも、現金決済のみだとか。
あぁ、またやらかした。
「ちょっとおろしてきます!」なんて中学生でもあるまい、と思いつつ言葉を発しようとすると、「あ、じゃあ振込でもいいですよ〜」って。
ヒトってこんなに優しかったっけ。と、どこか満たさせる感情が心をすり抜ける。
会計の恥を済ませた後、なぜか店員さが声をかけてくれた。
愉しかった。
ギチギチしない世界で会話が弾む。
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気づけば時刻は18時に近づいている。(このカフェはそもそも18時までだったらしい。)
ぼくの余命はあと60年くらいだろうか。
その時までにはイマの選択を万感の想いと無垢なしわだらけの顔で、「よかった」と言ってくたばりたい。
この20年があっという間だったように、残りの余命もあっという間なんかなぁ。と1日が長く感じる矛盾をよそに、夕日に顔を傾ける。
世界はきっと、長くて短いから、残酷にも頬を上げて、誰かの瞳にうつりたい。
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