元日本代表DF茂庭照幸ら実力者が続々加入! FCマルヤス岡崎の現在地
取材・文・写真・表/新垣 博之
元日本代表DF㉟茂庭や、Jリーグでの実績も豊富なDF㉝多々良、FW⑭平井らを擁するFCマルヤス岡崎のスターティングイレブン。写真は11/3開催のJFL第26節・FC大阪戦@名古屋港。↓
今季、『2006 FIFAワールドカップ・ドイツ大会』に出場した元日本代表DF茂庭照幸、Jリーグでも実績十分なDF多々良敦斗やMF船谷圭祐が新加入。昨年にもDF石神直哉やFW平井将生、2017年には元日本代表候補のFW杉本恵太を獲得。チームディレクターには元日本代表FW森山泰行。森山は年齢と同じ背番号50を着て、11年ぶりの現役復帰も発表している。
JFLに実力者を次々と補強するチームがある。マルヤス工業フットボールクラブ(呼称「FCマルヤス岡崎」)。愛知県岡崎市を本拠地とし、現在、日本のアマチュアサッカー界最高峰リーグであるJFLに所属して6シーズン目を迎えている社会人サッカークラブだ。
自動車部品会社・マルヤス工業のサッカー部として創部したのが1968年。愛知県サッカーリーグを制し、1976年に東海社会人サッカーリーグへ昇格。以降、長年に渡って東海リーグを活動の場として来た企業チームに転機が訪れた。
東海リーグで初優勝を飾った2013年、『第37回全国地域サッカーリーグ決勝大会』(現・地域チャンピオンズリーグ)では3戦3敗で1次ラウンド敗退。JFL昇格がかかる決勝ラウンドへも進出できなかったのだが、翌年からJ3リーグ新設のために「入会希望申請チーム枠」の1つとしてJFL入会が決まった。
毎年JFL残留を争う企業チーム
ただ、共に「入会希望申請チーム枠」で2014年からJFLへ入会した他の3チーム=ヴァンラーレ八戸フットボールクラブ(現・J3)、アスルクラロ沼津(現・J3)、レノファ山口FC(現・J2)が完全プロ化してJリーグへと昇格して行くのを横目に、マルヤスはあくまで企業チームであり続けて来た。
企業チームとは言っても、チームパンフレットの各選手紹介欄に「契約選手」と記載されている選手は、基本的にはサッカーのみで生活ができる実質プロ契約選手。その割合がチームの約半数をも占めている。そして、昨年12月には専用の人工芝グラウンドの練習場が完成。ハード面もソフト面も急激に環境が整ってきているクラブだ。
しかし、JFL入会後の順位は、2014年から14位・13位・14位・9位・13位。2014年に限ってはJFLが14チームで開催されたために降格は免れたが、最下位。以降4シーズンも年間30試合制で獲得した平均勝点は29ポイント。降格スレスレの成績が続いている。
地元・岡崎市でホームゲームを開催できないスタジアム問題
試合出場選手の名前がなく、背番号だけが並ぶ電光掲示板。@名古屋港サッカー場↓
また、本拠地である岡崎市内には、JFLを開催するために必要な5000人以上収容可能なスタジアムがないため、今回筆者も足を運んだ名古屋市港サッカー場をメインとして、豊田市運動公園陸上競技場や豊橋市民球技場などでホームゲームを開催している。
ただ、関係者によれば、「2年後に岡崎市内でJFLを開催できる規模の競技場が使用可能となる」と、のこと。現在は改修工事中である愛知県岡崎総合運動場のことだろう。チームは、「岡崎市の名を全国に」、をコンセプトとして掲げているだけに、地域に根差したクラブ作りを目指して確実に歩みを進めている
そのうえで、現状は岡崎市でホームゲームを開催できるようになる2年後にもアマチュアサッカー最高峰リーグであるJFLに確実に定着するため、代表経験者や実績十分な多くのJリーガーを補強し始めているのだろう。
近年加入して来た選手たちにとっても悪い話ではない。専用の人工芝グラウンドがあり、アウェイ遠征時の移動も過酷なスケジュールを強いられることもなく、サッカーに集中できる環境が整っている。そして、選手たちは毎年JFL残留の危機に瀕するチームをプレーで助けて還元する。これも1つの“補強”の形だろう。
プロとアマチュアの狭間で多様性を生み出し続けているJFLというリーグの新たな価値観の創出にも繋がっている。
JFLでの厳しい残留争いという現実と未来
↑シュートコースを探すFW⑭平井の傍では山下良美主審。山下氏は翌日になでしこリーグ選出【最優秀審判賞】を受賞。
ただし、相手チームが存在するピッチ内、リーグ内での現実はそう簡単には変えられない。今季のJFLは第27節までを消化しているが、現在のマルヤスは勝点31の12位。
序盤戦は首位に立った時期もあったが、第8節以降に10試合未勝利(5分5敗)が続き、システムも4バックから3バックに変更。11試合ぶりの勝利となった第18節のヴィアティン三重戦以降は、リーグで2番目に少ない28失点の堅守を武器に粘りの戦いを見せ、残り3試合となった第27節で残留を決めたところだ。
試合内容的にも、FC大阪戦の前半は両チーム合わせてシュートが1本のみ。後半は直近8試合で5ゴールを挙げて調子を上げていたFW平井が決定機を逃す場面もあったが、「ザ・JFL」、と表現できそうな肉弾戦が続き、スコアレスドローに終わった。
第27節終了時、3試合を残してマルヤスのJFL残留が決まった。しかし、大型補強した効果は?と問う声もある。逆にJFLの残留争いという厳しい現実からは例年より早く解放された、と捉えるべきか?
そして、2年後に地元・岡崎市でホームゲームを開催できる運びになった時、彼等はJFLにいて、Jリーグ入りを表明するのだろうか?企業チームであり続けるのだろうか?今はまだ分からない。
いずれにしても、これがFCマルヤス岡崎の現在地である。
取材・文・写真・表/新垣 博之 取材日:2019年11月3日
尚、筆者は現在FCマルヤス岡崎でプレーするFW平井将生選手を取材してきました。そのインタビュー記事は下記で公開されております。ご覧下さい。
〇『「浪速のアンリ」平井将生インタビュー!ガンバの育成、最高のパサー、そして現在 』(フットボールWEBマガジン『Qoly』へ)
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