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My Love〜高校生編・第9話「恋のバッドチューニング」

待ち合わせの喫茶店「恋話館」には僕が先に着いた。そして愛しい裕華が来るのを待っていた。この喫茶店、高校生の子供達が来るような雰囲気の喫茶店ではないのだが、僕にとってはとても居心地の良いホッとする場所だった。

実はこの喫茶店、中学の時の友達のお母さんが経営している喫茶店で中学生の頃から何かあるとその友達にくっついてコーヒーやジュースをタダで飲ませてもらった。
「何かあったら、いつでも気軽に遊びに来て!」といつも言われていた。違う友達を連れて行ってもコーヒーだけは飲み放題。本当に都合の良い喫茶店だった。



「おばさん、今日は女の子と待ち合わせだから……そっとしとおいてね。」

僕が恥ずかしそうにそう言うと


「あらまぁ、荒木君、いつのまに、このぉ~!」

とおばさんは冷やかしながらも気を利かせてくれて個室の「VIP席」を使ってもいいと言ってくれた。ありがとう、おばさん!
いい席GETでバッチリ!後は裕華が来るのを待つだけ…。


" カラ~ン、カラ~ン~ "



ドアに付いているドアベルの金属音が響くと、やがて裕華が現れた。髪に赤いリボン、ピンクのトレーナーを着て赤いショートパンツ姿というラフな格好が僕の心をくすぐった。


不安そうに僕を探している裕華はやがて僕を見つけると、ほっとした様子でゆっくりと僕のいるVIP席まで近づいてきた。



「ヒロちゃん。。。」





裕華の一言はにっこりではなく、安堵の表情をゆっくりと吐き出すかのようだった。



「裕香ちゃん……座って……。」


「うん、」



おばさんは裕華の顔を確認するなり、僕の顔を見て「こいつ、こんなに可愛い子を捕まえて……憎いよ、このー!」とでも言いたそうにニタニタしていた。




「お客様、ご注文は?」


「こ、コーヒー、2つ…。」


「はい、かしこまりました。」





わざとらしく注文を聞くおばさんはまるでただの野次馬のオヤジと化していた。





「ヒロちゃん、ほんと、ごめんなさい…。」




「裕華ちゃん、まず俺の話を聞いて、謝るのは俺の方。ごめん…。女の子に言うような言葉じゃなかった。素直にごめんなさい。裕華ちゃんが、あんまりトシちゃんトシちゃんってうるさいから僕、裕華ちゃんにヤキモチを妬いてしまったんだよ……トシちゃんにも悪い事したね。日曜日はトシちゃんの番組、見ていいからね。」


それは紛れもなく素直な気持ちだった。


こんなにピュアな裕華の心を僕は踏みにじってしまった。せっかく波長が合ってきた恋のチューニングを狂わしてしまった自分を深く反省した。


裕華はいじらしく僕の言葉にこう続けた。




「ううん、私も悪かったわ、ヒロちゃんの気持ちをもう少し汲んでいたら……こんな事にはならなかったし……
じゃぁ……いつまでも自分が自分が…じゃ収まらないから……2人とも悪いということで、それぞれ罰ゲームしましょ!
ヒロちゃんの罰ゲームは私のこと 裕華って呼び捨てにすること!人前でもねっ!どう?恥ずかしいでしょ?」




「え?よ、よ、呼び捨てにするってぇ~?」




「ヒロちゃん、怒ったときに『裕華!』って言ったじゃない?ちょっと、かっこよかったよ…」





怒ったとき、つい無意識に出てしまった「呼び捨て」が裕華はとても気にいったらしい。
罰ゲームだ、しかたない!それで全てが丸く収まるのなら…そう思った。それに決して悪いものではない!




「……わかったよ、裕華、それでいいかい?」


裕華は目を輝かせて僕を見つめていた。かなり照れてしまう、これはやっぱり罰ゲームに値する。


「じゃあー、裕華の罰ゲームは僕が決めていいの?」




「あ、それは自分でする。ヒロちゃんが納得するように自分で自分を辱めます。」




「えー?何するの?」




「今はひみつ、月曜日のお楽しみ、ところで裕華はトシちゃんが好きだけどヒロちゃんは好きなアイドルっているの?」



「う~ん、やっぱり聖子ちゃんかな、裕華には負けるけど…。」



「もう・・・ヒロちゃんったらぁ~!」



自分の言葉ながらさすがにくすぐったくなってきた。では月曜日、楽しみにしよう!と2人仲良く別れて自宅に戻った…。


そして月曜日、裕華の意表をついた自身の罰ゲームに僕は………
ただ驚愕するばかりなのであった。



           〜第10話に続く〜

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