2020年、夏の対話
日本大学の夏のデザインワークショップ。ファシリテーターを依頼された冬の時点では、コロナはまだ対岸の火事だった。
例年は大学に連日詰めて、実際にものづくりやインスタレーションを行うのだが、徐々に状況は逼迫してきて、授業はもちろん、このワークショップ(WS)もオンラインでの実施となった。
その環境下で何をテーマにしようかと模索していたタイミングで「アフターコロナ」について提案する学生コンペが発表された。
今置かれている状況を「なかったこと」にして、デザインを考えるよりは、今この時点で学生である事に、正面から向き合ってみることこそがリアリティであろう…とこれをテーマに各人が挑む設定となった。
各ユニット毎に進め方は委ねられていたが、ネットワークに負担をかけることから、各日のスタート時間、終了時間は縛りがかかっていた。大学にずっと詰めているようなわけにはいかない。それでも、前期はオンデマンド授業が多くなった関係で双方向のやりとりは少なかったから、オンラインとは言え「対話」から生まれるモノを大切にしていこうと考えていた。
だから、まずは徹底した全員参加のブレストからスタートさせた。小グループに分けたり、また全員で語ったり、思いつくことをとにかく挙げていって、それについて考える。土曜日は、ほぼその時間に費やした。
週明けからはそれぞれの具体案についての「対話」
これも意図的に自分との1対1にはしないようにしていた。自分が取り組まないテーマに対しても皆で一緒に考える。そして、その対話のなかから案を深め、拡げていくヒントが生まれる。毎日10時半から(途中、昼休憩を1時間はさんで)16時半まで、週明けから3日連続で向き合っていくと、グループに連帯感が生まれてくる。そして、連日、連続して向き合っているので、徐々に共通言語が増えていくのだ。
状況を見ながら息抜きを入れたり…ということも考えていたけれど、結局ずっと皆との対話が続きました。それは普段の授業で一週間ぶりに向き合うのとは、又違った濃密な近さを生んだ感覚があります(いつかコロナが落ち着いたら、班のメンバーで打ち上げ(同窓会?)をやりたいところです)。
最終日は講師陣だけ大学に行ってのオンライン講評会でした。すべての案についてのコメントをファシリテーターを務めた4名の講師から投げかけました。
まだ、結果は出ていないので学生さんたちの頑張った案を紹介することはできませんが、大学に提出するショートレポートを作成しながら、連日の対話を思い返していました。
今思い返すと、わずかな期間ですが8月の頭に交わされた言葉と、いま(9月下旬)でも状況の変化による空気の違いを感じます。この刻々と移り変わる状況のなかで「それでもデザインに希望を見いだす」、「建築でできることについて悲観しない」ということについて、考え続けているのだと思う秋分の日です。
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