犬だった君と人間だった私の物語【第12話】記憶
青年は慌てて店内に入ると、店員にビーグル犬の敏子を指さし、触ってみたいと伝えた。いつも明るい店長は
「よく外から見に来て下さってますよね! 今、ちょうど前脚を怪我しちゃったんですけど… 診察では大丈夫とのことなので、前脚だけ触らないように抱っこしてあげてください」
とビーグル犬敏子の怪我を気にかけつつケージの鍵を開けた。敏子は不安な表情のまま店長に抱きかかえられ、そっと青年に手渡された。青年は敏子に話しかけたいのだが、店長が張り付いていて話せない。敏子が小さく
「ねえ、本