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「プロジェクトがあるから対話は起きる」〜『未来を共創する 経営チームをつくる』

「今、自分たちはチームとしてどうなのか?」
こんな風に職場で問われたら、あなたは何と答えますか。

『未来を共創する 経営チームをつくる』は、この問いを出発点として、「本当の意味で “チームになる” のはどういうことか」が綴られた一冊です。

本書は、タイトルに「経営チーム」とあるように、企業・スポーツ・病院・学校などさまざまな組織の“幹部チーム”を対象に書かれています。とはいえ、家族や職場など小規模なチームにも当てはまる記述が満載でした。

「今の時代、指示命令型ではないぞ」というあなたへ

経営者やリーダーは孤独になりがち。

最後は自分で決め、責任を負う。
そう覚悟を決めて、より良い組織にしたいと願う気持ちが強いほど、周囲に対して「もっと考えてほしい」「全体最適となるよう動いてほしい」「何か提案はないのか」という想いが湧いてしまう。結果として、指示命令が増え、ますますメンバからの意見が出なくなる悪循環…。

著者 鈴木義幸さんは、200名以上の経営者にエグゼクティブ・コーチングを実施するなかでそのようなシーンを数多く見てきたのでしょう。「はじめに」で、次のように書いておられます。

経営チームのリーダーは社長です。もちろん、社長の役割はとても大きいのですが、社長を含む経営チームがチームとして機能しないと、会社が持続的に発展することは難しいのではないでしょうか。

はじめに ── 会社は経営チームで決まる

本書は、経営トップや幹部チームに参加する方だけでなく、自身のチームを持つ方、あるいは、何らかのチームの一員である方のために書かれています。(家族もチームの一形態だとすれば、多くの人のための本とも言えますね)

「これからの時代は指示命令型リーダーじゃないよなぁ…」「どんな風にチーム運営すればより良くなるんだろう」。そんな風に感じている方には、きっと得るものがあるはずです。

キーフレーズ

本書のなかで見つけた「言葉のごちそう」的なキーフレーズを、第1〜3章の言葉を中心にいくつかピックアップします。

オールドボーイズクラブ問題

第1章では、クラブとのちがいをもとにチームが説明されていきます。なかでも痛烈だったのは「気心知れた、昔からの男性の仲間の集団」と説明されたオールドボーイズクラブについての言及です。

 既得権益の上で長らくビジネスをしてきた会社の経営チームは、オールドボーイズクラブが結構多い ── “仲は良い。けれど、チームではない” のです。
 しかし、果たして、この変化の激しい経営環境の中で、クラブでいいのでしょうか。

題1章 なぜ“経営チームをつくる”ことは難しいのか

いいわけないですよね(笑)

“チームとしての目標”を持つ

次に、チームというのは、“目標に主導されている人たちの集まり”だという定義がありました。
しかも、ここで言う目標は個々人のものではなく、チーム全体の目標であり、経営チームとしてそれをどう決めるのかが重要になります。

 チームには、メンバー個々の目標というのもあります。それはあくまでも “チームとしての目標”があっての話。“チームとしての目標”を達成するために“個々の目標”があるという順番です。
 (略)
 チームである以上は、ひとりでは決してできないことを、チームとして成し遂げるという前提があり、ゆえに “チームとしての目標” を持つわけです。

第2章 チームとは何か

本書 第2章には、ある外資系企業でのワークショップの事例が載っていました。CEOとバイスプレジデント 11人を集め、ホワイトボードに ”FROM” と書き、「チームの現状」について4時間みっちり話し合ったそうです。

その後、“TO” と書いて「これからどこに向かうのか」をまた4時間話す。その議論をふまえてまとめた5つのシンプルな表現が“チームとしての目標”になったのだとか。

未来について一緒に話す

経営チームのコミュニケーションには縦と横があります。それぞれを双方向にすることが、“共創” の起きる大前提です。

  • 社長と役員とのコミュニケーション(縦)

  • 役員間のコミュニケーション(横)

最終意思決定者である社長とのコミュニケーションを双方向にするのは、なかなか難しいこと。第3章には、大手金融会社の事例として  1on1ミーティング導入について書かれていました。

 まず、定例ミーティングは原則廃止。直属の部下である役員との 1on1ミーティングに変えました。
 これに戸惑ったのは役員です。
 それまではトップから自分たちへの一方通行、もしくは、自分たちからトップへのレポートというコミュニケーションが中心でした。つまり “一方通行 x 2” で、双方向のコミュニケーションはありません。
 (略)
 CEOは役員に言いました。
「何もいらない。身体ひとつで来てほしい。会社の未来について、一緒に話したいのだから」

第3章 チームの土台をつくる

経営チームの縦のコミュニケーションを双方向にする。
そのための第一歩は、身構えず「未来について一緒に話す」ことなんでしょうね。

プロジェクトがあるから対話は起きる

次に、役員間の横のコミュニケーションについて。
社長が「役員同士なんだから、横にも話せよ」と伝えてもコミュニケーションは起きません(そりゃ、そうですよね)。

ではどうするか?
本書で挙げられていたのは、プロジェクトをつくること。しかも、本気のプロジェクトをつくることでした。

事業部の役員同士で一緒にできるプロジェクトをつくるといい。それは、役員が思いっきりおたがいの意見をぶつけ合えるようなプロジェクトである必要があります。
 (略)
どんなテーマであれば、役員同士が思い切ってコミュニケーションを交わし、共創のベースとなるような関わりを構築することができるでしょうか?

第3章 チームの土台をつくる

個人的には、最後に挙げたフレーズ「プロジェクトがあるから対話は起きる」が一番心に響きました。コミュニケーション活性化自体を目的としてしまうと、深い部分での相互理解には至らないでしょう。

いかにして本気のプロジェクトをつくり、メンバの参画を求めるか。それを考える人こそが真のチームリーダーなんだと思います。

おわりに

本書『未来を共創する 経営チームのつくる』は、勤め先のボスからお薦めされた一冊でした。

僕は役員ではないものの、本書にはおおいにインスパイアされました。自分が関わるチーム、自分が起点となる複数のチームで、本書からの気づきをシェアし、活かしていきたいです。

今後、共同プロジェクトで対話しながら、気持ちのつながりを太くして、よりよい未来を共創するチームにしたい。心からそう願っています。

マインドマップ

本書には、心に響くキーワードやフレーズが他にもたくさんありました。今回はフォトリーディング手法で読み、ひさびさにマインドマップも描いたので、あわせて載せておきます。

『未来を共創する 経営チームをつくる』マインドマップ

参考情報

2020年12月に発刊された際、本書の「はじめに」が公開されています。いまも読むことができるので、ご興味ある方はまずこちらをご覧ください。

なお、本書の Kindle版は Unlimited の対象本になっています(2022年7月現在)。会員になっている方は、以下からどうぞ。


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Hiroshi SAKAI
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