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小説における説明(2)

この回からいよいよ六角さんの梗概を検討していきます。毎度毎度のアナウンスですが「あくまでもスガ的には」ということをご了承ください。
まずは書くべきことと書かなくていいことを仕分けてみましょうねー。

検討対象はこちら

 前回の記事の冒頭に、私がおこがましくもコメントした梗概がありますので、ダウンロードしてご覧になりながら読み進めてください。
 この時のお題は、私が提示した「アクションを含む小説」でした。

講評するときの自戒

 お読みいただいたとおり、理の勝った梗概になっています。

 私は前回に書いたように、知らないことを説明されるとキターッってなってワクワクするタイプではありますが、物語に綺麗に載っていない説明や設定のみ、というのは、理論書でなく小説である以上は好みません。

 でもですね。理解できないから評価が低い、とならないように常に心がけています。
 世の中にはいろんな人がいます。知識レベルは千差万別だし、自分が一番の平均値で常識人だというわけでもありません。

 キターッってなって、それでも判らないことは調べて、それでひとつカシコクなったら、とってもお得。
 知らない、判らない、で振り捨てないこと。特に他の方の作品を評価するときにはそれが大事だと思っています。

 今回は特に私も関わりの深い音楽分野だったので、隔靴掻痒感がありました。物語自体はいい感じなんです。

・「程よく狂った」という言葉で、音楽と家庭環境とストーリーの無茶さ(殺してまわる)を重ねて表しているのはロマンがある。音楽に引っ掛けて言うと〈重層的=重奏的〉な感じ。
・調音の選択によって未来が変わる、ジャズがない世界になるかも、という切り口が好き。

 けれど、純正律と平均律の違いをどうやって文章で書くのか。

 残念ながら、私、耳が安物なんですよ。とほほのほ。
 せいぜい、三味線のツボがはずれてるときに「んんん?」と思うくらいで、セント(調律における音程を表す指数関数的単位)レベルの差はほとんど聞き取れない。
 フルートの管を調整するときに、私は狙いよりほんのわずか高めの音が好きなんだな、と実感するくらいで。

 聞き比べができたのはこちらの動画なのですが――。

 つまみで音を探っている場面でうなりを聞き取り、「もうちょい……。そこそこ。うん、そこらへん」と同意するのがせいぜいでした。

 判らないと自覚しているのには、過去の出来事も関係します。

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