口語 養生訓 よみ解き塾
貝原益軒 原著 松宮光伸 訳註
口語 養生訓 日本評論社.2000.より引用
第一章 養生の道
自らをあざむかない
養生の要は、自らをあざむくことを戒めて、よく忍ぶことである。自らをあざむことは、自分の心がすでに悪いことだと知っているにもかかわらず、それを避けずにやってしまうことをいうのである。悪いことと知ってするのは、本当に悪いことを嫌っているのではない。これは、自らをあざむいているのである。あざむくというには、真の姿ではない。
食事のことをたとえにいえば、多く食べることは悪いと知っていても、悪いことを嫌う心が本当でなければ、たくさん食べてしまう。これは自らをあざむいているのである。そのほかのこともこれで知れよう。
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自分の心をあざむくことを知っていてやってしまうは、私は、身に覚えがある事が多い。悪いことを嫌う心が本当であるかどうか、これは自分の心との会話が必要であり、自分が悪いと思っていることを、そんなことをする自分を嫌だ、と思えるかどうか、自分の一時的な感情や欲をどこまで自制できるか、と問われているように思うのだ。