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30年前のブラウスと20年前のスーツ

記念式典の日付を一ヵ月間違え、会場から引き返しました。式典なのでフォーマルな古い服を引っ張り出して着て行ったのですが、いろいろと連想しちゃって。
「シラス」というところで配信番組を持つことになったのも踏まえて、ちょこっとエッセイです。

古い服でどっと連想した

 日付を一ヵ月間違えるなんて、サザエさんもはだしで逃げ出すほどのおっちょこちょいでございますな。しょぼん。

 何年かぶりにタクシーを呼んだのは、ちょっとした贅沢気分を味わいましたが、タクシー代も化粧品も、もったいないことでござった。しょぼん。

 講師をしている大学の記念式典ということで、一応スーツを着ました。無駄だったけどね。しょぼん。

 ちくしょー、こんなのは自虐ネタとしてどっかに書いて、みじめな気持ちを払拭してやるっ!

 それにしても和服で行かなくてよかったよ。ただの講師なので和服はものものしいか、と思い直したのが正解でしたね。

 そのスーツ、実は娘の幼稚園入園式用に買ったもの。もう20年ほども前になるでしょうか。
 まだ北大路ビブレにINGEBORGがあって、まだ多少の会計的ゆとりがあって。こんな未来が待ち構えているだろうなんてことは、まったく予想していなかった頃です。

 インナーには、これまた30年ほど前のブラウスを引っ張り出しました。肩パットはちゃんと外したよ。パワーショルダー、何年か前にちょっと復活しかけたけどダメだったねえ。

 そういえば最近はブラウスってあまりお目に掛かりませんね。就活でスーツを着る時くらいじゃないでしょうか。
 私が若い頃には、ブランドスーツが流行していたこともあって、百貨店に行くと店頭にはブラウス専門コーナーがあったりしたものです。

 ブラウス、不便と言えば不便だと思います。
 スーツの中に着るタイプはフィットしててほしいので、サイズ選びが難しい。私のように体型が標準でない人間は特に。
 一番嫌なのが、袖丈が足りなくて腕がひきつれるやつ。カフスのボタンはいつもはずしてました。

 もっと遡って私が小さい頃には、百貨店でブラウスを買う時にはガラスのショーケースから出してもらって……。

………………。

 と、ここまで「自分の失敗はどこかで書いて回収する」ネタとしてあれこれ連想を広げていて、あっ、と思ったんです。
 昭和の百貨店の話をするのはやぶさかではないけれど、そんなことして喜んでくれるのはごく一部の読者さんだけだろうな、って。

 この心のブレーキが、今回のnoteを書くきっかけとなりました。

昔話はよしあし

 何年か前から80年代ブームがちょっと来ていて、懐かしい音楽の特集やら、バブル経済への回想やらを目にすることが増えました。

 確かに、私にすれば懐かしい。
 音楽でも風俗でも、口を開けばとことん盛り上がれる。

 でも、いざ発信するとなると、それってどうよ、と思ってしまいます。

 ターゲット限定ならいいでしょう。同年代にはウケる。
 若い人でもこの時代が好きという人はいなくはない。エイティーズの洋楽なんざ、今の音楽の基礎がほとんど入ってますもんね。

 けれども、気を付けないと「あの頃はなあ」とか「最近より昔が」てな語り口になっちゃいそうで怖いです。
 だいたい年配の人は「最近の若いモンは」と怒っているのが定番なわけですが、あんまりその仲間入りはしたくない。

 世の中は動いてます。移り変わっています。進歩か荒廃かはなんとも言えませんが、昔の基準で今のピチピチした感性を判断することなんかしちゃいけないと思うんです。

 けども、です。ここらへん反対の文脈をつなぐ接続詞満載でコロコロ気持ちが変わってて自分でもイヤですが――けども、ピチピチに対抗しようとして、またはピチピチと同化しようとして、妙に若ぶるのも痛々しいじゃござんせんか。

 そこらあたりの匙加減が難しいなあ、などと、出番のなかったスーツとブラウスを脱ぎながらしみじみ考え込んでしまったわけでございます。

シラスへのお誘い

 先日、ゲンロンSF新人賞の選考会がありました。

 8時間もありますし、原稿を参照した方が面白いですから、気が向いたらでいいのでご覧ください。

 私、以前からゲンロンの関連する動画配信プラットフォーム「シラス」でチャンネルを持たないか、とお誘いを受けておりまして、身体を斜め半分前向きにして、30度くらい前のめりになって、うーんうーんどうしようか、と悩んでいました。

 この選考会の折にも改めてお誘いくださり、身体の向きを決めかねていたところ、東浩紀さんから魅力的な発言が。

伝承は必要ですよ

 昔話を、伝えるべき義務のある伝承と言い換えると、少しは私も身の置き所があるように思えました。

 SF界の、アニメの、音楽の、京都の、すべての文化風俗の、さまざまなデキゴトを半世紀以上も見てきたわけですから、うまく語れば次世代の人たちのアンテナにも引っかかるネタがあるような気がします。
 若い人たちも知っておいて損がない、ただ繰り言ではなく聴いていて楽しい、そんなトリビアが埋もれているような気がします。
 温故知新とまでは胸を張れないけれど、少なくとも古い革袋から出した古い酒を新しい革袋に移したら、もっとイイモノにしあがったりするような気がします。

というわけで配信準備中!

 ゲンロンSF創作講座が半年間お休みになるということで、その間の場持たせとしてとりあえずチャンネルは開設予定です。

 シラスは、コテハン(固定ハンドル/ころころ名前を変えられない)制、課金必須、と、荒らしには強い体勢なので、やってみる勇気が出ました。
 反対に言うと、お金を払ってまで見に来てくれる人がどれくらいいるのかが読めなくて心配ではありますが、少なくとも創作講座の面々は来てくれる人が多そうです。(裏切るなよ?)

 よって、創作講座的なものを大きな柱に据えます。
 加えて、東さんから聞いたところによると、雑談も喜ばれるとのこと。

 私は器用貧乏でいろいろなものを囓ってはどれも実を結ばない系の人間なので、お話しする題材はたくさんあります。

 その切り口に対する逡巡が「伝承は必要」という一言で吹っ切れた感じですね。

 年寄りが若ぶって痛々しいと思われない程度に、年長が偉そうな口を利いてと反発を食らわない程度に、同年代ウケばかりにならない程度に、考えながらお話ししていければいいなあ。

 10月中旬にはスタートするつもりで調整中ですから、もうしばらくお待ちください。

 とりあえず、Twitterを利用した「お題箱」というのを開設してみました。
 即座に反映、とはいきませんが、ネタに困った時の話題としてリクエストなどいただけると嬉しく思います。

 せっかくのこの電脳通信網時代、楽しく過ごせればいいですね! 

みなさまのお心次第で、この活動を続けられます。積極的なサポートをよろしくお願いします。