2024年1月に京都大学総合人間学部に提出した卒業論文「社会問題と自己の関係——加藤典洋をめぐって」を公開します(この投稿の最下部に、google driveのリンクが貼ってあり、そこにpdfが入っています。もう少し良いフォーマットが見つかれば、再掲するかもしれません)。
文芸批評家、加藤典洋(1948-2019)の生涯の思索について、「社会問題と自己の関係」をどう考えるかという問題意識が貫かれていた、という立場から、その全体像を描き出したものになっています。
客観的な対象として加藤典洋を論じるというよりは、在学中、さまざまな社会問題(筆者は、パレスチナ問題を扱うゼミにいました)と自分の距離感が分からなくなった筆者が、「社会問題と自己の関係」を加藤典洋の生涯の思索を跡付けながら考えていく、そういうつもりで執筆しました。自分なりに加藤典洋を「どう受け取るか」を示した論文、と言ってもいいかもしれません。
『敗戦後論』をめぐる論争や、その仕事の量と幅広さから、一人の文芸批評家としての全体像が見えづらく、また、少なくとも筆者の考えでは正当に評価されてこなかった加藤典洋という人物の思想、態度について、自分なりに鮮やかに描き出すことができたと自負しています。
執筆過程で、多くの「加藤典洋を知らない人」に読んでもらったこともあり、加藤典洋を知らない人でも読めるものに仕上げたつもりです。というよりむしろ、そういう人が読むことを念頭に、あるいは「ふつうの人」に読んでもらいたいという思いで、執筆しました。
主査は、小倉紀蔵先生、副査は細見和之先生に務めていただきました。ほかにも小島基洋先生など、多くの先生方にご指導、ご意見をいただきながら執筆しました。また、現在は早稲田大学に移られた岡真理先生には、在学中から格別のご指導をいただきました。先生方、ありがとうございました。
ほかにも、加藤ゼミ出身者を含め、本当に多くの方にお世話になりながら、書いたものです。ここには書ききれないので、詳しくは謝辞をご覧ください。
長いものですが、読んでいただけると幸いです。
以下、論文要旨とはじめにだけ、このページ上に転載します。
【論文要旨】
【はじめに】
卒論のリンク
この卒論が多くの方に届き、加藤典洋の思想が物事を考える足場となり、また、社会問題との距離感に悩む人に示唆を与えられれば、筆者として、これほどの喜びはありません。
よろしくお願いいたします。
川副博嗣(かわぞえひろつぐ)
mail:bosichuanfu*gmail.com(*を@に変えてください)
address:利尻島