書式は大切! ~前編 基本~
今回は特に、文章を書く上では大事なことだと思います。無料記事ですので、お知り合いにも教えてあげてください。
星新一賞の応募要項に「縦書き推奨」が追加されました。今回はその深~いワケや、Wordを使うときの注意事項をばっちり教えちゃいます。
個人の意見ではなく編集さんのウラも取ってありますので、これが基本かと。
例示は、〈シラス〉配信「菅浩江のネコ乱入!」の投稿者さんのご協力をいただきました。ありがとうございます。
一般的な文芸表記
文芸作品として読みやすいように。
縦書き表示の時におかしくならないように。
書式とは、そのためのものです。
必ずこうしなければならない、というわけではありませんが、綺麗な原稿の方が印象はよくなりますね。
半角文字を使ってませんか
ほとんどの人がパソコンの横書きで原稿を書く時代になりました。
なので、その原稿をいざ縦組みにしてみると、びっくり! なんてこともよくあります。
なにがびっくりなんでしょうか。
それはですね……。半角文字は全部横向きになってしまうからです。
よほど長い英数字の固有名詞でないかぎりは、全角にする。または日本語カタカナに開く。これ、基本です。
男性の皆さんがほとんど毎日着ているシャツは、「ワイシャツ」と書くのが基本です。が、全角Yならまあまあ許してもらえることもあります。
「Mr.」は「ミスター」。「etc.」は「エトセトラ」または日本語にして「など・等」に言い換えるのが安全ですね。
基本基本と連呼しているのは、『記者ハンドブック』に準拠した表記だからです。
例えば博物館惑星の時に、「ギリシア」か「ギリシャ」で迷いましたが、このハンドブックの「外国地名一覧」を見ると「ギリシャ」になっています。
もう14版出てたんだ。私は13版を持っています。
待って! 値段がおかしい!2022/06/15の表記では6000円になってる!
版元の共同通信では、1900円+税なのに。
だからAmazonってヤツは……っ!
とはいえ、Amazonでは13版は中古品しかないみたいだし……。本屋さんや各書籍販売サイトを巡って、よく考えてからご購入ください。
日本語変換ソフトATOKでは、記者ハンドブックの辞書も使えます。そうか。8月に14版出るのか。買わなきゃなあ。
じゃあ、横に倒れる半角でもいい場合はあるんでしょうか。
あります。
機種番号とか、長い固有名詞、外国語の歌詞なんかはしかたないですよね。
このルールでいくと、匿名の「Aさん、Bさん」なども全角だとお判りいただけると思います。
こういう単体使いの場合は特に気を付けてください。半角に気が付かないこともあるんです。
ほら、横書きのままだとほとんど判らないでしょ~。
こういうのを縦書きに流し込むと、上のNBCのように倒れてしまいます。
Wordの横書きで文章を書くときの豆知識は、半角全角が判りやすいフォントを標準に設定しておくこと!
下の図を見てください。Wordで、すべて同じ28ポイントにした時の見え方です。白い四角の記号は全角空白(スペース)。フォント名頭の▼は「さんかく」で変換したフォント内の記号です。
どうですか。JSP明朝が圧倒的に全角半角の違いが判りやすいと思いませんか?
Windowsの方々に一番なじみのあるMS系のフォント(マイクロソフト)は、あまり区別がつきません。
JSP明朝は、ワープロソフト「一太郎」についてくるものです。Pというのはプロポーショナルの略で、例えば A と J だと横幅が違いますよね。昔はすべて、枡目に入れたような等間隔に配置されていましたが、今はこのP のついているフォントは、フォント自体が幅のデータを持っているので、変なところで間延びしないようになっています。
意外だったのはユニバーサルデザインであるはずのBIZ UDP明朝で、全角半角の見分けがほとんどつかない。びっくり。
あと、同じ全角のスペース(図では白抜き四角)でもフォントによって幅が違う……。メイリオなんか、行設定はなにも触っていないのに行間まで広い。
いや、なんかおかしい。
そう思って、上を全角、下を半角にして、Illustrator でやってみると……。
そうだよな! ユニバーサルデザインフォントだったら、ちゃんと全角半角がきっぱり判るはずだよな!
もしかして、Wordが何かお節介なことをやってるんでしょうか。
とにかく、Wordを使う人は、Word上で全角半角の見分けがつくフォントを探してみるべきです。
記号は正しく書いてますか
文学における記号は、すべて邪道、とする人もいます。「――」(ダッシュ)も「……」(三点リーダー)も、「!」(エクスクラメーション)も「?」(クエスチョン)もダメ。
とまで言われちゃうと、実際は不便で仕方ないです。特に「?」は、語調によってでしか確定か疑問か判らないこともありますし。
それに、SFは、時には記号が必要だったりもします。
ほとんどのみなさんは、ダッシュも三点リーダーも二マス分続ける、と、ご存知のことだと思います。
リーダーについては、長音や罫線を使わないように、以前の記事にも書きました。
今回の原稿募集では、この記号は縦書きで確かめればよかったね、という例がふたつありました。
ひとつは、お馴染みのカッコの種族。「ヤマカッコ」と打って変換すると、「〈 〉」が出ます。これは全角ですから縦組みでもちゃんと表示されます。もちろん「 」( )『 』なども全角にしてくださいね。
クォーテーションが倒れてるのはよく見るけど、三点リーダーがこんなになってるのは久しぶりに見ました。
パソコン黎明期は縦書きソフトと漢字変換ソフトがうまく連携しないこともあったんで、こういうこともありましたが。
たまにフォントで頭に@がついてるのを見かけませんか? あれは縦書き専用フォントです。昔は縦書きの時にはそれを使わないと、長音や拗音や撥音の中心が歪んでいたり、こういう記号なんかがうまく出ませんでした。何もかもみな懐かしい(CV・納谷悟朗)。
もうひとつは、横書きだとフォントによっては気が付かなかったであろう、似た形の別の字。
ご本人は数学記号の「含む ⊃」を表記したかったようですが、アルファベットのUで代用していました。
そのUが全角だったものですから、そこだけきっちり縦になってしまって、よけいにおかしなことに。
Word上で縦書きで表記してみたのが右側。「ふくむ」で変換するとちゃんと縦書きに呼応した含む記号が出ました。
Illustratorで書こうとしたのですが、ATOKは「symbol(半角)」フォントにこの記号の半角を持っているものの、文字コードのせいかうまく表示できませんでした。
文字コードは、1バイト(半角)のものも2バイト(全角)のものも、とってもたくさんの種類があります。おそらくIllustratorのもともとの設定でそれを変更してやると、ファイル全体がそのように表示されるはずです。
Wordや一太郎などのワープロソフト、WZエディタなどの日本語対応エディターでは、、記号であっても全角なら縦書きにしてくれるので便利ですね。
漢数字を使ってますか
日付け、年齢、データ。数字を書く機会も多いですよね。
さきほどのように固有の番号などはしかたないんですけど、文芸では、漢数字が基本です。
二桁の数字は場合によっては「縦中横」という組み方をしてもらえますが、こだわりがない限りは漢数字で。三桁以上になったら、横を承知で書かなければならないとき以外は直しましょう。
ただし、四桁の年号など「二千十年」と書いてしまうと、縦でも横でも読みにくいので、零「〇」を使います。マルではないので、ここでも「れい・ぜろ」と打って変換してください。
二桁の場合は、「〇」を使うことも、位取り数字として「十」を使うこともあります。
「23歳」を書きたい時は位取り数字を入れて「二十三歳」です。「二三歳」だと、「二、三歳(二歳か三歳か)」と読み間違えられる可能性があります。
上の例だと「502号」は、漢数字だとばかりに「五百二」と表記されるとちょっとあれっと思います。番号など桁が多くて細かい数字、途中に数字の存在しない桁がある、という時は位取り数字を入れないのがミソ。私の感覚としては、987のように三桁以上で一の桁まで数字が存在する場合は、位取りを入れないことが多いです。しかし、「九百八十七」が絶対にダメかというとそうでもなく、文脈によって臨機応変です。(編集部の方針にもよります)。
反対に「何百人」「一億六千万」など、ざっくりした時に入れると読みやすいですね。
真ん中の三角のエリアは、どちらでも、という感じでしょうか。
「一日一回」だと漢数字をお勧めします。「一日に32回」などの細かい数字でも二桁なら「一日に三十二回」。
他にも慣用的に使う語句はほぼすべて漢数字です。二人三脚を「2人3脚」と書く人はまずいないでしょうけど。
音楽の作品番号は、漢数字に似合わないと感じます。飽くまでも個人的に。ですので、全角アラビア数字でも可能と考えました。もちろん「作品一一〇、一一九」でもいいと思いますよ。桁が多くて細かい数字……なので、位取りは入れません。たぶん(弱気)。
丸をつけたところですが、「3DCG」がイレギュラーですね。これは、「3D(立体)」も「CG(コンピュータグラフィック)」も略語として浸透していて、例えば「立体パソコン画像」というように日本語にできないからです。半角で倒してしまわないのも、「浸透している、もう日本語化されている」、という認識です。AさんBさんと同じように考えてください。
ルビの書式は知らせておこう
今回「そうだったのか!」と思ったのが、マークダウンのルビでした。
マークダウンは、記法とも呼び、ホームページでいうところのタグのようなものです。
このnoteも(ここは固有名詞だから縦書きでも半角で!)、見出しや引用やルビをnoteで定めたマークダウンで記述しています。
私の場合、ルビを打ってほしいときには「(ルビ・)」というのをプレーンテキスト(装飾のないテキストファイル)に入れます。あえて半角を使っているので、本文とまぎれず、編集さんが「あっ、そうか」と気付いてくれます。自分で検索するときも便利です。また、普段使うエディタでは、このマークを色表示させるようにしています。ここらへんはまた後編で詳しく語りますね。
とにかく、これはなんだ、という表記をしているかたが複数いらした。
なんで二重山括弧が二重? イチハルって何?
きっとどこかのマークダウンかなと思っていたら、やはり、小説投稿サイトの表記でした。
イチハルのイチに見えたのはパイプ記号「|」というヤツで、ルビ指定開始だったんですね。二重の二重のとこは傍点がつくそうな。
投稿し慣れている人には当たり前のことだと思いますが、世の中にはとてもたくさんのマークダウンがあります。
ですので、冒頭や備考に「この記号はこういう書式のことです」と一言あると面食らわなくていいかと思います。
もしくは、Word提出が可能ならきちんと自分でルビ処理してしまう。
プレーンテキストの場合は私のように、ここはこれだ、という一目で分かる指定にすると安心です。
まとめ
とにかく、半角英数や記号には気を付けましょう、ということです。
神経質になる必要はありませんが、いろいろな縦書きの出版物を見て、経験を積んでください。
横書きで読むことが多いからいいじゃん、という方々も、句読点に着目すれば、「, .」(カンマ ピリオド)「、 。」(読点 句点)のセット――だけでなく、場合によってはカンマと句点、とか、不思議な決まりがそれぞれにあります。
絶対、は、たぶんないので、「ここの出版社はどうなってるかなー」という気持ちで確かめてくださいね。
次回は、後編としてWordの功罪についてお話しします。
引き続きよろしくお願いします。